ド平凡×イケメン腐男子
俺は田中正人
どこにでもいるごく平凡な男子高校生である。
高校生にもなると、あぁ俺、青春してんなぁ…… などと思う事も増えてくるのではないだろうか。
共通の趣味を持つ友達を見つけ語り合ったり、恋バナなんかをたしなむ者もいることだろう。
俺だって青春ど真ん中の身。こういう事は日常よくあるわけですよ。俺も青春してんなぁとか感じたりするのである。
……いや、するはずだったのだ。
『話し相手がコイツじゃなかったら!!!』
「なぁ!このカップリングくっそヤバくね!? ……はぁマジで尊みが深い! シコい!」
うるせぇ。そしてうぜぇ。
さっきから俺のとなりで騒ぎ続けているこの金髪は、西園寺勇也。容姿端麗で頭脳明晰。さらにコイツの家は超大金持ち。誰もがあこがれるカンペキ人間である。 ……だがコイツには致命的な欠点がある。それは、そう……
――腐っているのである――
清々しいほどの腐男子なのである!
コイツは過去50回以上女子から告白されているらしいが、その返答はいつも
「ごめん、俺さ……ホモを愛でる方が好きだから……」
である。割とマジで意味が分からん。
そして彼のLINEの名前は
「腐太郎」
誰だお前は。
そして昨日の美術の時間、彼が選んだ題材は
裸婦画ならぬ「裸夫画」いや、もはや「裸腐画」である。
もうマジで頭の病院行け。
現に今も学校内だというのに堂々とBL本開いて俺に見せつけてきやがる。てかこれモザイク多すぎてもうわけ分からんぞ!どんだけマニアックな内容なんだよ!ちょっと興味わいちゃったじゃねぇかちくしょうっ! あ、もちろん俺は腐ってなんかいないのでそこんとこヨロシク。
「語彙力死ぬくらい尊いよな!お前もそうおもうだろ?」
「知らねぇよ!いつも言ってるが俺は別に腐っては……おいやめろ!情事シーンを見せつけるな!エロ本を近づけるな!」
西園寺は決して地上波で流してはならないレベルのキモイ笑顔で俺の顔をBL本で包み込んできた。
まさにがっかりイケメンである。
てか止めろマジで。なんかイカ臭いから!!ホントやめて……
やっとのことで地獄から解放された。俺はあの謎のイカ臭さを生涯忘れることはないだろう……
「それで? そんなに俺に見せたいものってどんな本なんだよ。一応聞いといてやる。」
「フフフ……よくぞ聞いてくれた。では改めて紹介しよう!この本だっ……!!!」
『ボッキーマ〇スと淫夢の国』
「うわぁ……」
アウトアウトアウトぉぉぉ!!! もうコレだめだろ!いろんな意味でアウトだよ!だからやたらモザイク多かったのかよ!!
「ていうかこの本でカップリングって何?まずキャラクターが全員人外なんだけど!?」
「ん?あぁ、俺の推しはグ〇フィー×従業員Aのカップリングだよ。」
「ちなみにこの2人なら亀甲縛りロウソクプレイとかいいぞ! 目の保養になるんだよなぁ……」
「ま……マニアックぅ……」
俺には彼の底が本当に見えない…… てか見てみたいまである。
いつか彼とも分かりあって本当の友達となる日は来るのだろうか。いや来ねぇわ。来てたまるか。
こうしてイケメン腐男子とド平凡な男子高校生の日常は続いていくのだった。