空腹とご飯と確認と
前回から大分経ってた……
エタらないように頑張らないと……
目が覚めると目の前にレックス君の顔があった。
カッコイイ顔で涎を垂らしてる。
こういうのって、普通は女の子の顔が目の前にあるモノだと思ってたよ。
とりあえず……目覚めのキッスいっとく?
そんなことを考えた瞬間、レックス君が飛び起きた。
「ッ!?な、なんだ?スゲェ寒気がしたんだが……」
「おはようレックス君」
「え?あ……お、おぉ、おはよう」
チラホラと皆起き始めて来たので、朝食の準備をする。
まあ、あのロボに侵略された町で補給するつもりだったからロクな物が無いんだけど。
とりあえず、水に濃い味の干し肉を入れて火にかけて沸かす。
インベントリに突っ込んである少し苦めの草を入れ、スープの完成。
草は食べて毒の有無を確認済みである。
後は硬い黒パンである。
「いっただっきま~す♪」
「きゅきゅっきゅい~♪」
《喰らえ》
「ミートはホントに美味そうに食うよな~」
「実際美味いからいいんじゃないか?てか、あの素材で何故ここまでの味が……」
「美味」
そんなこんなで朝食を終えて、これからどうするか話し合う。
あ、僕は本能に従って食べられそうな草の回収である。
むずかしいはなしはわからないのです。
聞こえてきた会話からすると、このメンバーの中で一番隠密が上手い職業レンジャーの人が偵察に行ってみて、それからもっと詳しく考えるらしい。
そして待つこと数時間。
少し小腹が空いてきた辺りで、偵察に行ったレンジャーさんが焦ったように走ってきた。
「あそこ!あれ!やば!ない!」
「ど、どうしたんだお前?ちょっと落ち着けよ」
「だって、なくて、無理で、おかしい!」
「落ち着けって言ってんだろうがぁ!!」
「グフッ!?」
マッチョさんが落ち着かないレンジャーさんを殴って沈めた。
ザクとは違うのだろうか?
「す、すまん……興奮してた」
「それで、何があったんだ?」
レンジャーさんはその質問に対し、一呼吸置いて言った。
「ガーディアン共が、一体もいなかった」
◆◆◆
いつでも逃げられる様に警戒しつつ、町に戻ってみた。
町の入り口付近でしばらく待ってみるが、ガーディアンが出てくる気配が無い。
このメンバーの中で一番実力があるフェルさんとマッチョさんが、お互いに視線で合図し町の中へ入っていく。
それを見ていた僕達は、周囲を警戒しつつ二人の方を見続ける。
数分したとき、二人が戻ってきた。
「ガーディアンの影も形もねぇ」
「……」
マッチョさんは困惑顔で言い、フェルさんは無言で何か考えている。
全員が顔を見合わせて、どうすればいいのか迷っているようだ。
「フェル?何か思い当たるのか?」
レックス君の質問に、全員がフェルさんを見る。
「そうだな……この中で遺跡関係に詳しいのはアンタだ。何かわかったなら教えてくれ」
「目的の物を見つけて帰った、といったところだと思うが……」
「あ~やっぱそれしかないか?しっかり探しちゃいないが、ガーディアンの残骸が落ちてるわけでもないから、ドラゴンが通ったって訳でもなさそうだ」
「ん~とりあえず原因不明ってことだけど、さっさとここを通り過ぎた方が良いってことだよな?」
「坊主の言うとおりだ。もしかしたらアイツ等が戻ってくるかもしれない。進むぞ!馬車は瓦礫で上手く進めないだろうから、町の周辺を回って行く!」
『あいよ!』
全員一緒に町を回るように移動し始める。
僕も着いて行こうとして、なんとなく町を見た。
《喰らえ》
『声』が聴こえた瞬間、視界にノイズが走る。
瞬間、もう一人の自分が見えた。
黒いシルエットだが、それは自分だと分かった。
全てが黒く染まった世界で、ナニカを美味しそうに食べていた。
そして、一瞬だったがその朱い目と狂ったように嗤った顔を見て、僕は―――
「きゅい!!」
「ッ!?」
グリンの鳴き声で視界が正常に戻る。
「ミート?大丈夫か?」
「……うん、大丈夫だよ」
「ならいいんだけど……なんかあったら言えよ?」
「うん、ありがとう」
少し離れたところで立ち止まったレックス君にそう言って、小走りに隣に立つ。
横目で町を見て、何時も通りに振る舞う。
一瞬見えた、あの狂った光景。
そこで楽しそうに食事をしていた自分を見て、僕は思った―――
「―――羨ましい」
「ん?なんか言ったか?」
「ふふ、何も言ってないよ……そう、何もね」
「そっか?俺の空耳か?」
首を傾げるレックス君をニコニコしながら見つめる。
いつか僕も、あの位楽しく食事できるようになるかな?
