キャラバンと宴
というわけで、いつもの三倍くらい頑張ってみました。
いつもより読みにくいと感じられるなら分割しますのでよろしくお願いします。
それと誤字もおそらく増えてますのでなにとぞ(代官様)ご勘弁を
家に帰っても母さんはカタログを眺めていた。
さっきは、大地短草が気になってカタログのこと全然見てなかったな。異世界の商品なんだから、変わったものばかりなのだろうか?
母さんが眺めてるのは、限定商品用のカタログだ。ソファーの上でカタログを眺めている母さんのそばには汎用商品用のカタログがある。
私は汎用商品カタログを見るべく母さんのそばによっていくと。
「あら、ユーリちゃんもカタログが気になるの?だったら母さんと一緒に見ましょ」
といって、母さんにつかまってしまった。私は、母さんの膝の上に乗せられて母さんと一緒に眺めることになった。
カタログは2~3三センチくらいの厚さがある。装丁どころか穴をあけて紐で閉じているだけの簡単な作りになっている。流石に紙の質はそんなに良くさなそうだ。
中身はといえば、驚いたことに裏移りしてはいるが片面印刷カラー刷りであった。しかも写真でこそないがそこに載っている商品説明の挿絵は精密に描かれている。
まだ、文字が読めない私にとってはかなりありがたい。
ちなみに、文字が読めなかった理由は両親も教えてくれなかったのもあるが、子供用の本がなかったからが大きい。家にある本は父さんの書斎にある奴だけだ。
いくらなんでも、子供が読むようなものではなかったので文字だけは断念していたのだ。
掲載されている商品はというと布や宝石、食品等の素材が多く、次いで多いのは家具だった。
不思議なことに武器や防具に関しては驚くほど少なく、武器ならば、ナイフ系がそこそこ乗っているが他の武器は掲載されているのは1~2品のみ、防具も同じくらいである。
それに対して素材にしてはかなりの種類があった。
魔獣の素材系のページが一番多く。大体三分の一を占めており、魔物に関しては図鑑のように絵と説明が乗っている。
説明文は文字が読めないので全く分からなかったが図鑑を呼んでいるみたいで結構面白い。
母さんは限定商品用のカタログを読み終わると巻末のページを取り外し、書き込み始めた。書き込みが終わると、今度は汎用品のカタログをチェックし始める。
汎用品のカタログの方はほとんど文字で書かれて、文字が読めない私にとってはあまり面白くない。
なので、私は再び限定品のカタログを眺めることにする。
カタログを眺めていて面白いのはやはり魔獣の素材のところが面白い。
色とりどりで綺麗にカットされている様子の宝石や緻密で繊細な彫り物をされている家具のページにも心を惹かれるのだが、やはりここは異世界魔物の様子が気になる。
魔獣はやはりいろいろな種類がいるらしく、元の世界とそっくりなものから、物語の中でしかいないような、ユニコーンやケルベロス・ヒュドラなんて物も載っている。和物だったら、猫又に大百足、鵺に似たやつまでいる。
しかし、不思議なことに鳥類だけは全くといっていいほど載ってはいなかった。
というより翼のある生き物が載っていなかった。
私はこれについは思いあたることが一つあった。それは母さんが水の月にしてくれた昔話だ。
曰く、羽のある飛べる魔獣は火の神に焼き殺されたのだと。
となると、この世界には神様やエルフ、妖精なんかがいることとなる。
彼らに頼れば元の世界に戻れるかもしれないと。そんなことを考えていると。
「ナターシャ。義兄さんから買うものはもう決まったかい?」
と言って父さんが何やら薄い紙を持ってきた。
「ええ。粗方欲しい物の目星はつけたわ。貴方こそオーダー品や注文品決まったのかしら?」
「もちろんだとも。ユーの物もちゃーんといっぱい買ったぞ」
といって私の頭を撫でてくる。
「限定品の方はこんな感じでと考えているのだけどどうかしら?
