17ゲーム目
遅くなりました!
3人は再びステータスを見るためにステータス室へと移動した。
「さて、レベル上げの成果も見たい。誰から見るんだ?」
王覇が2人を見ながら言った。
「まあ、キングのステータスを先に見ると、俺たちがしょぼく見えるだろうし。よし、俺にするか」
「ちょっと待ってください、アリスさん。ずるくないですか?」
提案するアリスにクノイチが異議を唱える。
「ずるくないだろ。名前のあいうえお順だ」
「それじゃ、私は最後じゃないですか!」
クノイチは意外にも順番を気にしている。王覇は疑問に思ったので聞いてみることにした。
「なあ、クノイチ。なんでそんなに順番にこだわるんだ?」
「それは....」
困ったように目を逸らすクノイチ。王覇とアリスよりも年上なはずが、同世代でもおかしくないような様子である。いつも丁寧な物腰のクノイチが、だ。
「........ませんから」
「「は?」」
「だって、私そんなにステータス良くなってませんから!」
クノイチは叫ぶように言った。あまりにも叫んだのか息が上がっている。クノイチの目の前の2人はきょとんとしていた。
「いや、クノイチ。たかが、レベル5だぞ?」
王覇が待ったをかける。
「ですが、お二人共相当....」
「「まさか」」
「....え?かなり戦いの動きが洗練されていて」
それは、クノイチのほうだ。2人のうちのどちらかが思ったが言わなかった。
「まあまあ、ジャンケンにしようぜ?」
王覇が案を出す。
「....それならいいです」
「俺もオッケーだ」
そこでジャンケンをして、ステータスを勝った順に見ることにした。
『クノイチ
職業 忍び見習い
状態異常なし
Lv. 5
装備 鉄のクナイ、木の小刀
攻撃 28(+7)
防御 10
器用さ 45
魔法力 21
魔法防御9
HP 32/32
MP 29/29
運 25
騎士 0
スキル 隠密
忍び足
暗器
一点攻撃
資格 統べる者 』
ステータスは本人が言うよりも上がっていると王覇は思った。
「別に、いいじゃねえか」
「そうだぞ。クノイチ!そうだ、この『暗器』と『一点攻撃』ってなんだ?」
アリスが興味津々で聞いてくる。
「....えーと、『暗器』はステータススキルです。技名そのままの意味で、装備している暗器、クナイで攻撃する時だけ、攻撃力が10くらいアップします。『一点攻撃』は発動スキルで、スキルを使うと敵の急所を攻撃するようです。いわゆる暗殺技ですね。ちなみにこれらは上級職の暗殺者ではさらにスキルアップして戻ってきます。『ライトオブディレクション』ではそうでしたので」
クノイチは淡々と答えた。へえ、と納得しながら聞く2人。クノイチは冷めた目をした。
「....お二人共、暗殺者くらい騎士にいたはずですが?」
「いや、忘れてたな」
王覇はさらりと答えた。悪びれもなく清々しい返答にクノイチは怒ることも出来なかった。
「まあまあ、いいじゃないか!それより今度は俺の番だぞ!」
アリスが宥めるように言い、ステータスを開いた。何か言おうとしていたクノイチも腕を組んでステータスを見た。
『ジュリア
職業 盗賊上がり
状態異常機動力低下
Lv. 5
装備 見習い兵士のクレイモア
攻撃 20(+5)
防御 16
器用さ 11
魔法力 8
魔法防御16
HP 45/45
MP 15/15
運 11
スキル 炎剣
奪取
疾風
資格 統べる者 』
「アリス、『奪取』と『疾風』ってなんだ?」
王覇はスキルを見て聞く。アリスは手を広げて言った。....そのポーズはいらないと思う。
「まあ、見たまんまだ。俺は盗賊上がりだろ?」
王覇は決してアリスの偉そうな態度に突っ込まずに頷いた。
「よは、盗賊スキルのようなものか。『奪取』は発動スキルだろ?敵のアイテムを奪うもんか。それから、『疾風』はステータススキルだな。早く動けるように、器用さが上がるという。」
