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SCENE9 タク その3



 店に入ってきたのは、一人の中年男。

 高級そうな三つ揃えのスーツを身にまとい、何だか人を見下しているかのような目つきで店内を眺め回している。日本人離れしたクドい顔の男だった。しかも脂性であるようだ。ちょっと見ただけで、その顔が李さんの作る中華料理よりも脂ぎっていることが分かる。


 男はしばらく店の中を見回した後、こちらを見た。そして真っ直ぐにおれたちのテーブルへと向かって歩いてくる。いや違う。おれたち、ではなくてイデに向かって来ているのだ。

「君が、イデだね?」

 男がテーブルに片手をついて、そうイデに話しかけてきた。イデは海鮮がゆを食べる手を止めずに男を見上げ、

「アンタ誰?」

 と聞き返す。どうやらイデもこの男には見覚えがないらしい。

「聞いているのはボクだよ。君がイデなんだろう? セージのマネージャーをしている」

「まあ、そうだけど。それが何?」

 イデはあからさまに胡散臭いものを見る目つきで男を見ている。男は確かに胡散臭い。「胡散臭い奴、日本代表」と言っても、誰も文句を言わないだろう、というくらいに。

「君にちょっとした用事があるんだ。ボクと一緒に来てはくれないかい?」

「用事があるなら、ここで言えば?」

「ここじゃあ、ちょっと……」

「何だよ? 人前じゃあ言えないような用事なワケ?」

「ウルサイな! グダグダ言わずにオマエはボクと一緒に来ればいいんだっ!」

 男が突然キレた。だがこんな言い方をされて、黙っていられるようなイデではない。

「何で見ず知らずのオメーなんかと一緒に行かなきゃならねーんだ! あァ!」

 言われた男は舌打ちをし、店の外へ向かって指を鳴らす。すると、それを合図に店の中に、明らかに堅気ではない方々がズラズラと入ってきた。

「あ!」

 おれは無意識のうちに、そう声をあげていた。男の合図で店に入ってきたチンピラたちに見覚えがあったからだ。

「こいつら、さっきセージにのされてた奴らだよ」

 おれが言うと、イデはますます不機嫌になっていく。

「ウチを土足で踏み荒らしてくれちゃった奴らか」

 その通り。でも何でこいつらが……?

「悪いケド、後をつけさせてもらったヨ」

 脂ぎった男が、おれの考えを読んだかのように言った。

「出来ればコトは穏便に進めたかったケド、そう反抗的な態度を取られてしまっては仕方がないネ」

 ザザザッとチンピラどもが、おれとイデが座るテーブルを取り囲む。そのうち二人がイデの両側に立った。そしてそれぞれイデの腕を持ったかと思うと、イデを引っ張り上げるように無理矢理立たせた。

「君には、セージと交渉するための材料になってもらうよ」

 脂ぎった男は、満足そうに笑う。イデは顔を下に向けていて、その表情を量ることが出来ない。

「材料?」

「そう、相棒の君がこちらの手にあれば、セージといえどもボクの言うことを聞かずにはおれまい」

「つまり、オレは人質ってワケだ」

「まあ、言い方は悪いが、そうなるネ」

 イデの肩が震えた。

 怯えているのか?

 おれはそう思ったが、すぐにその考えを打ち消した。イデはこんなことぐらいで怯えるタマじゃない。

 イデの体がますます震える。口元が、わずかに覗いた。

 笑って、いる?

