はじめての風の月
さらに3ヶ月が経つと何とか体に若干ながら力が入るようになってきた。
最終兵器〈泣く子と地頭には勝てない〉の効果はすさまじく、父親も母親始めのころはミルクでもおしめでも泣いているのに困惑していたが、淋しいのだからと納得するとすぐに来てくれてあやしてくれるようになった。それどころか、首が座り出すとおんぶや抱っこしては家の中を連れて歩くようになった。
家の外は今だ1回も連れても出してはもらえない。
というか、父親も母親もこの3ヶ月間ほとんど外に出ることはなく過ごしている。時より鐘が鳴ると父親だけが急いで外に出ているが、他は何も仕事らしい仕事をしておらず、本を読んだり、俺をあやしたり、母親とイチャイチャしている・・・・
リア充ばく・・・・・
と、若干暗黒面に陥りそうになるのはもうすぐ魔法使いになりかけたひがみなのだろうか?別にいいよね?四六時中イチャイチャしてるんだもんいいよね?
と余りよろしくない感情を抱いていると急に母親に抱き抱えられた。どうやら外に連れ出してもらえるようだ。
この世界の言葉を覚え始めてまだ3ヶ月しかたっていないが、赤ちゃんの体おかげか?元に戻るために必死になって言葉を覚えたおかげかしれないが、なんとなく両親の言っていることがわかるようになってきている。無論、語彙がまだまだ貧弱なので大体しかわからないのだが、この調子ならもう3ヶ月もあれば日常会話位マスターできそうである。
しゃべるのには喉の力が入らないのでまだまだかかりそうだが・・・・
抱き抱えられ、家の外に出てると、心地よい風が吹いていた。
清々しい風の中家の周りを見てみると・・・
すごい田舎だった。なんというか、周りの家はどれもログハウスのような家でうちと隣にある家が大きめになっては言えるが、どの家も高原にあるようなコテージが少し大きくなったような感じであった。
そしてもうひとつ気になったのは土の壁である。高さが3メートルほどの土塁がどこまでも築かれている。
服装や家電製品がないところを見ると中世から産業革命前までの時代のような暮らしなのであろうか?この分だと、蒸気機関等を考えて売り物にすれば一儲けできそうである。
風の中を抱きかかえられ、家の裏手の方に連れて行かれると、木の壁に囲まれた場所についた。
木の壁の中からは女性の声が複数聞こえてくる。
母親は木の壁の中に入ると、服を脱ぎ、俺の服を脱がし始めた。
(どうやら、水浴びかお風呂のようだな。
そういえば今まで体洗ってもらってなかったからかなりうれしいな)
今までは、別ベットに寝かされて服を着たまま、体を洗う?魔法のようなものを掛けられてほぼ一瞬で体を綺麗にされていたようなのでかなり不満だったのだ。
あれはあれですごい便利だったからいいけど、日本人ならやっぱり風呂だよなあ。
服を脱がされ、湯浴衣のような物をすぐに着せられると衝立の裏に連れてかられた。
衝立の裏はパラダイスではなくヴァルハラでした。
そこにいる女性たちは、年齢こそ若い30歳以下の方がほとんど、一番多いのは20代の人でついで10代、50代以上の人などいなかった。
そして、なぜヴァルハラというと、筋肉がそれなりについたアマゾネスとは言いすぎだけれどもヴァルキリーのような方々ばかりだったからだ。
(うほぉ。母さんみたいな、アイドルみたいな人は少ないけど、みんなスタイルいいなぁ。
お腹の周りなんか無駄な贅肉ある人なんてほとんどいないなぁ。
むしろ、腹筋割れている人も結構いるな。
健康的で眼福です。)
とか考えていると、お姉さん方が、母さんの周りに集まってきました。どうやらお目当ては俺のようでみんな代わる代わる私を抱っこし始めました。
(みんな筋肉質だけど、胸は柔らかくて幸せだなぁ。)
そうこうしていると、母さんが俺を奪え返して、たらいに水を張り始めた。
そして、何か呪文のようなものを唱えると、光の文字が現れ、なにやら模様を描き出した。
すると、模様から湯気がを出しながら熱湯がたらいの中にたまっていた。ある程度、たまると 、腕をたらいに突っ込んで湯加減を見るとどうやらちょうどよいらしく、俺をたらいでお風呂に入れ始めた。
(ちょっとぬるいけど気持ちいいなぁー♪
周りはヴァルハラだし、気持ちいい風は吹いているし、マジ最高だー♪)
他のお姉さんたちは皆さん水浴びの方が多く、一部の方がお湯を母さんみたいに作って露天風呂にしていた。
気持ち良かったお風呂が終わりと衝立の所で湯浴衣を脱がされ体を拭いて貰っているとき、俺はそれに気付いしまった。
20年以上お世話になったあれが下半身についていないことに。
(ちょっ。マジで・・・・!!
何で下半身のバットとボールがないの??
俺・・・まさか女になってるーーー!!)
何かが頭の中で音をたてて崩れて壊れていくのを感じて俺は、いや、私は大声で泣いたのであった。
突然、泣き始めた私にびっくりしたお姉さま方が集まり始め私を
あやすのであった。