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悪女のレシピ〜略奪愛を添えて〜  作者: ましろ
第二章 

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11.公爵家の人々


 あれから10日が経ち、公爵家での暮らしにもだいぶ慣れました。

 初日に図書室や稽古の見学などをしたおかげで、二人と話すのにもすっかりと慣れ、おかげで少しずつ子ども達で集まって行動することが増えていきました。



 リシャール様は2つ年上ということもあるけれど、やっぱりとてもしっかりとしています。

 穏やかで常に笑顔。でも、意外と甘やかしはしません。


「ミュリエルさん、姿勢が悪いよ」


 駄目なところはしっかりと指摘をします。


「そう。もう少し肩の力を抜いて。うん、綺麗になった。そうしていると立派な淑女だ」


 そして上手くできたら褒めることを忘れない。


「慣れるまでは大変かもしれないけど、ミュリエルさんは頑張り屋さんだからすぐにできるようになるよ」

「…ありがとうございます」


 ミュリエルがちょっと嬉しそうだ。


「ブランシュ、こないだの本の続きってあるのか?」

「あら、ロラン様はもう読み終わったのですか?続編はあと2冊ありますよ」


 図書室で冒険物の本を1冊お薦めしたのですが、どうやら読まず嫌いだったみたい。気に入っていただけたみたいでよかったです。


「私が薦めたときは読まなかったのにな」

「兄上が薦めてくれたのは公用語だったじゃないか。あの頃はまだ習いたてだったんだぞ」

「ロラン兄様が読書をされるなんて。明日は雨が降るのではないかしら?」

「ベル、酷いよ!でも、本当に面白かったんだ。ベルも読んでみたら?」


 こうやって一つの話題に盛り上がってしまい、マイルズ達が何となく会話に入れないでいると、


「マイルズ君達はどんな本を読むの?」

「え?……あ、さっき言ってた本は読んだことあるよ。な?パスカル」

「…うん、面白いよね」

「そうなんだ。でもミュリエルさんは女の子だからもっと違うお話の方が好きかな?」


 と、ちゃんと話題を振って、皆が会話に入れるようにしています。

 凄いなぁ、やっぱり長男だから?と思いましたが、よく考えると、マイルズ達の方が1つ年上なのを思い出しました。

 ……さすがは公爵家。と思っておきましょう。



 ロラン様はとっても明るくて素直。そして、本当に剣術が大好きなようです。

 あの日、稽古を見学させてもらったのですが、思っていたよりも本格的に取り組んでいて驚きました。

 でも、何よりも驚いたのが、


「ロラン君は瞳に魔力が宿ってるね」


 という、シルヴァン兄様の言葉でした。


「………へ?」


 それまで訓練をしていたロラン様も驚いています。


「相手の動きをしっかり見ようと集中している時、時々魔力を感じる。相手の動きがはっきり見えたり、次の動作が分かったりすることがあるんじゃないかな」


 すごい。そんなことを無意識にしているロラン様も凄いし、ほんの少し訓練を見ただけで分かる兄様も凄いです。


「……それって、俺がズルをしているってことですか?」

「まさか。魔力だって実力だよ。まだ自分の意志で使いこなせてはいないみたいだけど……うん。安定はしているし、無理に抑える必要もないと思う。

 もし、今後の訓練で違和感があるようなら早めに教えてくれれば大丈夫だ」

「よかった~~~っ!」

「君は騎士に向いているかもね」

「本当ですか?!」


 その後は浮かれ過ぎて叱られていましたが、訓練中のロラン様は、普段とは違う鋭い眼差しで、とっても格好良かったです。



 マイルズとパスカルは、侍従の手を借りずに起床や身支度をし、食事も自分達で取りに行ったり、洗濯物を出しに行ったりと、寮生活に向けての自立訓練を頑張っています。

 最初は朝に起きれず、朝食を食べられなかったりと大変そうでしたが、最近はだいぶ慣れてきたみたいです。



 それからミュリエルは。

 5日目にしてベルティーユさんと大喧嘩をしました。


「ミュリエルさん、いい加減好き嫌いは止めなさい」

「……だって美味しくないもん」


 そう。理由は食事の好き嫌いです。


「見て分からない?好き嫌いが多いあなたのために、態々苦手な食材は細かくしたりしてあるでしょう?