 そうだ、イデは笑っている。その喉から、おさえた笑い声が漏れてくる。

「なっさけねぇなぁ」

「何?」

 脂ぎった男がいぶかしげな顔をした。イデが笑っていることに、今頃気づいたようだ。

「正面きって戦ったら勝てねぇからって人質か? 考えることが貧弱なんだよ」

「何だと……」

「だいたい、このオレを人質にしようってトコロからして間違ってるよな。オレが人質? ありえねえな!」

「キサマッ……」

 脂ぎった男が食ってかかろうとしたその時、

 イデが動いた。

 両腕を振って、腕をつかんでいた男たちを振り払う。そしてすぐさまイデの左側にいたチンピラの顔面に裏拳を叩き込んだかと思うと、すかさず身を沈めて右側のチンピラの鳩尾に肘打ちをお見舞いする。


 とっさの出来事に、店中の誰もが言葉を失った。

 ワンテンポ置いて、次に反応したのは残りのチンピラたち。「てめえ!」と叫びながらイデに向かって拳を突き出す。イデはそれをバックステップで避けると、背後のテーブルに手をついて、倒立の要領でテーブルの上にひらりと乗った。その拍子にテーブルの上にあった皿のいくつかが床に落ちて割れた。

「ちょっと、ちょっとー! 喧嘩なら外でやりなさいよー!」

 メイリンが叫ぶ。だが効果はまるでない。

 イデはテーブルの上から飛び上がり、体をひねりつつチンピラに蹴りを入れる。その蹴りをまともに食らったチンピラの一人は、ふっとんで別のテーブルを倒した。また派手に食器が割れる音がする。

 音もなく床に降り立ったイデは、弾むような足取りでおれの傍へとやって来た。おれはと言えば、まだ瞠目したまま動けないでいた。

「邪魔だからどいてろよ」

 イデがおれに言う。それから、ちょっとだけ口元を歪めて笑い、

「見てみな」

 とチンピラどもへと顎を振った。おれは言われるままにチンピラたちへと目をやった。

「一番左にいる奴はパンチ出すときに肘が上がる。だからタイミングがつかみやすい。

 次の奴は、利き腕に頼ってばかりいる。だから左側を狙えば簡単だ。

 次は、足の運びがおかしい。だから攻撃に体重が乗らないんだ。

 あとは……、もうちょっと見てみないと分かんねえけど、まあ、どっちにしろオレの相手じゃないな」

 おれはますます目を見張る。

 前にセージから聞いたことがある。イデは一目見れば相手の弱点を見極めることが出来ると。セージが勝ち続けていられる理由の一つが、このイデの眼力にあるのだと。おれは今まさに、そのイデの才能を見せ付けられているのだ。

 チンピラがまた仕掛けてきた。イデに「パンチを出すときに肘が上がる」と言われた奴だ。自然とそのチンピラの肘へと目がいく。するとイデが言うとおりに肘が上がった次の瞬間にパンチが飛んできた。イデは軽々とそれを避け、相手の懐へと入り込む。イデの拳が相手の顎をとらえた。またもやチンピラは豪快に吹っ飛び、テーブルが倒れ、食器が割れる。

 次のチンピラは「利き腕に頼ってばかりいる」奴だ。本当に右腕ばかり使ってくる。イデは右側、相手からすれば左側へと回り込むと、相手の後頭部をつかんで壁へと叩きつける。グシャッ、という嫌な音がした。しかしイデはそれだけでは済まさず、そのまま壁に顔を擦り付けるかのように動かした。壁に血でいびつな線が描かれる。

「ヒャハハハハ!」

 笑い声。イデの笑い声だ。イデは笑いながら戦っている。

 次は「足の運びがおかしい」奴。こいつは攻撃を仕掛けてくるときに、たたらを踏むかのような妙な動きをする。その妙な動きが隙になっているのだ。イデは構わず相手の顎を蹴り上げた。

「次は誰だぁ!」

 イデの様子がおかしい。笑っている。けたたましい笑い声をあげている。目は見開かれ、口をチェシャ猫のように吊り上げて。異様だ。こんなイデは見たことがない。


 そうだ見たことがない。おれは今までにイデがこんなふうに喧嘩をするところを見たことがないのだ。というより、イデは喧嘩をしないやつだと思っていた。だからこそ、強いセージの傍にいるのだと。セージの強さの恩恵にあやかっているのだと。

