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大地短草

 お気に入りが件数がついに100件を超えました。


 これもひとえに皆々様のおかげです。

 この場をもちまして深くお礼申しあげます。


 ありがとうございます。(深く感謝)

 次の日、私は昨夜の着せ替え人形で寝不足で重い瞼をこすりながら居間に向った。


 昨夜私を着せ替え人形にした後も大いに盛り上がっていた母さんは疲れひとつ見せずに朝食を作っている。


 居間には父さんと叔父さんがすでにいて何やら話をしているようだ。内容は今回の村でのとれた物のだったらしく、この世界の固有のものが全く分からないから聞いていてもなるのでそばを離れることにする。



 ふと壁を見てみると、昨日父さんに吹っ飛ばされたコケシさんが昨日吹っ飛ばされたままの恰好でいる。


(まさか死んでいないよね)


 私は頭をよぎる不安な想像を払しょくすべくコケシさんに近づく。



 近づいてよくよく観察してみると、コケシさんは糸の切れた操り人形のように壁にもたれかかっているが、息はしている。どうやら生きてはいるようだ。


 私はさらにコケシさんの安否を確かめる為、小さな自分の指でコケシさん頬をつついてみる。元の自分のような皮膚の感触が返ってきたがコケシさんの様子は変わらない。


 もう少し強めに突くと「うんんー」とコケシさんが気が付いたようで唸るような声を上げ始めた。


 すると父さんがそれに気が付いたらしく、私に声をかける。


「ユー。そこにいるのは汚い害虫だから、襲われないようにこっちに来なさい」


 ちょっ。いくらなんでも、部下?だったかもしれない自分を慕ってくれる人に対してアレじゃないかなと思ったが、母さんが御飯ができたと呼んだのでコケシさんから離れていく。

 息もしていたし、もうすぐ気付くだろうと思いながら。




 しばらくすると、売り子さんや護衛の人も部屋から出てきた。

 護衛の人たちはしゃっきりしているけど、売り子さんたちはかなり眠そうだ。

 それもそのはず、母さんと一緒になって夜遅くまで私を着せ替え人形にしていたのだ。そんな彼女たちを見るなり叔父さんは、


「さっさと顔洗って食事の配膳の手伝いでもしろ」


 と一喝してしてた。ある意味いい気味だ。

 私は、体は女の子になってしまったけど、着せ替え人形になって楽しむほど女の子にはなっていない。知らない女の人に揉みくちゃにされて昨日は本当に恥ずかしかった。



 そんなこんなで始まった朝食は昨日の宴の話題で盛り上がりながら終わった。


 ちなみにコケシさんは、途中で目が覚めて朝食に参加してきた。昨日の事はお酒と父さんの一撃で忘れてしまったらしく、父さんは苦い顔押していたのだが当の本人は。


「いやー昨日は楽しい宴でしたねー。兄貴」


 といって父さんにまた慕っていた。



 食事が終わると、皆はそれぞれの仕事に戻るようだ。叔父さん達は昨日受けた注文の荷卸しをするらしくそうそうと出てってしまった。コケシさんたちも護衛の仕事に戻るらしい。


 私はというと昨日叔父さんからもらった服に着替えて、両親にに連れられて庭にやってきた。


 庭の様子は驚くべき光景になっていた。


 庭は昨日父さんが焼き払ってない場所と種を蒔いた場所と蒔いていない場所三つに綺麗に分かれていた。


 まずは焼き払ってない場所だここは昨日と同じく私の背丈より高い草が生い茂っている。


 次は、種を蒔いた場所だ。ここは昨日の今日だというのにもう草が生えている。大地短草はまるで芝生のように緑のカーペットになっている。


 最後は種をまかなかった所だ。種を蒔いたところでも草が生えていて驚いたのだが、ここはもっとすごい。たった一夜にて草はすでに私の胸のところ、つまり大人の膝丈以上のところまで生えている。


(流石異世界、一日でここまで生えるなんて驚きだぜ。この状態なら毎日草を刈らないと子供を外で遊ばせるなんて絶対無理だな)


 そんなことを考えると、父さんが声をかけてくる。


「ほーら。ユー。これからはお庭で遊べるぞー。父さんは叔父さんとお仕事があるから母さんと大人行くお留守番をしてるんだぞー」


 といってどこかに出かけて行ってしまった。

 

