こころ×ネコ(意味深)
西園寺勇也。
イケメンで天才で金持ち、まさに神から何もかももらったかのような人間だ。
そしてそいつはいつものように昼休憩に机に向かって必死に何かを書いていた。
「何してんだ?やっぱお前も勉強して……」
そこで彼の手もとのノートが目に入る。
『こころ♂』
どうやら神はナニもかも与えすぎたようだ……
てか本当に何してんだコイツ……
「あぁ、正人じゃん。どうした?」
「いや、お前がどうした!何これ、ねぇ何なの!」
「いやぁ、ちょっと俺も二次創作とかにも手を出してみようかなとおもってさ。」
「だからって日本文学史に残る名作を汚すんじゃねぇ!!漱石先生泣いてんぞ!あと何でもかんでも ♂つけとけばいいと思うなよ!」
「で……でも内容はちゃんとしてるはずだぞ。なんせ俺が寝る間も惜しんで作り上げた最高傑作だからな!」
西園寺はやたらキメ顔で自信ありげだが…… そもそもBLにちゃんとした内容とかあるのかよ?
「まぁ読んでみろって!先っぽだけでいいから。」
「先っぽ言うな」
俺は西園寺からしぶしぶ「こころ♂」を受け取りページをめくった。
先生と私
私は先生の肉棒に目を奪われたのだった
「待て待て待て!!! 出オチにも程があるだろ!てか何で先生は初回登場時から全裸待機なんだよ!!」
「ちなみにこの 私というのは俺がモデルになっているぞ。」
「やっぱりか!何となくそんな気がしたから敢えて触れなかったのに!! わざわざどうも!」
「まぁまぁ、もうちょい読んでみてくれよ!名作だぜ?」
それはねぇなと思いながらも俺はページをめくってやる。そこらへん俺は優しいやつなのかもしれない。あるいはだんだんコイツに毒されてきたか…… いやないないない、あり得ない!ホントそれだけは勘弁!
半分ヤケクソな俺は勢いに任せてページをめくる。
◇
「先生……俺……もう…… !!」
「まだです。今イくのは罪悪ですよ?」
「おい、お前も来い。」
そう言って先生は奥さんを呼びつけて先生と私と奥さんの3人で情事を行い始めた。
「先生……もう……本当に……」
「あぁ私も出そうだ。……イきますよ? すべてを腹の中にしまって置いて下さい!」
「「「あぁ……!!!」」」
◇
俺はそっと本を閉じた。
ナニコレぇ……
何で奥さんも含めて3Pはじめちゃってるの!? 修羅場すぎんだろ! あとちょいちょい原作のセリフ使ってんじゃねぇ!!
「どうだった?面白かっただろう? 面白かったよな!」
やめろ。グイグイくるな!ホントに一度頭のお医者さん行っとけ!
「あぁ、他にもこんな絵本とか描いてみたんだけど……!」
「もう見たくもねぇよ!お前の絵本とか地雷臭しかしねぇよ。」
「あった。これこれ!」
「人の話を聞かんか!」
そして西園寺が俺に押し付けてきた本は
『百万回イったネコ』
駄目だこいつ早くなんとかしないと
俺の気も知らずに西園寺は笑顔で続ける。
「ちなみにネコってのはウケのことなんだぜ。」
あぁ……そうすか。
俺は死んだ魚の目で西園寺を見つめながら、コイツは一生こうなんだろうなぁと何だか何か悟りを開いた感覚で「百万回イったネコ」を全力で破り捨てた。