信念と妄信と
イエスは空を見上げる。
自分が生まれたとき、空には星が輝いていて、それを見た占星学者が自分が産まれた洞窟を訪れたという。
(馬鹿げた話だ・・・)
いつの時代も星は輝いているし、月も照る。他の星より星が強く輝いている。そんな些細なことに希望を見出だせるなんて、余程、メシアに困っていたとしか思えない。
自分に救いを求めないでほしい。
自分の罪くらい、自分で償え。
「ヨハネ。本当にあの方はメシアなの?」
マリアは双子の弟に問う。
「当たり前じゃないか!謙虚なお方なんだよ」
マリアは溜息をつく。人間は誰もさして変わらない。皆、誰にも譲れない考えを持っている。
それを信念と呼ぶか、妄信と呼ぶかは別だが・・・。
(人間らしいと言えば人間らしいけれど)
人間が信念(妄信)を持つことをやめれば、少なくとも、今のようにくだらないことで争うことはなくなるだろう。
けど、信念(妄信)がなければ、人間は人間でなくなるのだ。
「姉様!聞いている!?イエスさまはすごい お方なんだよ」
「はいはい」
「返事は一回!」
母親に似てきた弟を睨みつけて、マリアは外に出る。
黄色の髪の持ち主がこちらを振り返る。
「イエスさま・・・」
2010/11/24