淫夢×腐女子
俺は田中正人。
ごく平凡な男子高校生である。
しかし俺の友達(まぁそいついわくホモ達らしいが……)である西園寺勇也は普通とは対極にある腐男子である。
そのせいでゴリゴリのイケメンであるにも関わらず女子と付き合ったことがないらしい(50回ほど告られたらしいが)。
そんなホモ一筋の西園寺が……今……!
女子と楽しげに話しているのだ!!!
しかも西園寺はちょっと顔を赤くしてやがる!
これはもうフライデーもビックリの大ニュースだ!
ついに西園寺がノーマルの世界の住人に戻ってきてくれたのか!
と思っていた10分前の俺をぶん殴ってやりたい。
「おう正人!あ、紹介するね。こちら早川百合さん。」
「どうも早川百合です!名前は百合だけど薔薇好きだぞ☆」
同族かよぉぉぉ!!!!
何?この国ってこんなやつばっかなの!? 俺がおかしいの!?
そしてこの早川さん、普通に、というかめっちゃ美人!何なの?美男美女は腐ってないとダメとかいうルールでもあるの!?
「正人君はさぁ、どんなBLジャンルが好みなの?」
なんか勝手に俺まで腐男子認定されちゃったんですけどー!
「いや、俺はそういうの興味ないっていうか……」
「へーぇ、そうなん?ちょっとヘタレ受けっぽいのにねぇ。」
「はい?」
この人は何を言ってるんだ?
「早川は襲い受け派じゃなかったか?」
「そう!マジであれは神!コードギ〇スとかどうしてもそういう目線で見ちゃうんだよね。」
「分かるわぁ。けどルル〇シュとス〇クだったらリバも有り得るんじゃねーか?」
「確かに!うわぁ……いいわ……尊いわ。」
やべぇこの2人の会話、1ミリも理解できねぇ……
ホントに同じ日本人か……?
「あ、ごめん正人君!よく分からない話ばっかしちゃって……」
「あぁ、いえ、構いませんよ。慣れてますし。」
ん?慣れている?もはや俺もアブノーマルな人間になってしまったのでは!?なんか泣きたくなってきたぞぅ!
「じゃあ正人君にも分かるように説明するね!」
「お断りします。」
「じゃあ私のおすすめのジャンルを……」
「お断りします!」
「じゃあこの本とか」
「お断りします!!てか早川さんまでBL本学校に持ち込んでるんですか!?」
「当然!」
そこはキメ顔しちゃダメな気がするんだが……
そしてなぜ俺を腐の道へ引きずり込もうとしてくるんだ……!?
「じゃあ俺のおすすめ教えようか?」
「お前のはもっといらんわ!!」
BL本を広げる西園寺の腹を拳で打ち抜く。おっと手が勝手に……
パサッ
西園寺の持っていたBL本が床に落ちる。
「こ、これは……!」
その表紙には明らかに見た事のある人物が描かれていた。
――俺だった――
タイトルは『田中正人の夜の淫夢』
「何だ、これは?」
もはや俺に感情は無かった。てかこれはさすがに処刑モノだよネ。
「いや、これはだな……俺のオリジナルのやつで…… 次のコミケに出そうかと思って」
ふざけんじゃねぇ!!!それに、
「普通に個人情報だろうがぁぁあ!!!」
「ふグゥ!」
俺の渾身の腹パンが炸裂した。
「おぉ、リョナシチュもいいね!」
もう黙ってくれないか早川さん!
こうして俺は腐りきった美男美女と友達になった。否、なってしまった。
どうなる、俺の青春!?