王の居場所
セッケンのドタバタが過ぎた後、寝落ち組が目を覚ました。
「コオリと言います。社会が得意です。三権分立について話したいと思います。」
「『サンケンブンリツ』?」
コオリはまつげの長い物静かな女子だった。
「はい、私も最近学校で習ったばかりの話なのですが、頑張ってしっかり話します!」
「聞きます!」
コオリは深呼吸した。そして口を開く。
「まず、私たちの国は国の役割が大きく三つに分かれています。『リッポウ』『シホウ』『ギョウセイ』の3つです。これを『サンケン』と言います。『サンケン』が分かれているから『サンケンブンリツ』です。」
書記は必死で書いている。意味は当然分かっていない。ただ書く。
「『リッポウ』は法律を作ります。これをやっているのは『ギカイ』です。『シホウ』は『ギカイ』が作った法律で裁く機関です。あと、『ギカイ』が作った法律が憲法に違反していないかも調べます。」
ヒロポン3世が膝を叩いた。
「憲法は知ってるぞ!法律を作るための元だ!」
コオリは頷いた。
「はい、『シホウ』は出来上がった法律が憲法に違反していないか見守る役目も持っています。『ギョウセイ』は法律で決められたとおりに実際に国を動かします。」
コオリは三権が互いにチェックしあう構造などを丁寧に話して言った。
「これらは憲法で決められています。」
一同がうなった。クーデターを目論むズエラ、イモ教による国の支配を目論んでいたペーガは、この構造が完成してしまったら野望は完全に潰えるのではないかと思索をめぐらせていた。明るい顔をしているのはヒロポン3世だけだった。
「これは凄い……ちなみに国王はこの中でどの役割をになう事になるんだ?」
コオリは少し困った顔をした。
「その役割の中に国王はいません。」
「え?」
今の「え?」は誰の声なのだろうと、全員が思った。自分かもしれない。そうではないかもしれない。
「私たちの国には国王ではなく天皇がいますが、国の象徴としてご活躍されていて、三権には……」
呪い師が怒った。
「陛下、この者はウソを言っております!王がいない国などあるわけがありません!」
コオリは泣きそうな顔をしている。
「本当なんです!私たちの国は国民に主権があるんです!」
「陛下!騙されてはいけません!私の召還術が未熟ゆえに悪魔を……」
「黙れっ!!」
王が怒鳴った。コオリは泣き出している。ペーガとズエラの頭の中では「国民に主権?」という「?」がぐるぐる回っている。コオリのすすり泣く声に王は勤めて優しい声を掛けた。
「大きな声を出してすまなかった。私の亡き父はよく言っていた。『息子よ臣民のためにあれ』と。なるほど、そちらの世界では国は『王』ではなく『国民』によって形作られているんだな?」
コオリは泣きながら頷く。そして消えた。
「なるほど、次はお主……いや、貴方ですか。」
「貴方」と呼ばれた男性は頭を下げた。
「お初にお目にかかります。3年1組の担任をしている、モリと申します。」




