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最終路 後編 手に余る幸福と

 街灯の明かりで見えないが満天であろう星の下、制服姿の女の子と上半身だけセーラー服の僕という、誰かに見つかるだけで警察もおまけについてくるような光景。兎にも角にもこの状況の理由が知りたい。


「なんでセーラー服なのかな?」


 自分でもそこじゃないだろうとは思うものの、それはそれで気になるところだ。質問がお気に召したのか、彼女は一気にまくし立てる。


「それはやっぱり女装の王道だからですよ!メイド、制服、アニメのコスプレ!色々拘りがあってもここだけは外せないですから!」

「そうなんですか」


 彼女の勢いに押されて適当に返事をしてしまう。


「そうなんですよ。けどメイドとかアニコスは拘るとコストが跳ね上がるし着せるのも大変で……その点普段から着る前提のものはシンプルな作りになっているのであなたでも着やすいと思ったんです。

 着せてみたいと思ったきっかけは友達の卒業アルバムを見せてもらったときなんですけど、文化祭の写真で女の子の格好してるのを見てビビっときまして――」


 聞いてもないのに動機まで話してくれました。確かに中学生までは女の子みたいだと言われてたけど女装なんて……一回だけあったな。女装とまではいかないが、確かに文化祭の時ウィッグを着けられて写真に撮られた記憶がある。

 それがこの状況とどう繋がるのかはわからないけれど。


「だからパンツを置いてみたら穿くかなって思ったんですけど違って、けどブラを着けようとしたのを見て確信しました、あぁこの人は女装が好きなんだって!」


 ブラを付けようとした瞬間……おっさんのじゃないことの証明で自分でも付けれないサイズであるかを確かめたときだ。ってかあれを見ていたのか……。


「本当は新品のものを置くつもりだったんですけど、あなたが早く登校してくるから焦って自分が着けてたのを投げたので、すごく恥ずかしかったんですよ?」


 そう言って拗ねるような表情の彼女は可愛かった。何か滅茶苦茶なことを言われた気がするが、可愛い。そういえばしっかりと彼女の目をしっかりと見たのは初めてのような気がする。光の当たり方では緑にも見える瞳と目が合う度に、体中が熱くなる。緊張とも違うなんだか心地よいようで現実感のない痺れがきて、もう自分の体が何処にあるのか判らなくなりそうだ。


「でもやっぱり思った通りですね、よくお似合いです。写真をとってもいいですか?」


 断る間もなく彼女は僕の腕を取って写真を撮ろうとする。もう抵抗する気はなかった。彼女と腕を組んでいるという事実だけで満足だ。しかも写真の枠に収まろうと僕の体に頬が当たるほど密着していて、もうどうだっていいや。

 写真を撮り終えた彼女はスマホを眺めてほほ笑んだ後、それをポケットにしまってこっちを見た。

 さっきとはうって変わって自信なさげな表情。軽く手を合わせて人差し指をクルクルと回していて、目も泳いで落ち着かない。まるで告白でもされるのかと思ってしまい、無性にドキドキする。


「好きです、付き合ってくだひゃいっ!」


 手を差し出して頭を下げる彼女。告白するときのイメージはこれだが、これが正しい作法なのだろうか?

 しかし本当に告白だった。なぜセーラー服を着せて告白する流れになるのかわからないが、彼女から告白されたことがうれしくて、とっさに返事をしてしまう。


「こちらこそよろしく」


 差し出された手を取る。これが正解なのかはわからないが、少なくとも彼女の手を握るチャンスだった。正直この状況でOKするのは不安もあるが、彼女を抱きしめたい衝動が体の中で渦巻いていて、それが付き合うことで叶うというのなら多少の不安などどうということはない。

 返事を聞いたまだ名前も知らない彼女は、僕が握った手を顔に寄せて頬ずりをする。まるで僕の存在を確かめるように。愛おしむように。その後僕の手を両手で包み込んで、彼女は僕を見る。


「嬉しいです、こんな私を受け入れてくれて……」


 感極まったのか、僕の腕を抱きしめる。ちょっとこの娘はボディータッチが多すぎる気がするけど、まあいいか。……ん、受け入れる?


「次は手始めにメイド服を着ましょう!あなたは絶対ミニスカが似合うと思ってて、足が綺麗だから出していきましょう。多少男性のラインが見えるので膨脹色の白ストを使って見るといいかもですね?」

「えっと、僕は君が着てるところが見たいかなって」

「恥ずかしいですよぅ。一緒に着てくれるなら、考えますけど……」


 どの道、僕は着ないといけないようだ。でも彼女のメイド服姿を思い浮かべると、それでもいいかと思えてしまう。これが惚れた弱みというやつですか。


「それならサイズ違いで揃えたいね。一緒に写真撮ってもいいよね?」


 ついに敬語までなくなってしまった。ん、サイズ?

 そういえば何で僕はセーラー服を着られたのだろう。流石に女の子のサイズが入るほど小柄ではないんだけどなぁ。だが実際着れてしまっているのはなんでなんだ?

 制服を指さして何故サイズが合うのかと尋ねると、今日一番の笑顔で彼女は答えた。


「父のだから。むしろ大きくなかった?」


 彼女は出会ったときから変わらない、ブレザー姿。小首をかしげて僕をうかがう姿に、この娘に恋したのだと改めて感じたのだった。




 っえ、父のって?

 

 終わり。

 こんなところで終わるのかと言われそうだったのですが、これはあくまで一発ネタです。キャラクターの名前を明かしていないので非常に読みづらかったと思いますが、これが僕のせい一杯です。拙い作品にお付き合いいただき、誠にありがとうございます。

 反響次第では気分を良くした私が書くかもしれませんが、この二人の物語はこれで御終いです。

 次回作はファンタジー路線で行くつもりです。八月から(出来れば)毎日投稿しようと思っているので、気が向いたらお越しください。

 それでは、またどこかでお会いできる時を心待ちにしています。

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