 私は母さんが見守る中、穏やかな陽気の庭で遊ぶことにした。


 本当はというと、偽装だけど。母さんの視線がなくなり次第、大地短草のを調べたいのが本音だった。何せ、元の世界に戻るための一番の近道になりえるかもしれないのだから。



 とはいうものの流石にこの精神年齢で子供がやる遊びはすごくダメージを負う。具体的には精神に。

 


 普通ならば。

 


 しかし、この世界に来て初めて外での自由行動なのだ。多少なりとも心躍っても仕方なかったと思う。


 私は初めて穿くスカートの(実際は昨日が初めてだが)違和感に耐えながら元気よく童心に帰りながら庭を走り回ろうとした。




 まだ上手く走れなくて。転げまわることになってしまったのは秘密にしておきたい。


 そんな私を母さんは微笑ましくしばらく眺めていたのだが、しばらくすると私が庭の外に出かけないように庭の入口に座り心地のよさそうな木製のクロッキングチェアをどこからか出してくると、それに座って本を読み始めた。


 私はそれに横目で見ながら確認すると、地面をしゃがみこんで大地短草を観察し始めることにする。



 大地短草。それは見れば見るほど元の世界の芝にそっくりだった。5センチくらいで緑色でツンととがっている。


 私は大地短草を一つちぎって匂いを嗅いでみる。

 青々とした草の匂いしかしなかった。


(昨日の叔父さんの口ぶりからすると食べれば魔力がするんだよね?)


 私の魔力は今日も朝食の後で母さんと魔法を使ったので減っていた。


 私は大地短草を口に入れて噛んだ。



 その瞬間だった。あふれ出る草の汁は口に青々とした匂いを広げ、思わず吐き出してしまいそうになる味が口いっぱいに襲った。


 例えてみるなら、生のドクダミと青汁にゴーヤのを混ぜて10倍くらいに濃縮したような感じである。

 すさまじく不味い。というかエグミと苦さで口の中がおかしくなりそうである。


 私はその不味さから吐き出しそうになるのを堪えながらやっとのことでそれを嚥下した。


 すると、胃のあたりから魔力が満ち溢れ自分の魔力が満タンになった。



 私は思わず水を求める。


「○×☆・・・みずみずみず・・・」


 手のひらを器にして水が溜まるように強く思いながら魔法を使う。

 すると、魔力が抜ける感覚がし手のひらに水が溜まり始めた。

 私のちいさな掌から水があるれると私はそれを勢いよく飲んだ。


(こ・・れ・・はすごく不味い・・・不味いというかすごくエグイ。いくら魔力が回復するとはいえこれはキツイ)


 とはいえ一応魔力は回復した。余りというか全然よろしくない味だけど色々な魔法を試し、魔力を鍛えるためにはこの大地短草を使って魔力を回復させるのは必要だろう。



 それと、とっさにだけど水を生み出す魔法もできた。

 半分無我夢中だったけど、成功してよかったよ。これで水ができなかったら。ガクガクブルブル。



 しかしこれは色々試してみる必要があるな。


 私は、もう一度大地短草をちぎり今度は汁が出ないように噛まないで勢いよく飲み込んだ。


 今度は噛まなかったので汁は全く出なかったので、ほとんど味はしなかったのだが胃の中にはいっても全く魔力が回復しない。

 もう一度ちぎって丸呑みしても全く回復しなかった。


(これは・・・まさかあのクソ不味い汁で回復しているのか?)


 私はそう推測して意を決し大地短草を噛みしめる。

 すると、口に広がるエグミと苦み本能的に胃が受け付けないように戻しにかかるのを堪えながら飲み込む。

 飲み込み胃のあたりに草が達すると先ほど同じように魔力が回復する。


 私は口直しのためにまた魔法で水を作り口を漱ぐようにして水を飲む。

 やはり、推測通りに大地短草の汁が魔力の回復の元になっているらしい。


 となると、先ほど丸呑みした大地短草はあとから効果を表すのであろうか。

 私はそれを実証するためそれ以上大地短草を食べずに久しぶりの外を楽しむのであった。




 決して、あの不味い大地短草が食べたくなかったんじゃナカッタンダカラ。


 

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