ライバル
この作品は特に何かを考えて書いてるわけではないので熱い展開など、そのような展開はありません。
勇者にとっての最大のライバルとは魔王である。
しかし、それが戦いにおいてのものであるかは分からない。
「魔王、今日こそ決着をつけよう。俺たちの闘争のな」
「ごめん、私はこれからパスタ食べるから」
「くっくっく、魔王ともあろうものが怖気づいたか?」
「ごめんね。パスタ伸びちゃうし」
そう、彼彼女の関係こそがそんな感じであった。
「……」
勇者沈黙。
「我々の闘争は、鮮血を浴び、狂気の感涙をただただ流す我らの戦いは終わってしまったのか!? 私のこの一途なお前への気持ちは、どうなってしまうのだ!?」
勇者は閉められようとしているドアに足を入れて魔王の行動を制した。
勇者はとても必死であった。
全力で戦える相手である魔王がいなくなれば彼の沸き立つ闘争心は腐敗するだろう。
それはできない。
勇者にとってそれだけはできない。
ゆえに彼は必死であった。
「君、その言い方はいろいろ語弊を生むよ?」
「私の闘争に対する気持ちは愛だ。語弊ではない」
「僕は君に愛されているのかな?」
「ああそうだ。ゆえに、私はお前との闘争を望んでいるのだ!」
「あーはいはい、パスタ食べてからねー」
扉は閉ざされ、勇者は扉の前に膝をついた。
「なぜだ……、俺との闘争よりもパスタがいいのか!? そうなのか!? それでは俺は何のためにここにいるのだ!」
勇者は魔王の家のドアに縋り付いた。
傍から見ればただのストカーである。
「君もしつこいね」
「宣戦布告だ」
「すでに受けているよそれは」
「俺のほうがうまいパスタを作れる」
こうして、いつも話は脱線していく。
「ほう、僕のよりもおいしいと?」
「かつては意外に家庭的な勇者と呼ばれていた」
「初耳だ」
「お前と戦う前は板前四天王と戦っていた。……料理で」
「リアルファイトしてるのかと思った」
「それでは魔王、闘争を始めようか」
「いやだ」
「なぜだ!?」
「今食べたばかりでお腹いっぱいで」
「そ、それではデザートを作ろう! そうしよう! 女の子はデザートは別腹っていうし」
「ごめんね。ご飯食べたら眠くなっちゃった。悪いけど帰って」
魔王、勇者を軽くあしらう。
「……そ、それなら起きたら俺との闘争を!」
勇者、あきらめない。
「おやすみなさーい」
「……俺を、一人にするなよ」
ボソッと寝っ転んだ魔王に呟いた。
「お前との闘争がなければ、俺はただの一人だ。集団から外れたあぶれ者なんだ」
「……君はウサギみたいにさみしがり屋だね」
「……違う。私はただお前との闘争をしたいだけだ」
「おいで。一緒に寝ようよ。そして起きたら戦おう。ゲームだけどね」
魔王がそういうと勇者は目に見えて元気になった。
尻尾があれば千切れんばかりに振っているだろう。
「……ふふ、たとえゲームであろうと俺は負けん。楽しみだ。とても楽しみだ。久方ぶりの闘争、とてもとても楽しみだ」
「寝ろよ」
そしてその日の夜、二人はひたすらゲームに明け暮れたとさ。
ちなみに勇者は負けまくったが終始笑顔であった。
尻尾があったら千切れんばかりに振っている。
ぼちぼち書けたらいいなと思います。




