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カノンとあいつ  作者: TAO
3/9

おんなのこ









○ ○ ○ 〇 〇 〇







いつからそこに居たのか、扉の前で可愛らしい女の子が「早く早く…」とちっちゃく跳びはね、准を手招きしている。



中高なかだかの小さな顔に、黒目の張ったあどけない瞳……。

まだ小学生にも満たない女の子に見える。



ねぇ耳を貸して!と言わんばかりに准の腕をしきりに引っ張ろうとする。





それでも……

屈み込んだ准に何かを告げようとして、なかなか上手くいかないのか、准と顔を見合わせては首を傾げ、笑ったりぐずったりしている。



聞き入れられない我が儘に身体全体で拗ねて見せては、また最初から無心を始める女の子の仕草を見ていると、それは次第に私を言い様のない幸福感で一杯にしていった。




やがて、私の顔と准の顔を交互に見比べると、ちっちゃな女の子独特の、恥ずかしそうな仕草をする。



准が女の子のほっぺを両手に挟んで…

「言っちゃいな…!」

クシャッと笑った顔で言う。


女の子が柔らかい体をくねらせる。






「このお兄さんが好きなのね…わたしも大好きよ!」





今笑ったかと思えば、もうもぞもぞして動き回る女の子を、准が長い腕でひょいと抱き上げる。


水色のワンピースがふわっと宙に舞い、大きな准の胸にとまる。






「想像してたまんま、すっごく綺麗なお姉さんなんだってさ!」




准の平明な呆れ声に、女の子はキャキャっと笑い、腕の中の嬉しそうな瞳が一瞬まん丸く弾けたかと思うと、間近な准の顔を、瞬きもせずにじっと見上げている。
















私の中に、息ずくささやかな衝動…。



─── この子をギュッと抱きしめてみたい!






それはとてつもなく唐突に私を襲う、これまでに味わった事のない温かい感情だった。




─── 私はこの子を知っている………




一目見た時から、私を魅了し始めていた奇妙なノスタルジー。




でも、



………… この子、



…………… 一体誰なの?












○ ○ ○ 〇 〇 〇 〇 〇










扉に目をやると、品のいい白髪の老紳士が、いつの間にか私達を招き入れようと、丁寧なお辞儀をしている。





「お待ちしておりました」





開かれた扉から零れ出す光が、私たち三人を優しく包み込む。



中から聴こえてきた音楽に急に嬉しくなって、私は准の横顔を窺っていた。



准が得意そうに両目をくるりと回す。











─── 私達はよく音楽の話をして過ごしたものだ。







あの、哲学の講義で隣り合わせた日の准のことを、私は今でも忘れることが出来ない。




挿絵(By みてみん)


























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