38ゲーム目
お久しぶりです!
いつも2000字前後ですが、3000字ほどとなっております。
途中、出てくる魔物やら何やらを切り捨て、王覇達一行は順調に内部へと進む。
「アルネアちゃん、大丈夫かな....」
そう呟くラフィネ。
「大丈夫だよ!アルネア達はなんだかんだ強いから!」
「そうだ、それよりもできるだけ早くクリアして全員で戻ろう。この先、ボスだ」
アリス、王覇の順にそう告げる。
「速っ!」
間髪入れずにソートが答えた。ふと、先頭のアリスが立ち止まる。
「この辺に仕掛けがあるんだよな?」
「ああ。これだ」
王覇は赤いスイッチを指さす。アリスがそれを戸惑いもなく押した。
「ちょっ!心構えとかありますよね!?」
ラフィネのツッコミが炸裂するがもう遅い。今まで壁となっていたところが大きな音を立てて開き始めた。
「敵は、タラちゃんですね」
クノイチが突如つぶやく。
タラちゃん、本名「タランチュラスーパースケルトンマックス進化系」は名前通り猛毒の蜘蛛だ。ただしすべてが骨で出来ている蜘蛛である。そのため、倒しても復活し、倒しても復活し、エンドレスボスと言われている。ただ、そんなタランチュラスーパースケルトンマックス進化系のタラちゃんにも弱点がある。それが、『初期治癒』などの回復スキルである。よは、攻撃されて回復スキルを唱えれば自然にダメージが入る。さらに、味方の傷も回復。ボスとは呼べないボスなのだ。ダメージを受けたタラちゃんは徐々に足がなくなっていき、次第に消える。可哀想な運命なのだ。名前の語尾にマックス進化系という言葉が入るものは大体、ある特定の方法でしか倒せないように出来ている。しかし、タラちゃんには通常攻撃やスキルが効かない。つまり、この洞窟には巫女とか神官とかがいなければ攻略は不可能なのだ。
「俺に任せろ」
そんなことを知っている王覇は堂々とそう言った。アリスやクノイチは任せたとばかりに頷くが、そんなことを知らない他の2人は口を開くしかない。
「....ドヤ顔でそう言われても」
「あ、あんまり格好つけても後が怖いだけでは?」
ソートとラフィネがそう言った。王覇は肩を落とし、下を向いた。
「気にしないでください。きっとすぐに意味がわかりますって」
クノイチが王覇を慰めるが、王覇は反応しなかった。そうこうしているうちに壁が綺麗にどかされ、タラちゃんが見える。
「行くぞ!」
アリスがそう言い、突っ込んでいき、ラフィネも慌ててあとに続く。ソートが白い目で王覇を見ながらも、通り過ぎていく。
「キングさん、私も行きます。あなたがいなくて誰がやるんですか」
クノイチの言葉に王覇は顔を上げたが、クノイチは既にいなかった。
「ここであったが100年目!タランチュラスーパースケルトンマックス進化系!勝負だ!」
アリスがあちこちを闊歩している白い蜘蛛に向かってそう言い放った。それがタラちゃん。もちろん、蜘蛛は無視している。アリスは満足げに頷いて斬撃を放った。突如の攻撃にタラちゃんが対応出来ずに骨になった。もともと骨だが、骨の山になった。
「やった!?」
ソートがそう叫ぶが、その表情は再び真剣なものになる。タラちゃんの残骸はプルプル震え、再びタラちゃんとなって、今度は襲ってきた。蜘蛛なだけに速いタラちゃんはアリスに攻撃した。
「いたっ!」
前足を横薙ぎにしてアリスの胴を吹っ飛ばす。アリスが洞窟の壁に衝突する。
「大丈夫ですか!?」
ラフィネの警戒がアリスに逸れた隙にタラちゃんは素早くラフィネを攻撃する。再び、横薙ぎ。吹き飛ばされるラフィネ。ソートは冷や汗を出す。
(アリスがやられた。ラフィネがやられた。クノイチさんは隠れている。キングは出てこない。次は中衛の俺だ)
考え通りにソートへとタラちゃんの攻撃は移行する。ソートはなんとか弓矢を放った。その弓矢がタラちゃんへと上手く当たる。タラちゃんは再び骨の山になった。
「....」
今度は喜ばずに、骨の山をじっと見つめる。するとすぐさま骨は動き出し、再びタラちゃんへとなる。
「『初期治癒』!」
王覇の声がふと聞こえた。すると、倒れていたアリスに光が灯る。
「おっしゃ!復活!!」
そう言ったアリスと同時にタラちゃんが辛そうに呻いた。
「キシャー」
見れば、少し小さくなった。
(これは....どういうことだ?)
