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ゲームのイベント報酬は異世界体験  作者: 真冬梨亜
無双少女とふてくされボーイ見参?
26/45

24ゲーム目

「おい、人影がいるぞ!」

 1人の男の叫びで村人は全員が反応する。

「武器構えろぉ!」

 その声に反応し村人たちは武器を構える。といっても、農具や料理器具。剣などを持つのはわずか少数だ。そこに、1人の少女が現れる。手ぶら。12歳くらいの彼女は武器も持たずに歩く。その後ろで

「どいた、どいた〜」

 と叫ぶフェンは槍を構えている。どこか腰が引けているのは気のせいではない。2人は村の入口に偉そうに陣取る。人影はだんだんとはっきりしてくる。1人は黒髪の少年、もう1人は色素の薄い髪の毛の少女だ。2人は悠然とこちらへ歩いてくる。

「あ、あいつらは!?誰だ!?」

 フェンは誰もが浮かべる疑問を口にする。当然、答えられる者はいない。歩いてくる2人に向かってフェンは我慢出来ずに突進した。

「うおおおおおぉぉぉぉ!!」

「おい、ラフィネ。殺すなよ?」

「もちろんですよ」

 歩いてくる2人は突進してくるフェンを見てそんな言葉を口にする。ふと、ラフィネが動く。右手に剣、左手で体を庇うようにし、フェンに回り込む。フェンはそれでもなお、突進する足を止めない。ラフィネが剣を振る。ちょうど斬撃が後頭部に当たる。もちろん峰打ちだ。峰打ちでなければ、後頭部からフェンは大変なことになっていた筈だ。優しいトンという音が響く。ラフィネが優しく攻撃したのに関わらず、フェンはその場から崩れ落ちる。ドサッ。しばらくの沈黙。ラフィネが剣を仕舞い、王覇に尋ねる。

「どうしますか?これ」

「そうだな。あそこに武器を持った奴らがいるから盾にして行こう」

 そんな会話が聞こえ、初めて村がうるさくなる。

「卑怯だぞー!」

「「そうだそうだ!」」

 村人の思い思いに叫ぶ言葉に王覇は苦笑する。

「冗談は置いといて 。なぜ、俺らを警戒する」

 いつの間にか、王覇達は村の入口まで歩いた来ていた。疑問を口にした王覇は不気味なオーラを醸し出す。気圧された村人たちは少し後ずさる。1人の少女を除いて。その少女を見て王覇は一瞬驚く。

(なんで、あいつがいるんだ?)

 少女は口を開く。

「あなたたち、敵?敵なら排除する」

 そんな少女の名前はアルネア。『ライトオブディレクション』では、激レア激強キャラクターだ。青い髪に赤い瞳。職業は魔道士。初期から上級職である。数少ない魔法を得意とする職業を持つキャラクターだ。特に、アルネアは魔法力が高く、状態スキルとして魔法攻撃範囲増加がある。「雑魚は彼女アルネアに」そんな言葉が生まれたくらいだ。彼女を欲したプレイヤーはほとんどとも言える。ふと、ラフィネが持っている少年を見る。

 フェン。彼は海賊上がりである。いわゆる、ノーマル。アルネアほどの説明文は書けない。こんなところに騎士(予定である)が2人。王覇にとってこの上ない話だった。王覇は内心でほくそ笑みながらも真剣な顔で言う。

