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後編。ド素人でも戦隊ヒーロー、巨大激闘編。フラグメント2。そして戦いの後は?

「こ、この……! 小娘! オレサマのおでこに恨みでもあるのかンモー!」

「体勢と場所と高さの問題です」

 左手を額にやりながら恨めし気に言うミノタウロスに、ブルーはきっぱりと言い切る。

 

「ヤキニクブラスター、牽制にしかなんなかったね」

 聞くからにニヤニヤした声のレッドに、

「復唱するのやめてー!」

 と頭を抱えたそうに叫ぶブルーである。

 

「チャージショットじゃないと火属性はそんなに効かないみたい。土は防御担当。となれば後は」

 走り出すのと同時に、これだー! と気合のおたけびを上げるレッド。

「望むところだンモー!」

 迎え撃つべく構えるミノタウロスは、グレイセーバーの拳が澄んだ水色を帯びていることに苦い顔になる。

 

 

 接触。同時にグレイセーバーの レッドのラッシュが始まった。

 

 

「はっ! たっ! やぁっ!」

 鋭いながらも素早い拳が、ミノタウロスの武骨 重量級の身体とは相性がよく、

「ぐ! モ! ンモ!」

 属性の有利と相まって、一方的に叩く状況になっている。

 

「ブンモー!」

 隙に差し込もうと拳を振るうミノタウロスだが、ふわりと飛びのかれて一向に手が出せない。

 

「ぜぇ……はぁ……。み……水属性でさえなければ!」

 悔しがるミノタウロス、その体力は見るからに衰えている。

「かなり効いてるっ。んじゃ、ごり押しの一発と行きましょうか!」

 言うとグレイセーバーは額の竜の顔に、両手の親指と人差し指を上向きの三角形を作る形で添えた。

 

「それ……駄目押し、ですよね?」

「細かいことは気にしない。いくよせこ牛!」

 両手の水のエネルギーが竜の顔を包み込む。そしてそのエネルギーは、瞳を通過し口へと収束。

 

 目を見開いて「ブモァ?!」と驚愕する牛人間。

 

竜水瀑布メイルシュトローム!」

 

 閉じていた竜の口がガバリと大きく開く。そこから放出されるのは、正に巨大な滝を一点に集約させたような、轟轟たる水の暴力。

 

 

「ブー! モー! アー!」

 森羅万焼バスターの時同様に、複数の爆発を起こす巨大牛人間は、その衝撃に耐えられず膝をつく。

 

『とどめを!』

「なに?」

「頭の中に、攻撃の仕方が」

「流れ込んで来る?」

『外に声が聞こえている以上、こうしないと手が知れてしまいますので』

 

「なるほど、流石神様ってことか」

『それでは、頼みましたよ』

 アマテラスの言葉を全員同時に頷く。

 

 

「よーし。グレイブレード!」

 グレイセーバー、今度は右手で左の水色の二の腕から、収納されている剣グレイブレードを引き抜く。

「いくよ!」

「うん「はい!」」

 グレイブレードを両手で持ったグレイセーバー。

 

「「「グレイブレード」」」

 天高く剣を振り上げ、

「「「ラグナ」」」

 大地を蹴って垂直に飛び上がり、

「「「スレイヤー!」」」

 標的めがけて赤い翼の力で急降下するグレイセーバー。

 

 その刃は虹色に輝いていた。

 

「ンモ!?」

 気付いた時には遅すぎる。月光に全身を 手にした刃を虹色に輝かせながら、銀色の巨人は一切の躊躇も容赦も慈悲もなく、自分を両断しようと隕石のように突っ込んで来るところだったのだ。

 

 

「おのれ! シュレディンガード! グレイルレンジャー!」

 

 勢いを殺さぬままに、体を沈み込ませるようにズドンと着地したグレイセーバー。

 まるで、その着地の衝撃をトリガーにしたように、グレイセーバーの背後になった巨大牛人間は、

「ンモオオアアアアア!!」

 断末魔を轟かせながら、激しく幾度も爆発し、そして その命を虚空へと散らした。

 

 

 静寂が訪れる凄なる決闘上コロッセオ。数秒の後、ゆっくりと立ち上がったグレイセーバーは、やはりゆっくりと背後に体を向ける。

 ーーそして。

 

「やったか?」

「不吉なこと言わないのレッド」

「敵はもう。影も形もありません。わたしたちの勝利です!」

 歓喜に上ずったようなイエローの声。

 

「……うん。そうだね」

「わたしたち。勝ったんだ」

 静かな二人の声は、信じられないと言う色で。

 

 再び静寂に包まれた凄なる決闘上コロッセオ。しかし、静かになった直後。

 

「やったー!」

「よかった」

「ヒーローが、初戦から負けるなんて、ありませんからっ」

 三人の声は、歓喜と安堵で彩られていた。そこからしばし、勝利の余韻を味わうように、三人は笑い合っていた。

 