◆◆◆
「よっしゃー!目的の町に着いたぞぉぉぉ!!!」
マッチョさんの叫びが商隊に響く。
その叫びの通り、今回の依頼の目的地であるリジェンの町が見える。
どこぞの進む大きい人の壁の大きな都市みたいな感じの町である。
壁は50じゃなくて30ぐらいだけど。
それで、本来なら町に入るのに審査が必要だけど、今回はあの町のことを報告しなければいけないので、順番待ちを無視して門へ進む。
皆が門番さんと話しているのを眺めつつ、町から漂う良い匂いについて考える。
「この匂い……塩胡椒とハーブを練り込んだステーキかな?レモンと初めて嗅ぐ匂いも混ざってる……食べたい」
「ミート、涎拭けよ」
「おっと失礼」
何時の間にか垂れてた涎を拭いて、待っていること数分。
お腹が空いてソワソワしてきた頃、やっと戻ってきた皆さん。
フェルさんやマッチョさんが戻ってきて、商人さん達はそのまま仕事しに行くらしく、別れてきたようだ。
「依頼完了だ。ふむ……まずは飯だな」
「お?それなら一緒に、と言いたいところだが、俺らは行くところがあるんでな!」
「む、そうか。今回は一緒に依頼を受けられてよかった」
「おう!これからも頑張れよ!」
マッチョさん一行が去っていく。
その中で、何故かファミナさんだけは残る。
「ファミナさんは行かないんですか?」
「……私は今回限りのパーティーだった」
「そうなんですか?」
「そう」
「んじゃ、一緒に飯でも食うか?」
「食べる」
というわけで、ファミナさんが仲間に加わった。
そして食事である。
「相変わらず良く食べるな」
「いや、食い過ぎだからな?今回の報酬全部使ってんぞ」
「大食い」
「んぐ?」
三人の言葉に首を傾げつつ、メニュー一括注文で作られた料理を運ばれる毎に食べていく。
どれもこれも美味しい。
あ、そう言えばステータス確認してないや。
ちょっと見とこ。
★★★
名前・遠山 深都
職業・未定
LV・188
筋力・1903
耐久・8068
魔力・100773/100773
闘気・510609/510609
速力・20001
幸運・1200
満腹:100/100
所持スキル一覧
【魔力操作】70/100
【闘気操作】62/100
【魔力具現化】33/1000
【闘気武器化】147/1000
【運命の種子】MASTER
【悪食】MASTER
【死食】MASTER
【大喰】MASTER
【物喰】MASTER
鉱石などの物質を食べることで闘気を上昇させる。
食べた物質によって上昇率変化。
【暴食】MASTER
詳細不明
【■■■■】1/10
詳細不明
所持称号一覧
【???の主】
【喰らうモノ】
【異世界到達者】
【臨界突破者】
魔力と闘気のどちらかが100000を超えた者。
【限界突破者】
魔力と闘気以外のステータスが一つでも10000を超えている者。
★★★
ステータスが凄いことになってる……まあいいや。
ステータスの異常を見なかったことにし、汚らしく見えない様に食べまくっていると近くの席から話し声が聞こえてきた。
「知ってるか?近くの山があるだろ?あそこにドラゴンが来てるらしいぜ?」
「ホントか?そんな話聞いてないけどな……」
「此処の領主がそのドラゴンの子供を捕まえてるって噂もある」
「それを知ってるってヤバくね?」
「……こ、ここだけの話にしてくれ……余所から来た騎士様が言ってたのを聞いただけなんだ」