「安心してくれ、アルネア。俺はこの国の王をしている」

 名前を呼ばれたアルネアは少し警戒心を強める。

「な、なぜ私の名前を知ってる。それに王って....」

 王覇は笑った。

「なぜか?知ってるからだ。もう一度言う。俺はこの国の王の1人だ」

 王覇の声にどよめきが起こる。アルネアは顔をこわばらせて言った。

「名前は置いといて、王だと?どうして王様がこんな所へノコノコと....」

「この村が心配だからだ」

 そこでさらなるどよめきが起こる。

「心配!?心配なんか王様にされたくないぞ!!」

 1人の野次が感染し、それぞれに他の村人も言い出す。次第に、1人が石を投げる。ポコン。だが、それは素早く動いたラフィネによってフェンに当たる。

「卑怯だぞ!」

「そうだそうだ!」

 誰かの言葉に皆が反応し、村人たちそれぞれが文句を言ってくる。全く尊敬されてない。そんな結論に至る王覇。ラフィネが心配そうに王覇を見る。

「やめて!」

 ふと、声が響き渡る。次第に村人たちは静かになる。シーンとしたところで王覇が感心したように言った。

「ほう」

 声を発した人物はアルネアだった。アルネアは村びとたちに怪訝な視線を向ける。

「私達の使命は何?」

 その言葉はすぐに帰ってきた。

「家宝を守ること」

「そう。私達全員がここにいたら、いつの間にか魔物に侵入されちゃうよ?」

「....もっともだ」

 村びとの1人が答えた。

「でも、そいつらも敵だ!」

 さらに1人が答えた。アルネアはこくりと頷く。

「そう。でも、こいつらは私に任せて。みんなはいつも通り、警戒と仕事をして」

 村人たちは納得してアルネアの言う通りに元の場所へと戻る。アルネアはそれを見届けて王覇たちの方へ、ばっと向き直った。

「別に、あなたたちを助けたんじゃない」

 王覇が肩をすくめて答える。

「ああ」

 そして、ラフィネにアルネアは向き直り、フェンを指さす。

「それから、フェンを返して。後で私が女将に殴られる」

 よくわからないが、女将という人にアルネアは頭が上がらないらしい。王覇がラフィネを見ると、ラフィネは了解したようにフェンを返した。王覇はそこで、アルネアに聞いた。

「お前の村が守る家宝ってなんだ?」

 瞬間にアルネアの警戒心が上がる。王覇に向かって手を伸ばし、上へと挙げる。すかさず、王覇は悟る。

(これは....)

 瞬間にラフィネの腕を掴み後ろへと下がる。ドカン!凄まじい音が鳴り、先程まで王覇とラフィネがいたところに雷が落ちる。そして、何も無い、地面がいきなり燃える。『雷炎』というスキルだ。さすがは魔道士。王覇は少し息を呑む。アルネアは何もなかったのように、さっきと同じ雰囲気をまとい、立っていた。

「あれ、避けるの?」

 小さく口が動き、アルネアが呟いたが、王覇には聞こえない。

「キングさん?大丈夫ですか?」

 ラフィネは王覇に抱えられたまま聞く。王覇は笑って答えた。

「もちろんだ」

 もちろん笑いは作り笑いだ。王覇はアルネアという少女を熟知していた。もちろん『ライトオブディレクション』の中で、使っていたキャラクターの1人だからだ。彼女は癖で、スキルを使う時に一旦狙う方向に手を伸ばし、手を挙げてから発動する。それを知っていたからこそ避けれた王覇だった。危なかったという内心はあくまでも見せない。ふと、ラフィネは気づく。

「えっ、きゃあ」

 王覇に抱きかかえられていたことに。顔を真っ赤にして、王覇を見る。その顔はとてもあどけなく、可愛らしい少女という顔だ。

「あ、あの....キングさん....離してください」

 王覇はその顔にドキッとしたが、自分が無意識にしていたことにぎょっとする。

「お、おお。悪い」

 パッと離す王覇にラフィネは少し残念そうに下を見る。無論、自分で言ったことなのだが。王覇の腕の感触を思い出し、ラフィネは赤面する。

(やだ、私恥ずかしいことを....)

 王覇はふと、アルネアを見た。彼女がまたスキルを使うと思ったからだ。だが、どうやら使う気はないらしい。アルネアはこちらに歩いてきた。

「あなたに興味持った」

「は?」

 王覇はぽかんとするしかなかった。


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