 

【カメラ】まもりたち視点【チェンジ】

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「お疲れ様でした、先輩方」

 あの場から再度、平穏領域転送アバロニックテレポーテーションでナカノハラアマテランドの秘密基地へと帰って来た三人。笑顔で迎えてくれた兎栖命うずめの表情は、疲労感と安堵で少しぎこちなかった。

 

「ほんと、もうクッタクタだよ~」

「体育でもここまで全身グッタリしないよねぇ」

「でも、達成感のある疲労ですよね」

 三人の感想に、兎栖命も他のメンバーも頷いている。

 

「三人とも、よくやってくれました」

 そう声をかけて来たのはアマテラスである。

「え? あなたがアマテラス……さん?」

 きょとんとするてんま。

「猫耳……生えてます、よね?」

 きょとんとするかがみ、そして。

 

「か……かわいぃ」

 目をキラキラさせているまもり。

 

「そんな風に言われたの、初めてですよ」

 てれくさそうに微笑で少し俯くアマテラスが、とても秘密組織を治めている人には見えない三人は、その愛らしさに表情を綻ばせた。

 

「姉上、買って来たぞ。これでよかったんだよな?」

 後ろ、指令室入口の辺りからそんな声がして、三人は振り返った。

 

「猫耳人間二号?」

「銀の猫耳ですね」

「なんか……箱持ってる?」

 見た目にリアクションしたまもりとかがみ、しかしてんまは手にしている物に着目。

 

「おかえりなさいツクヨミ。これで、と言われても 中身もレシートも見てないので、判定のしようがありませんよ」

「お義姉ねえ様、レシート確認しました。お義姉様のご注文通りの品です」

 

「「「おねえさま?」」」

 マーニがアマテラスを呼ぶ呼び方に首をかしげる三人。

 

「そうですか、わかりました。ツクヨミ、こちらに持ってきてください」

 当のアマテラスはまったく気にする様子はない。そのかわりに、答えてくれた少女がいた。

 

「彼、ツクヨミ様は……その。わたしの……だんなさま、なんです」

 小さな声で、はにかみながら三人に答えたマーニに、

「「「えええ?! だんなさま!?」」」

 驚愕する三人なのであった。

 

「お、オトドケーラの箱だ」

 桜が面白そうに、指令室中央にセッティングされていたテーブルに、ツクヨミが置いた箱を見ている。

「あれだけ運動したんですし、先輩方 おなかすいてませんか?」

 兎栖命に言われたことで、まったく意識していなかった三人のおなかが派手な音を大合唱。

 

 真っ赤になって顔を伏せる三人、クスクス柔らかく笑うシュレディンガードの人達。

 

「「「その……ごちそうになります」」」

 よしと頷いた桜がその箱を開けながら、

「はい、チーズたっぷりの牛肉ピザになりまーっす」

 と心底楽しそうに注文の品を紹介する。

 三人が顔を見合わせたのはしかたないことだろう。

 

「消滅させてしまった命、せめて同族を身に取り込み、彼の者の魂の救済を願う。自己満足なのはわかっているのですが」

 自嘲気味に微笑むアマテラスは、やはり秘密組織のボスにしては優しすぎる。特撮好きの二人は、そんなことを思った。

 

 しかし同時に、だからこそ否日常にいる桜 兎栖命 そしてヤマトが、文句も言わずに手を貸してるのかもしれない、そうも思った。

 

 

「さ、たべよっか」

 しんみりしてしまった空気を換えるため、桜が明るく声を張る。あ はい、と返事した三人は用意されている椅子に腰を下ろした。

 

「あの、桜先輩。食べるのは、いいんですけど……なんでLサイズが二枚あるんですか?」

 てんまが困った顔で言うと、

「ん? あたしたちも食べるからだよ」

 とあっさり答えながら、桜 兎栖命 ヤマト、そしてマーニとアマテラスをぐるーっと指さした。

 ああ なるほど、と納得した三人である。

 

 全員が席に着いたのを確認すると、桜がなおも仕切り、全員同時にいただきますと手を合わせた。

 そして、一口食べたグレイルレンジャーが、三人同時にこう言ったのだ。

 

 

「「「うんもーいっ!」」」

 

 

 一秒後に、また三人同時に「あ……」と呆然と言って、そして赤面。直後、全員が心から愉快そうに笑った。

 

 

 

 

 

この番組は(THE)楽しい作品を()作りたい作者()ぷちミントが()お送りしました()

このような長文単発ネタにお付き合いいただき、ありがとうございました。

あらすじでも書きましたが、続きません。続けられるほど戦隊ネタに精通してるわけでもございませんのです。横好きなのです。

それでは改めまして。読了いただきまして、ありがとうございました。

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