お前との婚約を破棄する!
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「なんてこと?わたくしは、事実を述べたまで。あなた様の非常識さを指摘しただけですわ」
「はああっ?非常識さぁっ!?何を言ってるんだよ!」
マイロがつかみかかってこようとするけれど、流石にそれは兄が立ちはだかった。
兄は、細いけれど、上背があるので、マイロをひるませるには充分だった。
「我が妹に、何をしようとしたんだね?マイロ」
感情を抑えた、冷たい声が響く。マイロは目に見えて、びくっと震えた。
「なっ、何もしようとはしておりません!そもそも、セシリアが悪いんです、義兄上!」
「義兄上?君は、何を言っているんだね?僕は君の兄なんかではない。気持ちが悪いから、義兄上なんて呼び方はやめてくれないか」
「えっ、でも今までもそうやって・・・」
まだ何かモゴモゴと言い募ろうとしているマイロを、兄が軽蔑しきった目で見つめる。すると、マイロはぐっと押し黙ってしまった。
わたしは兄の影からでて、マイロにニッコリと美しい笑みを浮かべてみせた。
「マイロ様。まだ、何かおっしゃることがおありのようですから、控え室に入らせてもらいませんか?このままでは、皆さまのお邪魔になりますもの」
今、わたしたちは現在進行形で注目を集めてしまっている。家同士の話をするのならば、人目につかな
いところで話し合いたい。
「はあっ、セシリアは・・・これだから・・・。まあ、良い。セシリア・ヴィクトナーズ。僕、マイロ・シュメルダーは、お前との婚約を破棄する!」
兄の背中がこわばったのが分かった。後ろで静観していた両親も、小さく息をのんでいる。
わたしは、マイロを見つめると、ゆっくりと口角をあげてみせた。少しぎこちないかもしれないけれど、誇りを持って笑みを浮かべてみせるべきだ。
「シュメルダー伯爵令息。わたくしとの婚約を破棄すること。それをあなたは望むのですね?」
確認するように、ゆっくりと尋ねる。マイロは、ふんっと大きく鼻を鳴らした。もう彼は、鼻を鳴らすのが癖になっているようだ。
「そうだ」
「さようでございますか。では、わたくしからはもう何も申し上げることはございません。婚約破棄、お受け致しました。もう受理されたと存じますので、変更はなしですよ。そちらから、慰謝料をいただきましょう。それから、契約違約金も。これは、一種の契約ですもの、お分かりいただけますよね?」
彼は、この華やかな場から退かないことを決めたのだ。それならば、わたしもそれに付き合うべきだろう。とことん、彼と話し合い、これからのことをつめなければ。
マイロは、わたしの言葉に顔を真っ青にした。
「・・・どう、いうことだよ?」
「どういうこと?そのままでしょう。わたくしとあなたの婚約は、一種の契約です。それを、一方的に破棄をなさったので、あなた有責ということになりますよね?そのことに傷ついたわたくしはどうなるのですか?その為の、慰謝料。それから、契約の破棄を話し合いもせずに、勝手に公の場で宣言し、わたくしの尊厳を傷つけた、と言う意味合いも含まれていますよ。契約違約金は・・・。まあ、その言葉通りですわね。お分かりいただけます?」
わたしの丁寧かつ的確な説明に、マイロの顔色はどんどん悪くなっていく。
ところが、何かを考えたのか、声を張り上げた。
「何故、僕が有責なのだ!?」
マイロがよりにもよって詰ったのは、そこだった。
あまりにも愚かすぎて、盛大なため息がこぼれる。
「————はあ、シュメルダー伯爵令息。あなたは、婚約者のわたくしがいながら、浮気をなさっていましたよね?」
「はっ?」
マイロの顔色がまたもや悪くなってきた。一時は回復したと言うのに。
もはや、周りの目を気にする余裕はないようだ。
「何を・・・!」
「ダージ子爵令嬢」
わたしが告げた名前に、マイロは雷に打たれたかのように、ぴしりっと固まってしまった。
「聞き覚えがありますわよね?むしろ、聞き覚えしか無いんじゃないかしら」
わたしが追い打ちをかけると、マイロはびくりと俯いたまま震え、ずるずるとしゃがみ込んでしまった
。
「まあ。大丈夫かしら。そこの貴女。誰か、騎士を呼んでくださる?この方をシュメルダー伯爵家の控え
室までお運びしてほしいの。具合が悪いそうよ」
わたしが笑顔で近くにいた王宮の侍女に声をかけると、侍女は慌てた様子を一切見せずに、はいと頷く
と淡々と騎士を呼びにいった。
かなり、優秀で賢い侍女のようだ。彼女の後ろ姿を見送りながら、わたしは心のメモに彼女の姿を書き
留めておく。
「—————マイロ。いや、シュメルダー伯爵令息。正式な書類は、後ほどまとめて送らせていただく」
兄がそう正式に告げる。マイロは、既にがくりとうなだれていた。
兄は、それから少し逡巡した後。
「———お前が、義弟にならなくて、良かったよ。マイロ」
マイロは、それをきいて、びくりと肩を震わせた。それから、のそりと顔を上げる。
「・・・んだ」
「何かおっしゃいましたか?シュメルダー伯爵令息」
わたしが聞き返すと、マイロは潤んだ瞳でこちらを睨んだ。それから、つばを飛ばさん勢いで、叫び始める。
「そもそも!お前達は、誰なんだよ!貴族ですらないだろ!俺は、ヴィクトナーズなんていう家名、きい
たことないぞ!お前達なんて・・・!」
「そこまでにしろ、シュメルダー伯爵令息よ」
引き続き、読んでくださり、ありがとうございます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
まだ、続きます!
マイロが鬱陶しいかも知れませんが、お許しください。。。笑
投稿は不定期に行いますが、頑張るので、読んでくださると嬉しいですᕦ(ò_óˇ)ᕤ