閑話:フェンとソート
「あっいたいた!フェン!…とついでにソート!」
目の前から金髪碧眼の少女が走ってきた。
「ちょっと、アリス。ついでってなんだよ」
ソートは口を尖らせた。
「なに?アリス」
フェンは視線をアリスに合わせて尋ねた。
「いや〜、まさか屋上の中庭にいるとは思わなかったぜ。実は、ちょっと用事があってな…説明はあとで。とりあえずついてきてよ」
アリスは朗らかに笑って辺りを見回した。
壁に囲まれているものの、天井に晴天の空が見え、地面には色とりどりの花が咲いている。
(そういえば、最初ここに来た時、花冠なんて作ったっけ…)
アリスは過去を思い出し、クスリと笑った。
(俺は不器用だから上手く出来なくて、ラフィネが作ってくれたよな)
ふと、視線を2人に戻せば2人は不思議そうな顔をしていた。
「…なんだよ」
「え…いや、自分からさっさとついて来いとか言ってたくせにずっと突っ立って笑われてたらついてきようがないよな?」
ソートの言葉にフェンはこくりと頷いた。
「あっ、そうだった!行くぞ!」
思い出したようにアリスは走り出す。
「あっ、おい!城は走るな!」
「ちょっと、待って!」
その後に慌てるソートとフェンが続いた。
「よし、着いた」
アリスはそう言って、ソートとフェンの方を振り返った。
「ここって…」
「ステータス室?」
ソートとフェンが口々に呟けばアリスがドヤ顔でドアを開けた。
「そうだぜ!」
そして、数秒後静かに閉めた。
「…アリス?」
フェンが不思議に思い声を掛けてみればアリスは顔を強張らせて振り向いた。
「悪い。あとでにしよう」
そして、行った行ったというように俺らに手を振ると静かにドアが開いた。
「アリスさん?」
そこにはクノイチが立っていた。
「全く。あなたはどうしてこう…」
「悪かった。悪かったよ!だからもういいだろ?」
「良くありませんよ。反省というものを理解していますか?」
「おい、フェン…」
「…」
「俺たちどうするんだ?」
「…俺に聞かないで」
アリスがクノイチに捕まってから数分。フェンとソートはずっとその場で立ち往生していた。アリスは自分が謝ることに精一杯でクノイチは怒ることに夢中である。完璧に無視されていた。そろそろその場を離れようとしたフェンとソート。
「では、そちらのお二人さん」
突如、クノイチから声がかかる。恐る恐る振り向いてみればにっこりと微笑んでいるクノイチがいる。
「な、なんですか?」
フェンが恐る恐る口を開けた。
「アリスさんのやろうとしていたことを説明しますので中に入ってください」
そう言ってクノイチはステータス室を示す。アリスは蒼白なまま正座をしている。足が震えているように見えるが、恐怖なのか、痺れなのか。フェンとソートはこくりと頷き、静かに部屋へと入った。
「…というわけでステータス室は存在しています」
クノイチはステータス室の説明を丁寧に言った。フェンとソートはなるほどという顔でクノイチの話を聞いている。
「個人情報…ですから、見せてもらうのは許可をもらってからにしないといけないんです」
そう言ってクノイチは目が笑ってない笑みをアリスに向けた。アリスはびくりと反応し、クノイチから目を逸らした。
「別に俺はいいよ」
「お、俺も!」
ソートとフェンが次々に許可をする。クノイチはそれを見てアリスに顎で示す。アリスは肩を震わせながらもソートとフェンに目を向けた。
『フェン
職業 海賊上がり
状態異常なし
Lv.13
装備 木の槍
攻撃 49
防御 40
器用さ 20
魔法力 12
魔法防御19
HP 89/89
MP 10
運 33
スキル
海なぎ
海のさえずり
水しぶき
石投げ
海山斬り 』
「ほう...普通ですね」
「普通だな」
「フェンはフェンだな」
2人の意見を聞き、ステータス室でステータス公開もとい個人情報公開が始まり、早速フェンから覗かれている。上から順にクノイチ、アリス王覇である。ちなみに、ラフィネとアルネアも部屋にいるのだが王たちと違いステータスが見えないので蚊帳の外。2人で部屋の隅で話をしている。
「…なんだよ。その微妙な反応は…」
フェンは顔を顰めながらそう呟いた。だが、スルーされた。
「さあ!次はソートだな!」
アリスが元気よく叫んだ。
『ソート
職業 狩人上がり
状態異常なし
Lv.9
装備 木の弓
攻撃 32
防御 31
器用さ 45
魔法力 30
魔法防御29
HP 79/79
MP 67/67
運 36
スキル
さみだれボウ
火矢
天弓
的中up 』
「実に平和的な数値だ」
「こういう安定している方は使いやすいですよね」
「あとちょっとで10れべだな!」
上から王覇、クノイチ、アリスである。
「あの、今使うとか聞こえたんだけど…」
ソートがゲンナリとして言った。それに対しクノイチは真顔で
「言ってません」
と答えた。
「えっ、でも確かに...」
「言ってません」
「俺の耳は…」
「言ってません」
「…そうだな」
クノイチのゴリ押しが聞いたのかどこか遠い目でソートは諦めた。そこにフェンがなぐさめるようにソートの肩を叩く。男通しでの絆が確認された。
「…さすが、クノイチさん」
ボソリと誰かが呟いた音をクノイチが拾ったとかで城内は慌ただしくなった。
誰が言ったかは予想してみてください。