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転生寸前まで逝ったボクたち  作者: 古川モトイ
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ガッコウキュウショク

王様がニノミヤロスに陥っているところへ、別の方向から来訪者があった。


「ヒロポン3世国王陛下、ご機嫌麗しゅう。大葬の折にもご立派な陛下の姿の中に亡きお父上であられるヒロポン2世陛下の面影を垣間見ました。僭越ではございますが不肖ながら私……あれ?陛下?」


ヒロポン2世を訪れたのはイモ教の大司祭ペーガだった。この男も国の乗っ取りを企てている。ヒロポン2世は白々しいおべっかを使うこの男を内心嫌っていたが、ニノミヤが最後に言い残した「和をもって~」の言葉を思い出して、顔には出さないように……いや、むしろ、懇切丁寧に応対しようと考えた。


「親愛なる大司祭ペーガ殿、機会を逃していましたが、大葬の折には余の目の届かぬところまで細やかに取り仕切っていただいた。亡き父も感謝していると思う。感謝している。」


ペーガは半歩後ずさった。予定と違う。


「あれ?陛下どうされた?」


ヒロポン2世はここまでの流れをあらかた話して聞かせた。ペーガは目を白黒させながらそれを聞いていた。


「そんな……そんなことできるのですか?」


立場上、他の宗教に塩を送るのは容認しがたいが、「ケイサツ」には大変に興味がある。なにせ邪教徒による暗殺と強盗が後を絶たないばかりか、イモ教の中にも裏で邪教に通じている者がいる気配があるのだ。今まで国の治安は軍隊が何となく維持していたが、イモ教は表立って軍に色々言える立場にない。誰でも泣きつけるケイサツができたらそれは素晴らしいし、暗殺と強盗(あと誘拐)をしない宗教が増える分には別に実害が無い。


「あのー、呼ばれてきたみたいなんですけど。サワベっていいます。」


ヒロポン2世はこれまで何回もした説明をここでもした。ペーガはそれを見ながら、ここで乗り遅れては後々まずいと考えた。


「恐れながら陛下、私めもここにいても……」

「許す!」


サワベはそのやり取りを見ながら、おずおずと語りだす。


「僕、社会苦手だからあんまりそういう話できないけど。得意な話してもいい?」


王様は顔を輝かせた。


「何でも申して下され!」


サワベはにっこり笑った。


「僕、食べるの好きでさ、『ガッコウ』も『キュウショク』の時間が一番楽しい。」


一同静まり返った。


「申し訳ない…『ガッコウ』と『キュウショク』の意味が分からない。」


サワベは少しがっかりした顔で「ガッコウ」と「キュウショク」について話し始めた。イミスタンの人間の顔が驚愕の色に染められていく。


「15歳まで学問!?しかも食事がついてくる!?」

「陛下!ガッコウと軍の訓練とは違うのですかな?」


サワベは朗らかに


「違うよ、ガッコウでは軍隊の訓練とかしないよ。勉強と体育と給食だよ。」


と答える。


「どうりで、余と同じぐらいの年齢なのに異様に頭がいいと思った……余は世話係が学問を教えてくれたが、国の人間は違う……」


ペーガが辛抱たまらず質問をした。


「もしかして、そちらの国の民は皆読み書きができるということですか!?」

「うん、大人は基本的にそう。」


ペーガは膝から崩れた。


「陛下はこの半日ずっとこのような連中と話をされていたのですか?」

「分かってくれたかペーガ……これがどれほど膝に来るか……」


その間書記は学校に通う人数などを細かく質問していたが推測される人口に再び驚いた。


「そろそろ時間かもまたねー」


サワベは帰っていった。


「毎日500人の子供に豪華な『キュウショク』、それができる学校が『シ』内だけで8!なんと凄まじい国力!」


呪い師は部屋の隅で崩れて眠っている。しかしそれを咎める者は誰もいなかった。

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