 それがどうだ。イデはこんなにも強い。

「な……」

 脂ぎった男が口をパクパクと動かしている。男もイデの戦いぶりに驚いているのだ。

「何で、こんな奴がマネージャーなんかやってるんだ……!」

 その通りだ。これだけの強さがあれば、十分に喧嘩屋としてやっていけるだろう。それがどうしてセージのマネージャーというポジションに甘んじているのか。

「もうやってられるか!」

 チンピラの中でまだ意識のある奴が、そういった声を上げて店から逃げ出していく。昏倒したチンピラをそのままに。残ったのは、あの脂ぎった男だけ。

「あわ……あわ……」

 何語だか分からない呻き声をこぼして、男は脂ぎった顔に、さらに脂汗をかいていた。イデがバキバキッと関節を鳴らしながら男へと近づいていく。

「嘘だ! こんなのは嘘だぁ!」

 男もまた脱兎のごとく店を飛び出していった。


 終わった……。

 おれは一息ついた。

「ちょっともう! 食器ほとんど割れちゃったじゃない! どーしてくれんのよイデ!」

 メイリンがそうイデに怒鳴りつけた。メイリンの言うとおり、店に出ていた食器はほとんどが床に落ちて原型をとどめていなかった。

 料理もあちこちに飛び散っているし、テーブルは倒れ放題だ。珍しく入っていた客も、いつの間にか逃げ出してしまっていた。

「ああもう、せっかく久しぶりに大入りだったのに……。きっちり弁償してもらいますからね、イデ!」

 イデは返事をしない。その態度にメイリンはますます激昂してがなりたてた。

「聞いてんの、イデ!」

 おれはイデへと視線を向ける。

「……イデ?」

 様子が変だ。さっき、チンピラどもとやり合っている時のイデも変だった。だが、今のイデはさっきとは違う意味で変だ。

「ハァッ……、ハァッ……」

 呼吸が荒い。服の胸の辺りをわしづかみにして、肩で息をしている。

「イデ? どうしたのよ。ごまかそうとしたって駄目なんだから!」

 メイリンがイデへと近づいて、その肩に手を置く、するとイデはガクリと膝をついた。

「イデくん?」

 ユキエも異常に気づいたのか、イデの元へと小走りに近づいて、膝をついてしまったイデと視線を合わせるかのようにしゃがみ込んだ。

「おい、イデ……!」

 おれもイデの正面に回りこんでしゃがんだ。イデはゼェゼェと必死に息をしようとしているが、上手くいっていないように見えた。呼吸困難を起こしているみたいだった。

 おれの脳裏に、セージの「医者代が……」と言った声がよみがえる。きっとメイリンは「イデに酒を飲ますな」と言ったときのセージの顔を思い出していることだろう。

 イデは否定していたけれど、もう間違いない。やっぱりイデは何らかの病気なんだ。この苦しみ方は尋常じゃあない。このまま死んでしまうんじゃないかっていうぐらいにイデは苦しんでいる。

「い、医者!」

 おれは裏返った声で叫んだ。

「メイリン、ゴマシオ先生呼んで来い」

 厨房から李さんが出てきて言った。李さんはこんなときでも冷静だ。

 イデの体が前方へと傾ぐ。おれはとっさに手を伸ばしてイデの体を受け止めた。

「イデ!」

 ゆすってみる。駄目だ、反応がない。意識が完全にぶっとんでいる。

 メイリンが近所の医者を呼びに走った。ユキエはイデの名を呼びながら半泣き状態だ。

 おれは……途方に暮れた。

 なんでこう、立て続けに色々なことが起きるんだ?

 イデ、頼むから死なないでくれよ……!




