26ゲーム目
「試練 ?」
王覇はぽかんとして言った。
「そう、試練です。」
村長は言い直した。
「代々、言い伝えられているんです。『もし、王が宝を所望するならば、我々の出す試練を乗り越えさせなければならない。』と」
「なるほどな。で、試練はなんだ?」
「村から1番近い洞窟。『赤月の洞窟』最深部にある『森の月』を取ってきてもらいたい」
「『赤月の洞窟』か....」
王覇は思い出す。
「確か、『守衛の森』を通っていかないと行けない洞窟か」
「良くご存知で」
王覇がラフィネを見る。ラフィネは目でやりましょう!!と訴えてくる。すぐに王覇は村長を見る。
「で、村長。受ける期限は?」
村長はにやりとして言った。
「一週間までです」
王覇は頷く。
「心得た」
「では、頑張ってください」
村長が立ち上がろうとするとふと、アルネアが止める。
「村長....」
「村人は手を貸してはいけない」
村長はピタリと止まりポツリと言った。アルネアはがっかりしたように肩を落とす。王覇がアルネアに声をかける。
「アルネア。手伝ってくれようとしてくれてありがとうな。だが、俺らは絶対に試練を乗り越える。そしたら、....騎士になってくれるか?アルネアの力が欲しい」
アルネアは王覇を見つめる。どこか決心したような表情だった。
「喜んで」
「あと、フェンもだな」
「....フェンも?フェンは一般人。危険はダメ」
「いや、フェンは案外強いぞ」
アルネアは首をかしげる。フェンは確かに普通だが、鍛えれば鍛えるほど強くなる。鍛えがいがあるやつだ。
「ラフィネ」
「はい」
「城に戻るぞ。アリスとクノイチを連れてこよう」
「了解です」
ラフィネは立ち上がる。アルネアが寂しそうに言った。
「もう行っちゃうの?」
王覇は笑った。
「安心してくれ。すぐに戻るさ」
そう言って王覇とラフィネは家を出た。アルネアは黙ってそれを見ていた。いや、最後にただ一言。
「待ってる。王覇」
その顔は毅然としていてあどけない少女とは思えなかった。残念なことに誰も見るものはいない。
王覇とラフィネは行きと同じ速度で城に戻ってきていた。そこには相変わらずのアリスとクノイチがいた。楽そうに椅子に座っている。
「おお、キング」
「キングさん。お久しぶりです」
「....お菓子はもう食べてないのか?」
「食べてない!!酷いぞっ!勝手に出かけて!しかもラフィネたんまで....」
「ええっと、アリスさん」
「ラフィネたん!?」
ラフィネの急な呼びかけにアリスは立ち上がる。ガタッという音がして椅子が倒れる。クノイチと王覇は黙って可哀想な椅子を見ていた。アリスは素早い動きでラフィネに詰め寄る。ラフィネはよけようとするが残念ながらアリスの器用さの方が上だ。
「お久しぶり!元気にしてた?」
「え、ええ。もちろんですよ....」
「ほんとに?ほんとに?」
アリスの顔が真顔なのが怖い。美形なだけに余計に凄みを増してラフィネを怖がらせる。
「は、はい....」
そうラフィネが言った途端に抱きつくアリス。
「良かった!」
喜んでいるようなのでアリスを離すタイミングが掴めないラフィネはそのまま黙っている。様子を見ていた王覇はクノイチに話しかけられた。
「さて、キングさん。私たちを置いて、行ってきたのでしょう?どうでしたか?」
クノイチの言葉は多少刺々しい。
「いや、そんなふうに言われても、あんたらは美味しそうに菓子食ってこっちの話を聞いてくれなかっただろ?」
「そういえばそういうこともありましたね。まあ、そんなことはどうでもいいです」
「どうでもいいのかよ!?」
「私はどうでしたか?と聞いたのですが、話を流すとは特に何も無いということですか?」
「いや、そういう訳ではない」
王覇は色々な突っ込みたい衝動を我慢して答えた。
「そうですか、ちょっとワクワクしてます」
クノイチが頬を緩ませて言った。
(こいつ、何があったんだ?)
ほんの少し見ない間にクノイチの様子が変わっている。大人で常識人だったような性格が、少し曲がったような感じになっている。王覇はアリスを見る。
(見た感じ、アリスは変わってないようだが....)
まあ、クノイチは猫を被っていたのかもしれない。そんな結論に至り王覇は考えをやめた。
「ええとだな。まず、何から話すべきか....。最初に、村の話だな。村はあった。村の中に王家の宝があるらしく、村人に俺達は警戒された」
「警戒....ですか?」
「ああ。石を投げられたりもしたな」
「....それは警戒とは違うような....」
「あとは、その村には守り神のような『最強』がいた」
「『最強』?何かの一族ですか?」
「いや、一族じゃない。何かしらの条件で村の1人がなるらしいな。その『最強』がアルネアだった」
「アルネア!?まあ、どうりで。彼女は『最強』で納得です」
クノイチもアルネアのことを知っているようだ。
「まあ、おまけもついてたがな」
「おまけ....。ノーマルキャラですか?」
「おっ、そうだ。フェンだ」
「フェン....。彼は非常に良いキャラでしたね」
「フェンを使ったことあるのか?」
「ええ。『強化素材』として」
クノイチがふと笑う。魔女のような笑みに王覇は顔を引き釣らせた。
「お、おお」
そんな反応をして王覇は心の中でフェンに合掌した。きっと彼は今頃くしゃみに襲われている。
「で、他には?」
「そうだった。家宝を欲しいと言ったら試練を出された。1週間以内に『森の月』を取って来いってな」
「....『森の月』ですか。確か、あれは『赤月の洞窟』でしたね」
「ああ」
「その家宝とやらはなんですか?」
「最強になれるかもしれない物だ」
「....いろいろと突っ込みたいですが、置いといて。つまり、その試練をクリアして家宝を貰うと」
「ついでにアルネアとフェンも貰う予定だ」
クノイチはその言葉で喜んだ。そもそもフェンはわからないが。
「それはお買い得物件です。しかも、その『森の月』が関わっているところを見ると、若干違いますがクエストの『王への階段』と同じ感じですね!」
「まあ、実際俺ら信用されてねえし、国を統一しろということだろうな」
「では、行きましょう!ついでに良い武器を!」
クノイチはハイテンションだ。アリスを見ればラフィネとつるんでいる。ラフィネは少し嫌そうだが。王覇はそこでつるんでいる2人に呼びかける。
「おい、クエストに行くぞ!」
はい!次回はみんなでクエスト攻略です!
クノイチの要求している新しい武器は手に入るのか?できれば鉄で!そんな高価な?武器はあるのだろうか!?クリアできるのか!?4人の連携はどうなるのだろうか!?
次回予告、してみました(笑)