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ゲスの進むべき道

毎日書けたらいいな(書くとは言っていない)

格闘家の朝は早い。

いつも日の出よりも早く起床するのが彼の日課である。

トレーニングで汗をかくのが彼の日課なのだ。

そして日の出とともに家でご飯を食べる。

昼は村で農作業を手伝ったり子供と遊んだるする。

彼は趣味以外ではそんなたわいもない生活をしているのだった。

さて、そんな彼の日常であるがその日起きた彼はいつもと違う行動をとり始めた。

そう、今日は週一で彼が行っている壮大な趣味の日なのだ。

「今日は何をしようか……。勇者は前いじったし、かといって白魔導士は遠いな。だからと言って姉貴のところに行くのは気が引ける」

彼の、嫌がらせという趣味の……。


「今回の標的は魔王ちゃんにすることにしました」

格闘家、標的を定める。

「ぎゃははは! 仕込みも十分だぜ! ばれたら俺は死ぬかもしれないけどこの緊張感がたまらんぜ!」

彼は非常に悪い性格をしている。と言っても悪人というわけではないのだが……。

「まず、魔王ちゃんに会うのが先だな」

格闘家はドアをノックした。

「はい? 僕に何か用かな?」

「魔王ちゃん! 勇者からこんなものを預かったぜ」

「ん? 珍しい。今日は珍しく顔を見ていないし」

格闘家は手紙を魔王に手渡した。

その手紙は格闘家が勇者の字をコピーして書いた偽物である。

ムキムキだが彼は意外と器用なのだ。

『旅に出る。俺とお前の闘争は終わったのだ』

と、書かれた手紙を読んで魔王は眉をひそめた。

「君、また捏造かい?」

「おいおい、まるで俺がオオカミ少年じゃないか。ほんとだって!」

しかし、この捏造手紙などは今に始まったことではないので当然のごとく疑わる。

過去にこれに似たことを何度もやっては八つ裂きにされている格闘家は魔王にとってはあまり信用できない存在なのだ。

「嘘だと思うならあいつの家見てこいよ! もともと何も置いてないけどものけの殻だぜ!」

「……はいはい。僕寝るね?」

魔王、疑いのままドアを閉める。

「……」

(ぷげらっぱちょっぱりぃぃぃぃぃ! ぎゃははは! 残念その通りウソでしたぁ! だが疑われるのは想定通り抜かりなし! 勇者の家は大掃除と称して俺が片づけ、あいつは今隣町に旅行中! 今回は徐々に不安を煽るタイプなんですよ!)

格闘家、すごく悪い顔になる。


「……」

「魔王様! 副官参りました! ……って、どうしたんですか?」

「……何でもないよ。たぶんまたあのほら吹きがデタラメ言っているだけだから」

「そうですか。そういえば今日は珍しく勇者にあったんですよ!」

「……へぇ」

「なんか荷物いっぱい持っていましたけど、どこかに……、魔王様?」

副官が全部言う前に魔王はばっと立ち上がった。

「ど、どうしたんですか?」

「格闘家のところ行ってくる!」

「え? は、はい」

魔王、焦る。

その頃格闘家はというと邪悪な思考に身を任せていた。

(まだ決定打が足りない。こうなんか一発で不安を爆発させるようなそんなすんごいものが……)

公園で移動販売の荷車を引きながら彼はとてつもなく悪い顔をしていた。

公園で子供たちにお菓子を売っている人の思考とはとても思えないであろう。

「格闘家! 君の言っていたことは本当なのかい!?」

そんな彼の元に魔王が急いで走ってきた。

いつもおっとりとしている彼女では考えられない行動だった。

「どうしたんだ魔王ちゃん!?」

(来たか! ここだ! ここで何か……、キタコレ!)

格闘家、ひらめく。

「ふ、副官が、勇者がどっかいったって……」

「……もしかしたらあいつ、新たに闘争を求めて」

「え?」

「あいつに取って闘争は人生だ。あいつは戦いなしでは生きていけない。怖いんだ。自分を必要としているものは戦場しかないって思ってるから」

「……僕が、かまってあげなかったから……」

「いや、あいつはあいつの信念にしたがっただけだ。魔王ちゃんのせいじゃない」

(そう! 全部ぼくちゃんが仕組んだからな! それに嘘は言ってないしやっぱり俺ってばさえまくリング!)

「魔王様、ここに……ってどうしたんですか!?」

「……ぐすっ」

魔王、ぐずりだす。

(やべ)

格闘家はそれを見てやり過ぎたと感じた。

(泣く寸前で止めるつもりだったが、今回はやり過ぎたな。そろそろ種を明かすか……)

格闘家は何も泣かせたいとかそう言った目的ではなく、純粋に悪さをして楽しんでいるだけなので節度をわきまえたゲスであった。

(あくまでも相手が困るまで限界。それ以上は俺の美学に反するね)

「何をしているお前ら」

勇者、現る。

「……」

(もしかして詰んだ?)

「え!? 勇者! 君、新たな闘争を求めて旅に出たんじゃ!?」

「え? 誰だそんなこと言ったのは……、おい、何逃げようとしてやがるたぶん主犯格」

「……ギクッ」

格闘家、逃走に失敗する。

「……そか、嘘なんだね? 僕に、嘘ついたんだね?」

魔王、魔王らしくオーラを放つ。

「……ひひ、ぷげらっぱちょっぱりぃぃぃ! そうですまたウソでしたぁ! ぎゃはは可愛かったぜ不安におびえるその顔わよぉ! 俺ミンチ決定!」

格闘家、開き直る。

「……覚悟はできてるようだね」

(今回は俺死ぬかもしれないな。でも、悔いなし)

最後までぶれないゲスの心、それが格闘家なのだ。


格闘家の家。

「お前さんまたいたずらやって来たのかい!」

「ハッハッハッ! 俺は懲りないぞ! 次はもっとすごいことを考えてやるぜ!」

「そいつはいいが次の収穫までには体を直せよ」

全身包帯まみれの格闘家をたくさんの人がお見舞いに来ていた。

そのお見舞いを代表して長老が果物を格闘家の枕元に置いた。

「だいじょぶだいじょぶ! これくらいならすぐだ! 来週までには治してやるぜ!」

「ハッハッハッ! そいつは頼もしい!」

格闘家は節度をわきまえたゲスである。

そして、なんだかんだ言っても彼は村の人に愛されているのであった。

ちなみに魔王はしばらくの間、勇者を無理やりお泊りさせてゲームに明け暮れた。


格闘家は個人的に気に入ってるキャラです。

「ぷげらっぱちょっぱり」は彼の笑い声です。

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