法則性がわからず立ちすくむソートを置いて、場面は動く。
「初期治癒!」
王覇が再びスキルを発動し、ラフィネを回復。それと同時に苦しむタラちゃんにクノイチが忍び寄り、攻撃を食らわす。ポキっ。そんな音がして骨が1本折れて前足の一つが完全に消えた。
「キシャー!!」
これは相手がマックス進化系の名前がつく時に限り有効な手段。何かの条件でしか攻撃できないマックス進化系がその攻撃に怯んでる隙に攻撃すると、その攻撃が有効となるのだ。『ライトオブディレクション』では裏技と知られているものの一つだ。
タラちゃんの標的が自分に移る前にクノイチはさっさと退散する。タラちゃんが動き出すとアリスが再び突進してくる。
「くらえ!!」
わざとアリスは剣をおおきく振り、空振りするとタラちゃんは待ってましたとばかりに攻撃をする。再び投げ出されるアリス。
「うっ」
「初期治癒!」
すぐさま、王覇が回復。その間にラフィネが攻撃。すると、スキル発動と同時に攻撃したからか、轟音を立てて足が4本消える。残りの足は3本。
「キィィィィィ!」
すると、タラちゃんが変な声を上げ、体を白から赤へと変色させる。
「鬼タラだ!!」
アリスが1歩後ずさり、警戒をする。ラフィネもそれに習う。ソートはさらに後ずさり、王覇の隣へとポジションを移す。
「あれはなんだ?」
そう呟けば、王覇が答えた。
「あれは、鬼モードになってます気をつけてくださいタランチュラスーパースケルトンマックス進化系だ」
「名前が長い!!」
ソートが緊張しながらも突っ込む。
それは『ライトオブディレクション』のどのプレイヤーも考えていたことだった。『ライトオブディレクション』では図鑑という機能があり、出会った魔物や人はその図鑑に登録される。これを百パーにすることもプレイヤーの二つ目の目的ともされている。理由は百パーになると超絶豪華な景品が手に入るのだ。とりあえず、それがなんなのかは置いといて。その図鑑には当然タラちゃんも登録される。タラちゃんは鬼モードになると攻撃とかパターンが変わるので、2ページ使って紹介されている。通常の魔物や人物は1ページで終わる。そして、タラちゃんの鬼モードの名前は2行にも渡る。なぜこんなに名前が長いのかという話もあり、1番有力な説は、「図鑑のページをなんとか確保するため」というものであった。確かに生息地も、通常のタラちゃんと変わらないし、変わったといえば、攻撃パターンが横払いから振り上げへとなり、体の色が変わったくらいだ。
そんな鬼モードになってます気をつけてくださいタランチュラスーパースケルトンマックス進化系は真っ先に後ろにいたクノイチへと攻撃する。
「っ!?気づかれてたんですか....」
突然の攻撃にクノイチは苦々しげに攻撃を受ける。攻撃を受けた腕が血で濡れる。
「うおおお!こっち向け!!オニタラ!」
アリスがそう叫び、攻撃をする。すると、赤い骨の山ができる。ラフィネが瀕死のクノイチを慌てて王覇の元へと運ぶ。
「とうとう、私もそっち側ですか....」
クノイチが悲しげに瞳を揺らした。
「おい、どういう意味だよ....」
王覇はそういいながらも、オニタラが復活するのを見て回復をする。同時にアリスが二つの剣を同時に振り回す。ダイレクトにヒットしたのか、足がすべてなくなるタラちゃん。動きたくても動けない。そういう状況だ。回復したクノイチが呟く。
「いえ....役立た....ああと、後ろにいる人という意味です」
「....今、役に立たってない後ろ側にいる人って言おうとしたな?」
王覇の言葉にソートがぴくりと反応する。
「なんか、すみません!クノイチさん!」
謝るソート。
「いえ....からかったつもりなのですが」
あくまで冗談だったというクノイチに王覇は呆れた視線を向けた。
「....よし、あとはもう1発だけだな」
「どうするんですか?」
アリスの言葉にラフィネは尋ねる。戦っているうちにタラちゃんの仕組みをなんとなく理解していたラフィネはそう尋ねる。
「....」
アリスが言いたくなさそうに、口を噤んだ。
「アリスさん?」
「生贄を決めるぞ」
「へ!?」
いきなりの爆弾発言に驚くラフィネ。
「俺か、ラフィネたん。どっちかがオニタラに接近し噛まれるんだ。そうすれば、キングのスキルで止めだ」
「....」
噛まれる。想像しただけで青ざめたラフィネを見てアリスは笑った。
「よし!俺がやる!」
そう言って、前へと出るアリス。
「えっ、アリスさんでも....」
「ラフィネたんは怖いんだろ?だから、俺がやる。ラフィネたんにそんなことさせられないしね」
そう言ってアリスがオニタラにさらに近づく。
「アリスさん....」
ラフィネの中でアリスへの株が上昇する。マイナスからゼロへと。
そして、噛まれて頭から血を流すアリスを王覇が回復させれば、タラちゃんは天へと上っていった。
いつも読んで下さる方、ブックマークして下さる方ありがとうございます!
自分で書いてて思ったんですが、今回のアリス、いかにもヒーローというか、イケメンだったと思います!女子ですが(笑)
とりあえず、洞窟ボス撃破ですかね。
第2章も終盤ですね!