ユーリちゃん。ごめんね。ちょっとカタログ借りるわよ」
と言って私からカタログを取り上げて相談を始めた。
見ていてかなり面白かったカタログを取り上げられて面白くなかったがここで切り札<泣く子以下略>を使うのも大人げないのでやめて置いた。
しばらくすると、買うものが決まったらしく両親の話し合いは終わった。
「じゃあ。私は晩御飯の用意をするわね。兄さんやコケシさんたちもいらっしゃるから、腕を振るうわよ」
そういって母さんは台所に行って料理を始める。
私はもう一度カタログを見ようとカタログに近づくのだったが父さんにつかまってしまい、あやすもといあやされるのだった。
それから、夕方になったころ家の扉を叩く音がした。
母さんはまだ料理中なので父さんと私が玄関に向い扉を開けるとそこには何やら大きな木箱をいくつも持った叔父さんやコケシさん達がいた。
「兄貴ー。晩御飯いただきに参りましたぜー」
「ナターシャ。去年の注文品とオーダー品も持ってきたぞ」
木箱の大きさは入口の扉をギリギリ入るぐらいの入るくらいの大きさで箱だけでもかなり重そうである。それを叔父さんは1つ、コケシさんにいたっては2つも持っている。
元の世界だとどちらもオリンピックに十分出れそうなくらいな怪力だ。
二人は父さんに案内されながら居間に通される。
「結構、早かったですね。各家の配達もあるからもう少し遅くなると思ったんですが」
「兄貴。実は俺たちも早く休みたいから手伝ったんですよ。牛車で見張りしている奴を除けば他の奴も大体は手伝っているんですよ」
「ほう。商人の手伝いをするなんて珍しいじゃないか?」
「まぁ。この村は特別ですよ。兄貴のつてがあるランスロがキャラバンリーダーしてるんですから、いいとこ見せればこの村への移住が認められるかもしれませんからね」
「実力さえあれば、村の皆はみんな気にしないんだけどな」
と父さんが苦笑いをする。
というか、この村に住むのって実は結構なステータスなの?
私はまだそんなに村の中は知らないけど何にもないとだけは言える。
「まぁ。俺たちはキャラバンのメンバーは楽できていいがな。普段なら夜遅くまで駆けずり回らなくてはならないし、夜だって牛車で泊らないといけない時もある。
やはり、身内がいるこの村はいいな」
「せっかくだからゆっくりしていってくれよ」
父さんがソファーを勧めるが叔父さんは
「ああ。その前にさっきの話なんだが、どうするんだ?」
「大地短草のことですか?それなら、今夜ゆっくり話してもいいんじゃないですか?」
「そうだが。今の季節だ。今から植えれば明日には結果がわかるだろ?」
「そう言われればそうですね。今の季節に子供達を外に出せるのはかなり魅力的ですしね。
分かりました。買います。代金は私につけておいて下さい」
おおう。なんか知らんが、大地短草を購入する流れになっている。
外に出れるのもうれしいが、魔力の補給ができるようになるのは元の世界に戻るための第一歩となるかもしれない。
しかし、父さん値段も聞かずに買うなんてかなり豪気だな。
叔父さんは、毎度ありーといいながら懐から小さな袋を父さんに渡した。
父さんはじゃあ植えるかと玄関から外に出ていくので私もトコトコとついていく。
一言でいうと庭の状況はすさまじいだった。
私の背丈よりも高い草が一面に生えており、ここが庭だとはとても信じられない。
「やはり植える前は草をどうにかしないといけないな」
そうつぶやきながら父さんは魔法を使う。
「炎よ」
父さんが叫ぶと辺り一面が火の海となり、草が一本も残らず消し炭になる。
それを見ていたコケシさんは
「さすが、烈火の魔術師と呼ばれるだけありやっすね。魔法であれだけの詠唱でこの威力」
と父さんを褒める。
父さんはまるで当然という感じで買ったばかりの大地短草の種をまく。
種の量はそんなに多くなかったようで、消し炭になった場所の半分ほどに蒔くとなくなってしまった。
叔父さん曰く、いったん根付くと空き地があれば徐々に広がっていくそうので庭での作業はここで終了となった。
そんな庭での作業が終わるとキャラバンで売り子をしていた人たちが家に集まってきた。
「てんちょー。配達終わりましたー」
「牛車は事前の打ち合わせ通り、バーの奴が見張りと受付しています」
「護衛の方たちは今村長さんの方に挨拶にいってますよ」
「おう。レー達もご苦労だったな。今日はゆっくりしてくれや」
そう言って叔父さんは勝手知ったる何ちゃらで家に勧める。父さんは苦笑いをしながら。
「入って奥の方から4室それぞれ使ってください。後、30分くらいで夕食にしますのでそれまで自由にしてください」
売り子さんたちはやった~と言いながら家の中に入って行くのだった。
その後、20分後くらいに3人の護衛の人たちが家に来た。他の護衛の人はどうやら村長の家に泊まるとのことらしい。
そして宴が始まった。
普段、村に来客などほとんどないのに、親戚並びに知り合いが来れば来ればどうなるのか?
