終わる世界と始まる世界
なんとなく作ってしまったの。
他の作品更新して暇になったら続き作成すると思うよ。
でも、続きが見たいって人がいたら、感想下さいな。
頑張って続き書いてみます。
一応、どんな話になるかっていうのは考えてあるんだけど、まだ書いてないの。
じゃあ、本編どうぞ♪
僕こと遠山深都は、生まれた時から『声』を聴き続けている。
その『声』は小さく、とても聴き取りづらい。
でも、僅かにわかる部分がある。
《喰らえ》
たったそれだけだが、どんな時でもずっとそう言い続けている。
だからだろうか、僕は良く物を食べる。
寝る時以外は何かしら食べている。
そんな僕が太るのは当然と言えば当然だ。
小中学校ではデブと言われる日々。
高校に入ってからはアニメやゲームにハマり、キモイデブオタとして有名になっていた。
家から近い近所の高校に通っていて、今は二年生だ。
二つ下の妹が一年生として同じ高校に通っている。
まあ、こんな僕に妹が懐いているわけも無く、出会うたびにこう言われる。
「キモイ……」
小学生の頃はまだ、仲の良いとまでは言えないかもしれないが、兄妹ではあった。
今では、兄妹であることを全否定されている。
両親は美男美女で、僕が拾われっ子であるという説が出回っているぐらいだ。
両親もどうしたらいいのかわからず、苦笑いするだけだ。
何度か死のうかと考えたことがあるぐらいだ。
でも、その度に『声』が頭の中に響く。
《喰らえ》
生まれた時からずっと変わらない『声』。
同じことしか言わないけど、それが僕を落ち着かせてくれた。
なんとなく励まされる。
今までそうやって生きてきた。
これからもそうやって生きていくと思ってた。
何をされてもヘラヘラ笑ってやり過ごして、誰も見てないところで落ち込んで、『声』に従って、生きていくんだと思っていた。
でも、世界は、神様は、運命は、僕にとって、残酷に出来ていた。
◆◆◆
《喰らえ》
何時もの『声』を聴いて目が覚める。
倒れていた身体を起こして周りを見渡すと、同じ制服を着た生徒達が倒れていた。
高校の全校生徒だ。
教師もいた。
後ろに気配を感じた。
振り向くと、ニッコリと笑う中性的で男か女か分からない子供が浮かんでいた。
その子供を見た瞬間、『声』今まで聴いたことも無いような歓喜と憤怒の感情を表した。
《喰い殺せ》
無駄だと分かっていても落ち着くように『声』に言うが、まったく収まる気配が無い。
『声』によって激しい頭痛が襲いかかってくる。
苦しんでる僕を見て、子供が楽しそうに笑う。
『へ~君、面白いね』
目の前の子供が、男であり、女であり、子供であり、大人であり、老人である声を発した。
何重にも重なって聞こえるその声に、僕は何か嫌なものを感じた。
『そろそろ他の人にも起きてもらおうかな』
子供が指を弾くと、見慣れた高校の校庭になった。
しかも、さっきまで意識無く倒れていた者達が立って起きていた。
生徒や教師達が騒ぎ始める。
全員の前に浮かんでいた子供が一回拍手をすると、全員が喋れなくなった。
困惑、恐怖、絶望。
全員が子供を無視してはいけない存在だと認識する。
『やあやあ、君たち全員異世界に行ってもらうよ。あぁ、拒否とかは無理だから。これは決定事項で強制だよ。安心してよ。ちゃんと戻ってこれる方法があるから。じゃあ、説明するね』
子供は楽しそうにニコニコ笑いながらこれからどうなるのか、どうすればいいのかを説明した。
剣と魔法の定番的なファンタジーな異世界に行くこと。
ゲームの様なスキルやステータスのある世界であること。
元の世界に帰る方法はちゃんと用意されているが、今は教えないとのこと。
こんなところだ。
『そうそう、この中に絶対的な強者がいる。誰か当てて見てよ。じゃあ、今から一時間、時間をあげる。全員で一つの集団として召喚されるも良し、複数の集団として別々の場所に召喚されるも良し、たった一人になって召喚されるのも自由だ。じゃあ、また一時間後に会おう』
子供はニコニコ笑いながら、一回拍手して消える。
子供が消えた途端、全員が喋れるようになった。
一年生達から悲鳴が響き、三年生達からは怒号が聞こえた。
二年生達は困惑していて、お互いに顔を見合わせている。