 それからおれと李さんとで、イデの体を店の奥にある休憩室に運び、そこのソファへと寝かせた。そして座布団を二つ折りにして枕代わりにしてやったり、濡れタオルで額の汗を拭ってやったりしていると、メイリンがゴマシオ先生の手を引っ張って戻ってきた。

 ゴマシオ先生はこの店の近くで開業している医者だ。専門は婦人科らしいが、近くに他の医者がいないため、風邪やら骨折やらギックリ腰まで何でも診てくれる。年齢は不明だが、五十は越しているだろう。色黒の顔に刻まれた皺が、それを教えてくれている。白髪混じりの五分刈り頭がゴマシオを想起させるため、近隣の人々から「ゴマシオ先生」の愛称で親しまれていた。


「何でェ、またコイツかよ」

 ゴマシオ先生は、横たわるイデを一目見るなり、そう言った。

「また?」

「おう、コイツはぶっ倒れる度に俺んとこに担ぎ込まれてくるからな、すっかり常連だ」

 常連になるほど、しょっちゅう倒れているのか。そんなこと、ちっとも知らなかった。おれは近所中で一番、イデたちとは付き合いがあると思っていたし、イデたちの部屋にも入り浸っていた。それなのに、何にも気づかなかった。

 イデは不遜で不適で無意味に偉そうで、怖いものなんか何もないんじゃないかと思っていた。だから、あんなに苦しそうだったイデや、こうして力なく横になっているイデが、まるで別人のように見えた。

「まァ、そんなに心配するこたぁねえよ」

 不安に襲われていたおれを見て、ゴマシオ先生はそう言って笑った。

「コイツのは『過換気症候群』って言って、よくある心身症の一種だ」

「過換気症候群?」

 ユキエが首をひねった。

「要するに、息のし過ぎで、返って苦しくなっちまったってことだ」

「なるほど」

 ユキエは珍しく真面目な顔で肯いていたが、きっと分かってないと思う。

「過換気症候群ってのは普通、不安とか悩みとかで神経すり減らしているような奴がなるもんなんだが……」

「嘘だろ!」

 おれは反射的にそう叫んでいた。だって、不安だの悩みだの、イデからは一番遠い言葉だろう。

「まあな、この小僧がそんなヤワな神経なわけねぇよな」

 ゴマシオ先生までそう言ってウンウンと首を縦に振っている。

「他にも極度の恐怖や興奮が発作を起こす場合もある。コイツの場合は興奮だな。ホラ、コンサートとかで熱狂しすぎて倒れる若い奴らがいるだろう? アレと同じようなもんだと思ってくれていい」

「興奮……?」

「そうだ。俺は実際に見たことねえが、コイツは喧嘩になると異常にテンション高くなるだろう? コイツにとっての異常な興奮状態ってのが、喧嘩をしている時なんだ。だからコイツにはセージのいないところでは喧嘩すんなって言ってんのに……」

 さっき、チンピラどもをなぎ倒しているときのイデ。確かに異常だった。アレが原因だったのか……。

「じゃあ、セージがイデに酒を飲ますなって言うのも……?」

 メイリンが口を挟んできた。

「ああ、酒は飲むより飲まないほうがいいだろうな。酒を飲めば、喧嘩っ早くなりもするし」

 ゴマシオ先生はイデの腕を取って脈を計ったりしていたが、すぐに膝をポンと打ち、

「もう発作もおさまってるみたいだし、大丈夫だ。過換気症候群ってのは心因性のもので、体の具合が悪いってわけじゃねえ。だからどんなに発作がひどくても、まず死ぬことはねえから安心しな」

 と言い残してすぐに帰って行った。

 メイリンをはじめとした面々も、店の片付けのために休憩室を出て行く。おれはイデの看病を仰せつかった。

 ゴマシオ先生の言うとおり、イデはそれからしばらくして目を覚ました。何の前触れもなく、いきなり上半身をむくりと起こしたりするもんだから、おれの方が発作を起こすんじゃないかってくらいに驚いた。

