3 気持ち悪い・・・
朝霧が村を覆い隠し、朝を迎えた頃。
私は村の入口に向かった。
とくに、何も考えなんてなかった。
着の身着のまま。必要なものなんて何も考えていなかった。
「す、すいませんっ!遅くなりました!」
私が入口に着く頃には、4人の人影が見えた。
神官の服を着ている昨日会ったブライス。
他には3人。
身軽そうな男性と、
鎧を着ている大柄な人。
剣を2本持ち、なんか怖い雰囲気の人。
4人の視線が私に集まる。
「は、早いんですね。みなさん。遅れてごめんなさい!」
「別に大丈夫だよ。そこまで待ってないし」
「このちっこいやつか?新しい仲間ってのは?」
「あぁ、ティナって言うんだ。仲良くやってくれ」
「あ、あの、ティナです!よろしくお願いします!」
ブライスと一緒に鎧をまとった大きな体の人が迫ってくる。
覗き込まれただけでも、すごい威圧感。
「俺はシュウだ。これから頼むぞ、嬢ちゃん」
大柄な人はシュウ、と名乗るとそのゴツゴツした手で私の頭を撫でる。
ちょっと、痛かったけど・・・。
「おーい、ブライス。明るくなってきたな。朝霧が晴れる前にもう行こうぜ」
身軽そうな服装をしている人が歩き出した。
シュウはそのあとを黙ってついて行く。
もうひとりの怖い人は・・・。
あ、私たちの後ろにいた。
ブライスは私の肩をポンっと押して、裏の外へ押し出した。
(あっ・・・)
私は、初めて村の外へ出た。
まだ、たった一歩。
でも、その光景は村の広場から見るものとは全く違う。
私は4人に連れられるまま、村を離れた。
「さっきの大柄なのがシュウ。重騎士なんだ。ずば抜けた防御力で敵の攻撃を防いでくれる。でも、怪我するのが多いから治してやってくれ」
「シュウさんですね。分かりました!守っていただいているので、そのくらいお安い御用です!」
「あっちの、先頭を歩いているのはトビ。盗賊だ。」
「と、とうぞくぅ!?」
驚く私の声に先頭を歩くトビはジロッと視線を向けた。
別に悪気があったわけではないけど、普段盗賊となんて接しないから驚いちゃった。
「今も、索敵スキルで敵やモンスターと遭遇しないか調べながら進んでくれている。盗賊といっても、味方だと頼りになるんだよ」
「へ、へぇ~」
「後ろを歩いているのはカイル。あいつも旅で知り合ったんだ。剣闘士って知ってるかな。剣や、格闘技や、戦うスペシャリストってやつ」
「つ、強そうですね・・・」
私は、あの人が苦手・・・。
あの雰囲気、冷たい感じ。好きになれそうにない。
カイルは私たちの話を聞いているのか、聞いていないのかそのまま無視して歩き続けた。
「んで、最後は俺、神官のブライス。神官だから回復もできるんだけどさ。チームの連携もしないといけないし。一応、武器も使えるけど、ティナみたいに魔法が使える人がいると安心だよ!」
彼の笑顔が私には痛い。
攻撃魔法なんて、使いたくない。
できれば、このままモンスターと遭遇しないでうまくやっていきたいんだけどな。
「あはは。魔法、まほう・・・。魔法。うん、頑張ります」
海まで続く長い旅は始まったばかりなのに、私はパーティーメンバーに馴染めるのかすでに憂鬱だった。
2日目の朝、それは起こった。
私は、山に自生する薬草などを採取している最中だった。
村とは違って、図鑑や本、売られているモノでしか見たことのないような薬草が自生している。
これは、なにか後でつかえるのではないか?と魔法使い・・・いや、回復に専念したいので回復役と言っておく。回復役の勘ってやつ。
他の4人は朝起きて行き先も告げずにどこかへ行ってしまった。
私が聞いても4人は答えてくれなくて、ブライスだけが、戻ってくるからそばにいるように。とだけ言っていた。
私は言われるがまま、近くで薬草取りをしていた。
両手いっぱいに摘んで昨日キャンプした場所に戻るとそこにはブライスの姿があった。
どうやら、用事は終わったらしい。
「おかえりなさい。・・・ほかのみんなは?」
「あぁ。もうすぐ戻ってくると思うよ。何してたの?」
彼はカバンに何かをしまっている。私の立ち位置からではそれが何かわからない。
「私は、薬草を取りに行ってたの」
ホラっと私は両手にいっぱいの葉っぱを彼に見せる。
彼は、興味なさそうだった。
「あぁ、薬草か。魔法使いだと、そうゆうのに詳しいんだね。」
「詳しいってわけじゃないけど、簡単な薬で回復薬も調合できるから」
私は、なんとも微妙な空気を感じながら薬草を専用の袋に入れてカバンにしまった。
新鮮なうちに調合したいけど、歩かの人も帰ってくるなら後で調合したほうがいいかな。と。
ガサガサ・・・
茂みが大きく音を縦立てて揺れると、シュウたちが戻ってくる。
「ど、どうしたんですか!?その怪我!!すぐ癒さないと!!」
私は血だらけのシュウの傷を魔法で癒す。
・・・が、シュウの傷は見た目ほどひどくなかった。
結構大怪我に見えたのに、傷は浅そうだ。
「だ、大丈夫ですか?」
「あぁ。だいぶよくなった。やっぱり回復役がいると違うな。」
「お役に立てたならいいですけど、あまり無理はしないでくださいね・・・」
私は全身の力が抜けてその場にへたりこんでしまう。
こ、腰が抜けた・・・。
血は、苦手。気持ちわるいし、全身に力が入らない。
何かが胃から込み上げてくるような感覚が襲うなか、私はその場で横になり休むことにした。
目を閉じると、体が地面に吸い込まれるような感じ。気持ち悪い。
ブライスたちが何か言っているけど、今の私の耳には入らなかった。