答えは簡単、大宴会である。
普段はほとんど使わない。大テーブルの上には所狭しと料理が並び、杯には酒がなみなみと注がれる。
「「「「乾杯」」」
その掛け声とともに皆が杯をあけ、料理を食べ始める。
私はまだ離乳食がギリギリ終わるか終らないかの頃なのでテーブルの上のご馳走を食べることができない。
食べることができるのは、精々スープやムースやテリーヌなどの柔らかい物やデザートに類するものだ。
それだけでも十分、おいしく満足なのだがやはり他のものにも気になる。
テーブルの上でひときわ存在感を放っているのは、子ブタ?(足がなぜか6本ある)の丸焼きであろう。ジュージューと音を立てながら運ばれたそれは、皮は飴色に焼けた皆がナイフを入れるたびパリパリと音を立てているし、肉に到達すればあふれんばかりの肉汁でて食欲を誘う。
そして、体の中には詰め物がしてある。中身は中華料理のチマキに似ておりもち米のようなものである、茶色に味付けしてあるそれは、肉の脂と混ざりえも言われる匂いを奏でている。
他にも、場所柄か魚料理はないにしても瑞々しいそうなサラダに、コンソメのように透き通りながらも芳醇な香りと濃厚な味なスープ(これは食べることができた)、主食であるパンも惜しげもなくバターが使われておりいかにもおいしそうである。
無論、皆も満足しているようで母さんを口々に褒めながらお酒を飲みながら即時を口にしている。
「いやー。流石に開拓村のご馳走ですね。一介の商人である私なんかが一生口にすることのない物ばかりですね」
そう口火を切ったのは叔父さんにレーと呼ばれた若い女性の売り子の一人だった。
「そうですよね。こんなご馳走食べれるなんて辛いキャラバンに参加したかいがありましたよ」
「辛いなら、次の町で下してやろうか?ジー」
そういって叔父さんが冷やかす。
「イヤイヤイヤイヤ。とんでもないです。ゼンゼンツラクナイデスヨ。ジョウダンデスヨ」
「顔が笑ってないぞ。ジー。次の村で店番な」
その一言にジーと呼ばれた売り子さんは机に突っ伏す。
「でも、バーさんたちよりはましですね。今晩は牛車で店番ですから」
そういって、別の女性の売り子さんがフォローを入れる。
「他も村ではこんな厚遇ないですもんね。流石、神様、女神様、店長様ですよね」
そう売り子の女性たちが楽しそうに会話をしている。というか男性の売り子さんはなぜか一人もいない。
そんな疑問に母さんも気付いたのだろう質問する。
「そういえば、男性の方はどうしたんですか兄さん?」
「ああ。あいつらは実はここに来る途中でこいつらの覗きをしてな。罰として今日は店番だ」
叔父さんはそういいながら杯を空けてまつお酒を注ぎにかかる。
護衛の人たちはというと父さんの周りで何やら話をしている。
「ご高名は今だ町の方でも聞かれています。烈火の魔術師殿」
「ぜひ機会があれば一緒に一狩りお願いいたします」
護衛の人達は父さんを何やらすごく尊敬のまなざしで見つめながらお酒を勧める。
なんかよくわからんが父さんって実はすごい人なのだろうか?コケシさんも護衛の人もそうだけど皆父さんをすごい羨望のまなざしで見てるんだよね。
私がそんなことを考えているといきなりコケシさんが父さんに泣きついてきた。
「アニキ―ー。聞いてくださいよ。あの、ハリコの姉さんまで身を固めることできたのにアッシは今だ彼女すらできないんですよ。何故なんですかね?」
コケシさんはザアザア泣きながら、父さんに詰め寄る。
「アッシだって頑張っているんですよ。こないだだってケルベロスとオルトロスを単身で仕留めることができたんですよ。それなのにそれなのに周りに来るのは・・・・」
「まぁお前の場合は、もう少し学を身に着けないとな」