 イデは少しの間、ボーッとした眼差しで正面を見据えていたが、そのうち自分が失神したことを思い出したのだろう「ああクソ……」と呟いて頭をかきむしる。

「イ、イデ、大丈夫か……?」

「ああ、何でもねえから気にすんな」

 怖々と聞くおれに対して、いつものように言葉を返す。

「ゴマシオ先生は大丈夫って言ってたけど、本当に……」

「ゴッ、ゴマシオが来たのか?」

「う、うん」

 イデは舌打ちをし、さらに頭をかいた。

「聞いたのか? 発作のこと」

「うん、聞いた」

「……そうか、ややこしい事になりやがったな」

 ややこしい事? いったい、何のことだろうか。

 イデは頭をかく手を止め、おれを正面から見て言った。

「タク、お前、ゴマシオから聞いたこと全部忘れろ」

「はあっ?」

 突然、何を言い出すのか。イデの考えがまるで読めない。そんなことを言われたって、そう都合よく忘れることなんて出来ない。

「で、でもさ……」

「いいから忘れろ! 忘れろったら忘れろ!」

「わわわ、分かったよ……」

 イデが詰め寄ってくる。おれはその勢いに負けて、思わず肯いてしまった。

「よし、忘れたな。忘れたものとして話を進めるからな」

 寝ていたソファに座りなおしてイデは言う。

「さっきの話なんだけどよ……」

「さっきの話?」

 おれが聞き返すと、すかさずイデの睨みが飛んでくる。ああ、これがさっきまで発作で苦しんで失神してた人だとは思えない。

「さっきの話はさっきの話だ。あの脂男が乱入してくる前に話してたコトだよ」

 思い返してみる。そういえば、確かにあの脂ぎった男が李さんの店に乱入してくる直前、イデは何かを言いかけていた。

『なあ、タク。ちょっと考えたんだけどよ……』

 そうだ。イデはそう言いかけていた。

「思い出したか?」

「う、うん」

 おれが答えると、イデは視線を和らげ、ソファにもたれかかった。

「で、だな。今、お前の手元には一千万あるわけだよな」

「……そうだな」

「それを何とか五千万にしたい」

「うんうん」

「それで考えたんだけど、オレが賭け試合に出ればいいんじゃねえか?」

「は?」

 ぱかーん、とバカみたいに口を開けてしまった。だが、イデのいうことは突然すぎてついていけない。おれの反応はごくごく自然だ。……と思いたい。

「オレが賭け試合に出る。で、オレは喧嘩屋としては無名だから、オレに賭ける奴はそんなにいないだろ? だから率もいいはずだ。それでお前がオレに賭けて、オレが試合に勝つ。どうだ、これなら一気に五千万も夢じゃない」

 開いた口がふさがらない、とはこのことだ。だってそうだろう? 賭け試合っていうのは要するに喧嘩だ。その喧嘩が原因で、つい今しがたまで失神していたのは、どこのどいつだ。

「だってイデ、お前発作が……」

「それは忘れろって言ったじゃねえか」

「それはそうだけど……」

「何だよ何だよ、せっかく人が、すンばらしい計画を立ててやったって言うのによお」

 すンばらしいかどうかはともかく、確かにイデは強いし、賭け試合で勝つことだって出来るだろう。勝つことが出来たならば、目標額を一気に溜めることだって夢じゃない。幸い、と言うべきか元手となる金は一千万ある。

 でも……。

 おれは上目遣いにイデを見る。イデに喧嘩をやらせたら、また発作に襲われてしまうかもしれない。また失神してしまうかもしれない。それが分かっていて戦わせるっていうのも……。

 それに、さっきみたいに戦い終わった後に発作が来るならばともかく、試合の最中に発作が来てしまったらどうする? きっと、イデは対戦相手にボコボコにされてしまうだろう。おれの一千万もパァになってしまう。

「だーいじょうぶだって。要は発作が起きる前に倒しちまえばいいんだろ? 簡単簡単、楽勝楽勝。どうってことないね」

 おれの不安を感じ取ったのか、イデはそう言って胸を張る。

 そしておれは……、やっぱりイデに泣きついてしまうのだ。




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