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1 突然現れた女神


頭の上には、積み上がったアニメ円盤の箱。

横には、三日前に食べたカップ麺の残骸。

そして俺は、スマホの充電コードに巻かれながら、今日も天井を見ていた。


そう、俺は──完成されたニートである。


きっかけは……まあ、あるよ。

ちゃんとある。


──あれは、ちょうど5年前の惨劇。


俺がバイト先に「今日は無理です」と言い、

推しに人生の全てを預ける覚悟で、テレビの前に正座したあの日。

『ユメイロブレンド』最終話。


アユミちゃん。

俺の心の支えであり、希望であり、世界の灯火。

内気で繊細で、自分を出せないけれど、それでも前を向いて生きようとする子。

そんな彼女を、いつも隣で支えていたのは──ユイちゃんだった。女の子の幼なじみ。


言葉にしなくても通じ合ってる関係。

あれはもう友情じゃない。とにかく尊い、あの2人の間は聖域だったよ。


視線。仕草。間。

全部が、愛の証明だった。


なのに──。


アユミちゃんは、ユウトの手を取った。


そう、突然出てきた新キャラ。

文化祭で「俺、お前のこと好きだったみたいだわ」とか急に言い出して告白してきた、まじであいつ誰だよ。SNSでも炎上してたからな?


「嘘……だろ……?」


俺はそのとき、心からそう思った。

そして数秒後には、胃がすべてを拒否した。


「ぅ…ヴォエ……」


ゴミ箱にすべてをぶちまけながら、俺は悟ったのだ。

この世界は、俺の感情を踏みにじって笑う場所なのだと。



次の日から、俺は布団の中で暮らすことにした。


両親には「体調不良」とだけ伝えた。

スマホの通知は切り、SNSでは『ユメイロブレンド』をミュートした。

カップ麺を常備し、現実を断った。学校に最後に行ったのは卒業式の時だけ。就職なんてせずにだらだら過ごしている内に5年の時間が過ぎていた。


そして今、俺はここにいる。

完全体。究極進化。カップリング寝取られ事件を経た末路、それが俺──天野レン。


……まあ、そんな感じで、今日もだらだら過ごしてたんだけど。


天井から、突然光が差してきたのよ。


「へ?」


びっくりして起き上がると、そこには──


「こんにちは〜」


金髪でふわふわした服を着た、どう見ても女神っぽい美少女がいた。


──あれ?

なんか始まる感じ?

これ、もしや異世界転移フラグ??


でも、女神は第一声でこう言った。


「わたし、『ユメイロブレンド』大好きなんですぅ〜」


……なんだこいつ…


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