「わかったわかった。てか、俺も聞きたくなかった」
……ドラゴン。
「ミートの涎が凄いことになってんぞ」
「まるで滝だな」
「ん……ここからここまで追加で」
「ひ~ん!もう勘弁してください~!」
◆◆◆
食事を終えて、旅に必要そうな物の補充で店を回っていると、フェルさんが呟いた。
「レックス、あの町にいたガーディアンだが……」
「んあ?いなくなったんだしいいんじゃね?」
「あぁ、それは良いんだが……少し気になることがあってな。明日にでも遺跡の方に行くぞ」
「えぇ!?まともに戦って勝てない様なのがウジャウジャしてんのに!?」
「今回は別パーティーがいないからな、スキルを使って良い」
「……マジで行くのか?」
「うむ」
「はぁ……了解」
そう言う事らしい。
フェミナさんと顔を見合わせ、頷き合う。
フェルさんに付いて行くと言おうとしたら、先に言われる。
「ミートは待機だ。スキルを使っての探索なのでフェミナも残ってくれ。息の合わない者が一緒だとミスする可能性があるからな。私とレックスならいざという時、どうとでも対処できるからな」
ガーン!!
遺跡探索、凄く楽しそうなのに……
でも、トラップに引っ掛からない自信が無いからいっか。
そのうち行ければいいや。
フェミナさんも納得の理由なのか、特に何も言わずに頷く。
「もう必要な物は買ったからな、宿に戻って明日の為に休むか」
「うい~」
「ん」
「は~い」
「きゅ!」
《喰らえ》
皆で返事したらフェルさんが苦笑いしている。
保護者気分なのだと思う。
まだ二十代だから、そんな自分に違和感があるのかな?
とりあえず、宿を探そうかな。
この時、近くで会話を聞いていた一人の通行人が通り過ぎると同時に口元だけ笑っていた。
◆◆◆
ミート達が『眠り亭』という宿に泊まり、町全体が静まり返った時間帯。
月明かりのみが周囲を照らす、そんな真夜中。
宿の近くの路地裏に複数の人影が集まる。
「遺跡について話してた奴等はここの宿で間違いないんだな?」
「あぁ、確認済みだ」
「調べられるわけにはいかねぇ。確実に殺すために宿ごと燃やすぞ」
「わかった。おい、やるぞ」
私語は無く、実に手慣れた動きで宿へ近づく者達。
そんな者達に、響くような声が聴こえた。
<今宵は、月が美しい>
『ッ!?』
声を聞いた彼等は資格を埋めあう様に周囲を油断無く見渡す。
<こんな月が出ていると、欲しい物がある>
「……上か」
一人が声の主を見つけたのか、屋根の上に乗る者を見る。
他の者達もつられて屋根の上を見る。
<フフフ、恐怖に絶望する、甘美なる血を……>
そこにいたのは、見ているだけで魂を吸い取られてしまいそうな怪しい雰囲気を放つ美女がいた。
<さぁ……シネ>
TO BE CONTINUED.
補足説明。
冒険者や傭兵は基本的にスキルを他人に見せません。
ステータスなんかは家族だろうと見せないのが原則です。
知っているからこそ狙われるってヤツですね。
あと、異世界組じゃなくてもステータスは見れます。
ステータスは見せようと思わないと、他人に見せれません。
ちなみに、異世界組が最初いたあの空間だから他人のステータスが見れた、と言う設定です。
自分の作品で、深く考える意味はないです。
ぶっちゃけ、伏線とか凄い苦手です。
許してくださいm(_ _)m