35ゲーム目
大剣を手に入れた所の続きから始まります。
「これをラフィネたんに」
そう言ってアリスが渡したのはレッドソードであった。ラフィネはしばらく瞬きを繰り返し、まじまじとそれを見つめた。
「....なんか、高そうなんですけど、いいんですか?」
遠慮げに聞くラフィネに王覇、アリス、クノイチは頷く。
「それは、ラフィネのだ」
「え、でも....」
「3人で決めたんですから、どうぞ」
「....。....お金ないのでは?」
「あ〜、もう!それはラフィネたんのなの!それにラフィネたんにお金の心配なんかさせるわけないでしょ!お金は余裕なんだ!」
アリスが少し怒り気味に言ってラフィネにレッドソードを無理やり持たせた。王覇は頭を掻きながらも思う。相変わらず、アリスのキャラは安定しない。普段は男言葉なのに、ラフィネの前だと普通の女子だ。どっちが本物なんだろうか。
「....えっと、ありがとうございます」
アリスの怒った態度に驚きながらもラフィネはお礼を言った。アリスのそんな態度は初めてだった。
「....まあ、とりあえずそれを使ってください。もう1本の大剣は....」
クノイチがそこで言葉を切り、王覇を見た。
「あ?」
「キングさん。双剣士なんてものは....」
「あるわけないだろ」
「ですよね。勿体ないので、持ち帰りたいのですが....」
「クノイチが」
「却下です」
王覇の言葉をクノイチはすぐに否定した。
「俺が持つ!」
アリスがそこで手を挙げた。
「あなたは既に大剣を持っているではないですか」
「ぐふふ....。俺の野望を叶えさせてくれよ。右手にいつもの剣、左手にラフィネたんが汗水流しながら振ってた剣....。最高だぜ!これ以上ない俺の幸せ、幸運!今なら、嫌な魔物でもぶった斬れる!」
アリスのテンションに負けたクノイチが静かにラフィネの持っていた大剣を渡した。アリスの顔はにやけて凄いことになっている。
「....本当にできるのかよ」
王覇が心配そうに呟く。クノイチがぴくりと反応し王覇に言った。
「では、実験でもしましょうか」
「じっ!?」
「アリスさん。あそこに、何故かマスコットちゃんが。ちょっと、退治してきてください」
王覇の反応を華麗にスルーしたクノイチがアリスに言った。
「おっしゃあ!任せとけ!」
そう言い、走っていくアリス。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫も何も。あそこにいるのはマスコットちゃんではなく、王国騎士の残りの骸骨ですよ」
「大丈夫じゃねえだろ!?」
「まあ、なんとかなるでしょう」
「ただでさえ、大剣で速度が遅いのに、大剣2本は無理だろ」
「....祈りましょう」
そう言って、悪気のない顔で神に祈り出すクノイチに王覇は無言の視線を送るしかなかった。
一方、アリスは絶賛ダッシュなうだった。
「おーし、敵発見!」
そう言い、地を蹴り、飛び、剣を横に払う。二つの剣によって骸骨は無様に倒れる。
「....?」
アリスは無意識の内に違和感を感じた。
(なんだ?体が軽い)
そして、2体目へと移動し、再び攻撃。今度は、交互に剣を振るう。二つ目の剣で呆気なく骸骨は倒れる。
「それにしても、マスコットちゃんなんてどこにいるんだよ....」
そこにマイコーが現れる。
「あっ、マイコー」
立ち止まるアリスは反射的にその場で右手の剣を振るった。すると、剣の軌道に沿って透明な何かが現れた。
「なにこれ!?」
そう言ってる間に透明な何かはマイコーに近づいていき、マイコーが真っ二つになった。
「....ああ、斬撃か」
マイコーの様子から確認して、アリスはそう判断した。
「って、ええええええ!?」
思わず叫ぶアリス。ツッコミがいないのが痛い。
「どういうことだ!?斬撃は、魔法剣士の技だよな」
斬撃はアリスの言う通り、魔法剣士の使う発動スキルである。剣を振るうと同時に風を生み出し、遠い相手も斬れる。中級のレベルでやっと手に入る、結構いいスキルだ。鉄は斬れないが、岩や魔物は軽く斬れる。ボスは除くが。そんな素晴らしいスキルをアリスは今、使ったのだ。
「....俺、盗賊上がりだぞ?」
アリスはとりあえず戻ることにした。そして、1度だけマイコーのいた場所を見る。
「あっ....」
「戻ってきたぞ」
王覇は先程からそわそわとアリスのことを心配していた。ようやく帰って来たアリスに安堵する。
「良かったです!」
ラフィネも嬉しそうにそう言った。
「アリスさん、どうでしたか?攻撃に不備は?」
「ああ〜、それがさ....という前に、クノイチ!マスコットちゃんなんていえねじゃねえか!」
「....すみません、見間違いでした」
クノイチの言葉に王覇は思わず睨む。
(わざとだろうが)
そんなことも知らないアリスはそっかと言い、言葉を続ける。
「なんか、体が軽いんだよな」
「どういうことだ?」
王覇は思わず言った。大剣2本はかなり素早さを奪う。アリスの言葉を不思議に思うのも必然である。
「わからねえ。でも、『斬撃』も出せるようになってた」
「....『斬撃』は魔法剣士のスキルですね....」
「そうなんだけど、魔法剣士の一番最初に使えるスキルの『雷炎剣』は使えねえんだ」
「「は?」」
アリスの言葉に2人は首を傾げるしかなかった。
「それよりも!洞窟の入口が見つかったぞ!行こうぜ!」
疑問は置いとくことにしたらしくアリスはさっさと先に進む。
「ちょっと、アリスさん!?」
ラフィネがそれを慌てて追いかけ、ソート、アルネア、フェンも続く。王覇がふとクノイチに言った。
「....なあ、なんかアリス速くなってないか?」
「私もそう思いました」
「....ラフィネ効果....か?」
「そうでしたら、ラフィネさんが不憫ですね」
「....確かに」
「とりあえず、追いましょう。おいおい、アリスさんのことはわかるでしょう」
「だな」
そう言って2人は静かに走り出した。
次回は洞窟の中ですかね。
洞窟っていうと、天井から水が垂れてくるイメージなんですよね。それが、頭の上に落ちて
「ひャあああ!」
ってなるのがお決まりですかね。
フェン「洞窟なんて....余裕だっ」
アルネア「後悔しても遅い」
水「ポタッ」
フェン「ギャアアアアアア!」
アルネア「....うるさい」
余談
鳥の糞が服に落ちたんですよ....。運が悪いんですかね?それともついてる?
最悪でした。