長政という男
主人公が戦場にいないと難しい……最初は長政サイドです!
北近江を離れて六角領に足を踏み入れるとそこは地獄とも呼べる場所だった。いや……戦場という雰囲気がそう錯覚させているのだろう。自分にとっての初陣。側近の新十郎を置いて出陣した今回の戦。浅井の独立と存続がかかっている。新十郎曰く相手の地での戦いは油断は決してしてはいけない。
「新十郎は何者なのだろうな、私が拾ったとはいえ誰の子かわからない、親はさぞかし優秀だったのだろう」
「初陣なのに余計な力が入っていませんな?流石殿です!」
横にいた家臣が話しかけてくる。こいつ誰だっけと主人らしからぬ思考を巡らせてうちに古くから使える老人だと気付く。正直言って名前は忘れてしまった。まだまだやることが多いな、なんて思いながら武装姿では頭もかけないので言葉で誤魔化した。ちなみに甲冑は何種類かの色を組み合わせてあり少しだけ派手である。だが動きやすく、腰に刺した刀は浅井の家紋三盛亀甲剣花菱が描かれている。お祖父様が使っていたとか。
「力を入れて強くなるわけではあるまい、御家の存続、国の成長、兵達への恩賞、色々なものがかかっているのだ。初陣や名声などつまらないものに興味などない」
家臣は口を開けて閉じようとはしなかった。
陣を構え、指揮をとっている。
「とにかく相手の地だ、油断は決してしないこと。遠藤隊と赤尾隊、海北隊を中心として陣を配置している。ここに俺も入ろう。勿論突撃ではない後ろには別働隊が待ち伏せしておる。そちらは1000にも満たぬ兵達だが……この大軍本陣と主力部隊の突撃で引いた本陣を一気に叩く!安直だが被害を最小限におさめたい、俺の若さ故、難しい兵法だと多くの兵を失うであろう」
俺は自分の支度を済ませ馬に再びまたがる。
「皆の者!作戦開始!!」
「「おー!!!」」
軍を進行させてしばらくすると相手兵との戦いが始まった。
カキーンとなる刃の音、倒れていく自軍の兵、相手兵も倒れていく。紅色の血で戦場を染め上げている。
俺も勿論狙われるわけで馬を進めながらも周囲を警戒している。
「奇襲だ〜!!!」
遠藤隊の方を見ると前から来ていた部隊と横から突撃して来た部隊が見えた。
「……奇襲……?」
混乱しつつもなんとか自我を保ち、懸命に指示を送る。
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長政は大丈夫だろうか?心配でしょうがない。ちなみに今は屋敷の畳に正座して時を待っている。
「報告です!遠藤殿の部隊は無事とのことです!」
よかった……ちなみに結構短く感じる……合戦の準備より開戦までの期間の方が早いんだな。
「六角は続々と撤退している模様。我が軍の勝利でございます!」
「報告ご苦労!」
俺が偉そうにするのもなんだが違う気がする。だからなんちゃって敬語が出て来ちゃうんだよね。浅間新十郎の不覚ですな。
にしても始まったのも早いし、終わるのも早い……
何か嫌な予感がした。
最近誤字脱字、表現の違和感などご指摘ありがとうございます!
まだまだ未熟な僕ですが読者様のおかげでこの作品をかけているといっても過言ではありません。