父さんはそう言ってちょっと冷たくコケシさんに当たる。
「アニキーー。そんなこと言わずに誰か紹介してくださいよ。あれなら将来ユーリちゃんを」
コケシさんがそんなこと冗談のようなことを言った瞬間だった。
「ダメダメだ。ダメだダメだダメだダメだ。ユーは絶対にやらん。ユーは俺を倒せるような奴じゃないと絶対やらん」
あっ。父さんが軽く切れた。コケシさんの懐に入った瞬間だった。
コケシさんの体がいきなり吹っ飛び壁まで5メーター位吹っ飛ばされコケシさんが気絶する。
「ユーはゼッタイ ヤ ラ ン」
うん。あれは一種の鬼だな。将来気をつけねばならんな。うまく方向性を持っていけばとてつもない武器になりそうだけど。
そんなこんなで、宴が終わるころ、叔父さんが両親に話しかける。
「そういや、お前ら注文品とオーダー品チェックしたのか?」
正気に戻った父さんが返事を返す。
「いやまだですよ。できたら今からしようかと思ったんですけど、そういえば木箱ひと箱多かったですけどあれなんですか?」
「あれか?あれは俺からカワイイ姪っ子にプレゼントだ。残り物で悪いがな」
と叔父さんが返す。
「残り物ってなんですか?兄さん」
そういぅて母さんが返すが。
「いいから開けてみろよ」と叔父さんが返す。
仕方なく、父さんが木箱をあけていく。一つ目の箱の中には何やら本がいっぱい入っていた。
「これは、注文品ですね。私の魔術書にユーの絵本なんかが多いですね」
中身が全部入っているか確認した後、次の木箱に写る。
「次はオーダー品ですね。加工に出していたアクセサリーや防具にナイフですね。流石、町の職人は一味違いますね」
そういいながら、中に入っていた物を十分吟味しながらチェックする。
どうやら、注文品は特別な品のお取り寄せでオーダー品は素材など加工して武器や防具を作ってもらうらしいな。限定品のカタログで武器何かがなかったのはこのせいか。
この世界、よくゲームにあるような店先で武器を売っている武器屋はあまりないのかもしれん。
武器屋=完全受注生産 なのだろう。
「さて次が問題の箱ですよね。中身はなんでしう?」
そういいながら、箱を父さんが空けると中に入っていたのは、大量の小さな子供服だった。
子供服はすべてどこからどう見ても女の子用である。しかも、皆かなり品の良いものばかりで元の世界でもリアルお金持ちぐらいしか着れないよなものばかりである。
「どうしたんですかこれ?兄さん。いくら兄さんでもこれだけ物用意できないでしょ?」
と焦った顔をして叔父さんに母さんが詰め寄る。
「実はな、ここより三つ前に立ち寄るはずの村があったはずなんだが」
「あったはずがですか?」
と父さんが聞き返す。
「ああ。滅ぼされていた。跡形もなくな。これはそこの村で注文されていた品だ。その村が滅ぼされていたなんて聞いてないしな。おそらく村人は全滅だな」
「その村は開拓村ですか?それとも保護村?滅ぼされた原因は?」
叔父さんの答えを聞いた父さんが真剣な様子で叔父さんに詰め寄る。
「保護村だな。原因はおそらく野盗だな。村の破壊され方が魔獣のそれじゃなかったからな」
「そうですか。しかし、いいんですかこんなに服をもらって?」
答えを聞いた父さんは少し安堵の様子を見せながら再び聞いてくる。
「キャラバンの注文品は普通前払い。村が滅んだらキャラバンの物。キャラバンが死んだら残念でしただからな。
他で売ってもよかったが、可愛い姪っ子にやるのが一番いいだろ?」
と返してきた。
ここでふと隣を見てみると目をランランと輝かせている母さんがいた。
大量の子供服に可愛い娘とくればテンプレじゃなくてもたどる道は一つだろう。
私はこの夜、夜遅くまで着せ替え人形となったのは言うまでもなかった。