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14ゲーム目

 3人はレベル上げを終え、『ハジマリの森』へと来ていた。レベル1からレベル5となり、そろそろ挑戦してもいいかなと思ったからである。王覇はアリスとクノイチを見る。2人は無言で頷いた。たくさんのマスコットちゃんを殲滅した3人はいつの間にかお互いに目を合わせただけで合図や支持をできるようになった。

 クノイチがふと消える。馴染みの『隠密』と『忍び足』で気配を絶ったのだ。アリスは大剣を構えながら、王覇は腰にある剣の柄を握りながら進む。3人は警戒をしていた。なぜなら、この『ハジマリの森』は『ライトオブディレクション』での『ハジマリの森』とは違うからだ。キングオークが出現する。それだけで難易度が上昇する。ちなみに、よくレベル5で攻略をしようと思ったなと思った人もいるだろう。今回は下見目的である。森の中は所々で光が差し込み、心地よい空気が流れる。今の季節は春であるが、不思議なことに地面には秋色の落ち葉が絨毯のように敷かれている。それでいて白い幹に緑の葉が生い茂り、実に不思議な光景だ。それでいてやけに静かなところが恐ろしい。しばらく進むと前からなにかがやって来るのが見える。チェリーボーイだ。画面越しに見ていたチェリーボーイが今、目の前にいる。さくらんぼがやけに輝いており、思わず王覇とアリスはぎょっとしてしまった。

「お、おい、キング....。チェリーボーイはあんなだったか?」

「....画面越しだったからフィルターかかってたんじゃね?」

「....なるほど」

 チェリーボーイがふと目の前で曲がった。

「おい!キング、奴がどっか行くぞ」

 アリスはそんなチェリーボーイを追おうとする。ふと、王覇が腕をガシリと掴んだ。

「えっ、追わねえのか?」

 アリスは驚きつつも言った。王覇は真剣な顔で言った。

「何言ってんだ。チェリーボーイは女の所に行くんだろ?つまり、チェリーボーイが向かった先には女の魔物がいるかもしれねえぞ」

 危ないだろ、そんな言葉を言いながらチェリーボーイの後ろ姿を見送る。すると、

「きゃっ」

「「!?」」

 少し驚いたような、悲鳴が聞こえる。アリスは王覇が掴んでいる自分の腕を見た。

「....おい、離せ!そこにいる女子を助ける」

「........あ、ああ。悪い。早く行くぞ」

 慌てて王覇はアリスの腕を離し、走る。王覇もアリスも顔を赤くしていた。思わず、腕を掴んだ王覇は妹以外の女子に触れたことはない。アリスもまた男子に触れられるなんて初めてだった。意外な力強さにドキリとした。

(くそっ、何考えてるんだよ、俺。あいつは年下だぞ!?)

 そんなこんなでチェリーボーイの背後に追いつく。さっきの気持ちを紛らわすように存分にチェリーボーイを斬った。王覇とアリスはこんな時でもコンビネーション抜群だった。チェリーボーイが倒れ、消えた。そこには、さくらんぼの種と4ライトが現れる。それは自動で回収されるのであえて無視し、目の前の少女に向き....。

「!?クノイチか....」

「....か....ってなんですか。2人がピンクの雰囲気を作っている所にこいつがやってきました。....で」

 クノイチはわざと話を切る。王覇とアリスは思わず息を呑んだ。

「よくも....よくも私を見殺しにしようとしましたね....?」

 冷静な声で話しているようなクノイチは震えていた。怒りを抑えているらしい。そんな様子に王覇とアリスは顔を真っ青にした。殺す。無言の威圧が2人を襲う。さすがは忍び見習い。

「....魔物、かと思いまして、ま....まさかクノイチさんだとは」

 思わず敬語になって王覇は言った。顔は引きつっている。

「あ?」

 普段の顔から想像出来ないような表情が王覇に向けられた。やばい、殺られる。クノイチがどんどんとこちらに迫る。

「えっ、ちょっ。待て待て。悪かった!」

 手を前に出し、王覇は下がる。そんな王覇の抵抗は虚しく。『ハジマリの森』に悲鳴がこだました。アリスはうわあ....という目で王覇とクノイチを見ており、クノイチは王覇にビンタをしまくっていた。まるでマスコットちゃんのように。アリスの頭に『ライトオブディレクション』のイベントが思い浮かぶ。1番最近のイベント。ディフェンスのイベントが。マスコットちゃんによって行っていたチェリーボーイ。そこまで連想すれば、後は目の前の状況でわかる。道理で。クノイチはピクリとこちらを向いた。アリスは息を呑み込む。ゆらりゆらりとクノイチがやってくる。頼みの綱(肉壁)の王覇は既に気絶していた。頬には真っ赤な手の後が。

「アリスさん?何か変なことを考えていませんでした?」

 フフフフフ、そんな笑い声が聞こえる。弁解の余地はなさそうだ。アリスは覚悟した。『ハジマリの森』に第二の悲鳴が響き渡る。後に、それは国の全部に聞こえ、国民には『ハジマリの森』には幽霊がいるという噂がたったとかたたなかったとか。



途中で王覇の妹が出てきましたが、いつか閑話で妹の話を書こうと思っています。


次回は9月6日の午前0時に投稿します。

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