元服
短めですがここで切って次に行きたいんです
前話読んでくださりありがとうございます!
「殿……やはり私と若が一緒に元服など……」
俺が久政さんに意見すると久政さんは大声で笑う。
「お主が気にすることでない!しかも生涯あいつと一緒にいるのなら出発地点も同じところが良かろう」
頭は柔らかいんだな、15歳の息子に家督譲らざるを得なくなるのが惜しい。まぁ威厳はないよな。猿夜叉丸が着替え終わると俺らは広間へと行き座る。
元服の儀はサクサクと進んでいく。そして髪をゆい、烏帽子をかぶせて貰う。烏帽子親は久政さんなので元服後の名前も久政さんが決めることになっている。
「猿夜叉丸は賢政、浅井新九郎藤原朝臣賢政と名乗れ」
「は、名に恥じぬよう精進します」
「一夜叉丸は久賢、そしてお主の希望通り「浅間」の名字を与える、通称は「新十郎」、浅間新十郎藤原朝臣久賢と名乗れ」
「は、これからも若を支えていけるよう精進します」
「頼んだぞ、久賢」
賢久ではなかったがその反対だったな……六角氏の権力がここまできているのかと思わされる……子供でもない俺に賢をつけるあたり相当気が弱いんだろうな。浅間姓をいただいたので文句はないのだが……
「それと賢政は平井定武殿の娘と結婚して貰う。これにて解散じゃ。宴を開くが2人は休みなさい」
それは俺らが15歳以下だからだろう。別に酒は好きではないしいいが。
俺らは中庭の縁側に座って空を見上げる。今夜は三日月のようだ。綺麗だな……前世の俺もこう言うものを見ていたのだろうか?
「新十郎?」
「は、なんでございましょう?」
俺のことを改名した方の名前で呼んだ。返事をするとニヤリと笑う。
「変な感じだな……一夜叉丸、一夜叉丸て呼んでいたからな〜……これからもよろしく頼むぞ」
「は、この命若のためなら捨てるのも惜しみませぬ、何なりと申してください」
賢政は真剣な顔に戻ると俺の瞳をまっすぐ見てくる。
「われが結婚するのは「六角」の家臣の娘。そしてわれらの名前には「賢」の一文字。これは六角氏に臣下と言う意味であろう……父上はどこまで気弱なのだ?」
俺もそう思う……いい武将を雇いながら六角の下でくすぶっている。朝倉のおかげか領地没収まではいかないものの状況はかなり不利だ。
「若、殿のことです、きっと考えがおありでしょう、それより今は地を固め、味方を増やしましょう」
「どう言うことだ?」
「機会を伺うのです。若についていきたいと思わせるように「稽古」、そして兵法などを学び戦に備えましょう。若の周りは敵だらけ……ですがとり入る隙はあります」
「そうか……さすがいちや……新十郎!」
「いいですよ、慣れるまで一夜叉丸で」
「いや武士としての、そして次期当主としての役割を果たすため小さなことでも妥協はせぬ」
いい志ですな、流石浅井長政。織田信長に対抗する、そして信長が認めたと言われている男。背は俺より小さいがその背中がとても大きく見える。
「私も全力で支えさしていただきます。一緒にまた歩んでいきましょう!」
俺らは月を見上げて笑いあった。