手を洗いましょう
「私ミシマは色々話を聞いて来て、衛生の話をしたいと思う。」
書記は別の人間にバトンタッチしている。
「『エイセイ』ですね。」
「そう、衛生。清潔にしましょう。」
一同はなんだか背筋を伸ばして「はい」と答えた。
「まず、さっきスノハラがどうせ軍隊の話をしていたと思うんやけど、本当は軍隊にも衛生兵という人がおって、応急処置をしたりします。」
「『オウキュウショチ』って何ですの?」
ミシマは消毒や止血、骨折時のあて木についての自分が知っている範囲の話をしつつ、応急処置にはどんなものを揃えておくべきか話を続けた。
「さっき、裏で話をしてきた中で、この世界で消毒できるとしたら『蒸留酒』やろという話で落ち着きました。なので衛生兵は『蒸留酒』『きれいな水』『包帯』『ガーゼ』『油紙』を持ってれば……あとはあれば『担架』やね。」
「うわー知らない単語ばっかりです!」
書記が半泣きになった。ミシマは国の医者を呼ぶように提言した。急いで連れてこられた老齢の医者をみてミシマはやや幻滅したが、丁寧に説明をしていく中で、かなり有用な会話ができたようだ。
「ここまでが『衛生兵』の話で、こっからが『衛生』の話。まず、寝具は干しましょう。部屋の空気は入れ替えて、掃除をしましょう。服は洗濯して、日光に当てて干せるもの。手や体は石鹸を使って定期的にきれいに洗う。生活の水を上水と下水に分けましょう。」
「『セッケン』と『ジョウスイ』と『ゲスイ』の意味が分からん。」
ミシマはここでも丁寧な説明を試みた。しかし、石鹸はミシマは説明ができなかった。
「多分、私の後に来る誰かが説明してくれると思う。でも、清潔にすると病気が減るん。全部じゃないと思うけど……」
「清潔にすると病気が減る!」
王様とペーガはいつの間にか寝落ちしていた。ズエラは交代した書記と共に次の異界の者を待った。