最後の来訪者
来訪者はモリが最後ではなかった。3年1組は生徒33名を数える。そして、バスガイドと運転手も残っていた。運転手は働く意義についてイミスタンと異界の人間で共有できる価値観があることを示して国王以下イミスタンの賢人達を喜ばせた。バスガイドは「学校の勉強は社会に出て意外と役に立たない事が多い」ことを具体的に示して関心を引き、残った生徒たちも異界の知識を披露していった。
「僕たちは、家に帰れるんでしょうか?」
バスは事故の瞬間から謎の空間に取り残されていて、一人ずつ、バスを降りてここへやってくるのだと彼は話した。呪い師は「落ちてきた火の玉」は自分の仕業ではない事を説明したが、歯切れが悪そうにしていた。王は来訪者が途切れたタイミングで問いただすと、呪い師は「私は異界で亡くなった人を呼び出したんです……そればっかりは言えなくて」と言って、辛そうな声を出した。
「これで終わりかな?」
王の執務室には多くの人が詰め掛けるようになっていた。異界の知識を欲した臣民が詰め掛けていた。
「終わりではないぞ。」
最後の来訪者はヒロポン2世だった。
「お父上……」
深い優しい笑顔を浮かべてしばらく無言で息子を眺めていた。
「お前に言いたいことがあって来た。私や先祖のことを気にせず、お前のやりたいようにやればいい。下手を打てば、この国は滅んで国の名前ごと消えてしまうぞ。最後の王としての勤めを全うすればいいではないか?うらやましいぞ息子よ。」
「お父上!」
先王は深々と頭を下げて消えていった。亡き妻の下へ行ったのだろうか。そして、唐突に目は覚めた。