 そんな5ミリ程度の物くらい頑張ってみなさいよ」

「……やだ」

「なんですって?!」


 これは朝食の席でのことでした。この日は運悪く、少し遅めに起きてきた二人だけでの食事となり、このバトルが始まってしまったのです。


 でも、この争いはコンスタンス夫人の一言で終わりになりました。


「ミュリエル?好き嫌いの多い子は王子妃にはなれませんよ」


 これを聞いたミュリエルは5ミリのセロリを何とか口に放り込み、それを見ていたベルティーユ様は呆れた顔をして、


「お母様、お騒がせして申し訳ありませんでした。あと、素敵な手段を教えてくださり感謝します」


 と、ぺこりと頭を下げて部屋に戻っていったそうです。


 それからというもの、「殿下はトマトがお好きだったわ」とか「ねえ、お母様。このお野菜はお肌が綺麗になるのでしたよね?」などと口にして、ミュリエルが自発的に食べるように仕向けるようになりました。



「ベルティーユさんは私よりよっぽどお姉さんね」


 二人で話をしている時についそう言ってしまうと、


「これはお母様やリシャールお兄様にやられた戦法ですの。あ、間違っても殿下狙いではないから!」

「……なるほど」

「ブランシュさんはあまり好き嫌いがなさそうだから、そういうことはされなかったのでしょうね」


 そう言われると、どうだったかしら?と考える。

 何だか別館での暮らしがずいぶん前のことのように感じます。


「私はいい子でいなくてはいけないと思っていたので、好き嫌いを言うなんて考えもしなかったわ」


 そういえばそうだったなと、お母様達に愛されるために努力していたことを思い出しました。

 6歳のときに真実に気付くまで、ずっとわがままなど言わずにいい子でいたのだと……。そうね、あの時の私と、今のミュリエルは同じ年なのだわ。


「ブランシュさんはリシャール兄様と似ているかも」

「そう?」

「リシャール兄様もわがままなんか言わないもの。いつもニコニコとロラン兄様や私のわがままを聞くばかりよ?お父様達に叱られてる姿だって見たことないし」


 確かに、叱られるより注意をする側よね。


「……お祖母様がね、とっても厳しい方なの」

「あ、別邸にお住まいなのよね?」

「以前はここに住んでたのですって。

 今でも時々いらっしゃるのだけど、私はちょっと苦手。ブランシュさんも気を付けてね」


 気を付ける……何を?


「私はあまり好かれていないの」

「え?」

「この、くすんだ金髪がお気に召さないみたい。あと、ロラン兄様もね」

「そんな……」

「お祖母様は美しいプラチナブロンドにサファイアブルーの瞳なのよ」

「たったそれだけで?」

「公爵家の血筋はお祖母様なの。お祖父様は婿入りしているのよ。でも、お祖母様はその婚姻が不服だったのですって。

 でも、お祖父様はとってもお強かったから、どうしてもお断りできなかったんだって聞いたわ」


 お祖父様は国の英雄だものね。その功績のために、公爵家のお祖母様と結婚することになったのかしら?


「だからお祖母様譲りの髪を持つリシャール兄様はお祖母様のお気に入りだったの」


 …お母様もプラチナブロンドに青い瞳だった。


「だからね、もし、ミュリエルを見たら、お祖母様はどう思うのかなって。ちょっと心配になっちゃった」


 そうね。ミュリエルも美しいプラチナブロンドを持っている。


 それは……お母様のように、ミュリエルだけを愛するのでしょうか?





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