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期待
「綺麗な星ですね」
とりあえず、世間話でも、とマリアはイエスに話しかける。
「そうですね」
マリアはイエスをちらりと見る。
「イエスさまはメシアとして産まれたのがお嫌なのですか?」
「・・・メシアなんて皆に期待されるだけですよ。期待されて、憎まれて・・・。孤独なだけです」
「馬鹿なことを!」
イエスはきょとんとマリアを見る。
「期待されない人間なんて余程の馬鹿か、まぬけだけですよ!多かれ少なかれ、人間は期待されるのです。それを嫌だとは、あなたは大馬鹿者か、大うつけになりたいのですか!?」
マリアは本当に激昂しているらしい。顔が赤くなっている。
「それにあなたは孤独ではないでしょう!?孤独とおっしゃったらお弟子さまが可哀相だわ!そんなにメシアがお嫌なら、とっとと死んでしまいなさい!」
「姉上!」
双子の弟の声にマリアは我に返る。
(よく知らない男性にこんな暴言を吐いてしまうなんて・・・)
マリアはさすがに慌てる。
「ご、ごめんなさい!」
「ふっ」
「ふ?」
「ははっ!貴女は面白い方だ!」
青い顔のマリアを前にイエスは笑いころげていた。