これからどうするのか、どうしたらいいのか、誰と一緒なら安心できるか、全員が同じ気持ちを持っていた。
僕もそんな気持ちだったが『声』を聞いた。
《喰らえ》
子供が消えた途端、今まで通りの調子に戻っていた。
『声』の御蔭でなんとなくこの先の展開が読めた。
唐突にクラスメイト達が僕を蹴り飛ばした。
予想以上の威力で蹴られ、無様に転がる。
それを見ていた生徒達全員嗤う。
つまり、僕は弾かれたのだ。
子供の言っていた集団に所属することを、拒否された。
僕はクラスメイト達を、見ていた者達を見る。
そのうちの一人に、妹がいた。
妹は不機嫌そうな表情で僕から視線を逸らしている。
どうやら、家族にすら見捨てられてようだ。
元の世界ですら嫌われ者だったから、別段何とも思えなかった。
まあこんなもんか、というのが感想だ。
校庭の端っこに移動し、騒いでいる皆を眺める。
どうやらステータスが開けたらしい。
そして、子供が言ってた絶対的な強者候補が6人ほど見つかったようだ。
僕もステータスとやらを開いてみる。
★★★
名前・遠山 深都
職業・未定
LV・1
筋力・5
耐久・8
魔力・0
闘気・0
速力・1
幸運・10
空腹:12/100
所持スキル一覧
【魔力操作】0/100
所有する魔力を完璧に操作することが可能。
【闘気操作】0/100
所有する闘気を完璧に操作することが可能。
【魔力具現化】0/1000
所有する魔力を使い、防具を創ることができる。
【闘気武器化】0/1000
所有する闘気を使い、武器を創ることができる。
【暴食】MASTER
ステータスに食欲ゲージ追加。
現在の状態と食欲度表示。
詳細不明。
★★★
周りの生徒達から聞こえてくるステータスを参考にすると、平均が30らしい。
自分のゴミっぷりが良くわかる。
持ってるスキルも宝の持ち腐れ。
他と違う空腹度は『声』が関係しているんだろう。
明らかにマイナスイメージしかない。
溜息を吐いてステータスを閉じる。
ボーっとしてると、僕みたいな奴にも普通に話しかけてくれる様な、片手で数えられるぐらい数少ない人が来た。
生徒会長の秋雨時雨である。
「遠山君、どうして一人でいるんだい?」
生徒会長は学校中の教師も生徒も男女共に大人気のクールな美人だ。
綺麗な黒髪の大和撫子、運動勉強性格良し。
漫画とかに出て来てもおかしくない完璧さを持っている。
そんな生徒会長が何で話しかけてくるのか、僕にはよくわかってない。
「一人が好きだからです」
「そうか……なら、私も一緒でいいかな?」
「それは……」
「冗談だ……遠山君、君は―――」
生徒会長が俺に手を伸ばして、触れる前に止める。
「生徒会長、貴女は僕一人ではなく他の生徒全員の前にいなきゃダメですよ」
「……わかってる。すまなかった」
生徒会長は踵を返して去っていく。
これでいい。
生徒会長は僕に好意を持ってるわけじゃない。
ただ、僕みたいな奴を見捨てられないだけだ。
優し過ぎるから、たった一人を見捨てられない。
そんな人だ。
そして、あの子供が消えてから一時間後、またあの子供が現れた。
『やあやあ諸君。組む相手は決まったかな?おやおや、一人以外全員一緒かい?君達は酷いな~まあいいや。それじゃあ、行ってらっしゃい。良い異世界生活を』
子供は左手を振りながら右手で指を弾く。
次の瞬間には僕以外の全員が消える。
子供が何時の間にか僕の隣に立っていた。
『声』が酷く響き、頭痛を我慢しながら子供の方を見ずに前を見続ける。
《喰い殺せ》
『あはは、面白くて可哀想な君にプレゼントをあげよう。他者にとっては便利なだけで、君にとってはとても重要なプレゼントだ』
小さな光が目の前に浮かび、僕の中へと吸い込まれていく。
『ゲームは好きかい?今のはインベントリ。無限に、状態を固定して保存できる便利なモノだ。盗まれたりすることも無い。便利だろ?君にとって重要な理由は、まだわからなくていい。でも、必ず役に立つ。じゃあ、そろそろ君にも行ってもらおうかな。またいつか会える日を楽しみにしてるよ』
子供が一回拍手し、全ての意識が持っていかれる。
『声』だけは何時も通り聴くことができた。
《喰らえ》