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カノンとあいつ  作者: TAO
6/9

シュール






ねえ……………





「ねぇ准?」




………と、准が私と同じだけ表情を強張らせる。





見つめ合うお互いの瞳の中を往き来する──“まさか”





…………でも


もういいんだ!


私、決めたよ?








「准、あなた今、何処に居るの?」






今私を突き動かそうとしているのは、目も眩むような残酷で意地悪な衝動……。




准が忽然と変容してゆく様を、私は目を逸らさずに見届けなければならない。




これは多分、准が私にくれた最後の宿題だから。







目の前の准の格好をしたマネキンが、瞳孔の開いた真っ黒な瞳をゆっくりと持ち上げる。




怖い…………!








「ごめん、少し急ぐんだ…もう行かないと」



言いながら、女の子に触れていた指先が神経質に震え始める。



…………何?



「急に何?

行くって、何処へ行くの?」



「それは聞かない約束だろ?」



「准、何言ってるの!?

ふざけないで!」







肩をすくめたまま鼻白む准。



その腰に、必死にしがみつこうとする女の子。





私を真っ直ぐに見る、准の大きく見開いた瞳。





テーブルの蝋燭が、丸い炎を一瞬、機敏な生き物のように窄め直す。





……もう何も言ってはくれないんだよね?



あの時だって………



さよならも言ってくれなかった。








准が ─────


──── 消えてしまう!








「あなたは私とずっと一緒に居てくれるって言った!

……そうだよね?」



なんで?



「結婚したら女の子が欲しいって………

名前は僕が付けるんだって………」






私には未来がはっきりと見えたの……


そこには…そう、この子だったわ?



准も私もこの子の側でいっぱい笑ってるの。



だって………



「この子はこんなに准の事が好きなのよ!?」


ねぇ、違うの?


「准にパパになってほしかったんだよ!?」






黙ったまま首を垂れて、女の子の髪を慈しむように撫でながら、瞳に浮かべた涙は今にも零れ落ちそうに………





─── 時間だけが、あなたを見極めようと、厳かな沈黙を横たえている。







口角に悲しく浮かべた微笑みを守ろうとする余り、貝を作る女の子の頭を咄嗟に胸に引き寄せようとしたその刹那………

准の狼狽えた瞳から涙が溢れ、中空に幾つもの白い光が零れ落ちる。



私の、ようやく塞き止めていた涙腺はたった今潰え始め、痙攣を始める横隔膜に、上ずった声の欠片さえもが、力無く漏れ出そうとする悲鳴の方へとたちまち取り込まれてゆく。



でも、




── 私にはもう誤魔化す事なんて出来ない……。










分かったわ……。



准………ごめんね?



もういいの………。


































─── 准はあの日死んだ。


















そうでしょ……准?






何であんな事したの?






私、怖かったのよ………






電話が鳴ったの。






冷たい雨の日だった。






なんで?






私もう、忘れようとしてたのに…………






誰のせいでもなかったのよ?











「准?」










「ねぇ准…………」






















―――――★―――――










―― ★ ――― ★ ――










★ ――― ★ ――― ★










―― ★ ――― ★ ――











―――――★―――――

















































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