違うか?というような目線を王覇がアリスに向ける。
「っ!勝手に言うなよ!俺もクノイチみたいにかっこよく説明したかったんだぞ!?」
アリスがクノイチを指さす。クノイチはかっこよく説明した覚えはないので、微動だにせずスルーしている。慣れたものだ。
「はあ?そんなん言われても。聞いてきたのはアリスだろ?俺はそれに答えただけで....」
「うっさい、そもそも知ってるなら聞くなよ!」
「な、流れだろ?」
「それは、違うな!キングは説明したかったんだ!だから、俺にあえて聞いて横から手柄をかっさらったんだな!?」
それは違う、と言おうとして気がついた。そう言えば王覇からスキルについて聞いたのだ。自分で聞いた時には覚えてなかったが、アリスが鼻を伸ばそうとしているのをへし折るように思い出したのだ。これは、アリスが怒るわけだ。そう思い、王覇は謝罪を口にする。
「....悪かったな。アリス」
正直に謝られたアリスはぎょっとする。
「ええ!?そこで謝るのか!?」
この流れだと王覇はアリスの手柄を横からかすめとったのを認めたということになる。王覇は顔を顰めた。
(タイミング....。間違えたか)
すぐに思い立ったら行動派の王覇は自分の性格に眉根を寄せている。まあ、それは割愛して。
「....喧嘩は終わりましたか?」
壁に寄りかかって見ていたクノイチが悪ガキを諭すような目で今までの一連を眺めていた。冷めた目。彼女の周囲だけ温度が下がっているように見える。
「....あ、ああ」
アリスは顔を青白くして答えた。くだらない喧嘩にクノイチが呆れているのがわかる。
「私達、これからは一蓮托生なんですよ?こんなことに無駄に時間を使ってどうするんですか?」
「「....」」
お説教、そういうのに違いないような口調を使い、クノイチは2人をたしなめる。時間が勿体ない。確かにそうなのだ。王覇たちにはキングオークを仕留めなければいけないという使命がある。さらに、やつはいつ畑を襲うかもわからない。レベル上げの提案はある意味、キングオークへ襲撃の猶予を与えたことにも等しい。まあ、そもそもレベル上げをしなければ倒せないのは確実であった。2人の反省している様子を見てクノイチはため息をついた。
「なら、さっさと動いてください。後はキングさんのステータスを確認して、さっさとキングオークを倒しましょう」
「「はい、すいませんでした」」
2人はテキパキと動く。
「じゃあ、俺のを見ましょう」
さっきと一見変わって敬語を使った王覇。そこでクノイチは思った。
(さっきのセリフ。キングさんとキングオークが少しダブってておかしかったかしら。)
いや、そうなのだろうか?クノイチ、彼女のツボはよくわからないものだ。クノイチは壁に再び寄りかかって2人の様子を見つめる。
(まだ、高校生。私が2人を守らなくては)
そんな決心をして壁から離れ、彼女は2人のそばへと行った。
ステータスは結構考えているのですが、技名がなかなか浮かびません。こういう風なのがいい、というのはイメージであるんですがね。
さて、クノイチさん、いや、クノイチ様が説教をという回になったと思います(笑)
意外なクノイチの1面をお見せすることが出来ました
今までの後書きからして私はクノイチ押し?とか思われた方もおられると思いますが、そういうわけではないんです。端に、クノイチはなかなか会話に入ってこないので、存在感がないような感じになってかわいそうになってしまうんです。私にかわいそうって思われてる時点でかわいそうなのでしょうか。
いや、何言ってるんでしょうか。
と、変わりまして、多分次回は9月14日午前0時となります。徐々にPVも増えてきて嬉しいです。これからもよろしくお願いします。