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【終】もう一度君に会うために、今の俺にできること。

時間線を遡ったハルトに思わぬ事態が!

「約三カ月の時間遡行か……」


 時はクリスマス・イヴの夜。部屋の中はなにもかもあの時のままだ。違和感があるとすれば……。


 ハルトは自分のカラダを見下ろした。


「どうして俺はセーラー服を着ているんだ?」


 アプリの妖精ヨカインちゃんが着ていた夏のセーラー服そっくりの服を、どういう訳かハルトは着ていた。


「時間線を遡るために必要なコスチュームだったのか?」


 パラリとスカートをめくってみると、女性用の白いショーツを履いていた。


 自身のふとももを見てつい興奮してしまった。


「まるで12歳の少女のようではないか」


 たちまちムスコがにょきっと……。


「あれ?」


 にょきっとならなかった。


「どういうことだ?」


 ショーツの上から股間を触ってみて愕然となった。


「ええっ!?」


 股間には小さな突起物があるだけで、ムスコの影も形もなかったのだ。


「なんじゃこりゃあーーっ!?」




 * * *




 時間遡行して三カ月前に戻って来たら、ムスコが消失していた!


「落ち着け!」


 冷静になって消失の原因を考える。




「時間遡行には供物が必要で、俺のムスコが捧げられた。①ムスコ完全消失」


「時間遡行の影響で一時的にカラダに影響が出た。②ムスコの消失は一時的、時間経過とともに復活する」


「時間遡行の影響で女になってしまった。トランスセクシャル、③一時的あるいは④恒久的」


 真実を確かめるために、ハルトはショーツの中に手を突っ込んだ。


「無い!」


 そこにムスコは無かった。そして。


「有る」


 女の子なら誰でも持っているものが有ったのだ。


「俺の股間に女性器が有る!」


 あまりの衝撃に思考停止に陥るハルトだった。


「妖精のイタズラ」


 ハルトの脳裏に浮かんだのはその言葉だった。


 妖精は時々人間の世界に現れて、数々のイタズラを仕掛けるという。これもそのひとつなのか?


 妖精の思考など人間のハルトには分かるはずもなく。


「妖精のことは妖精に聞け、だよな」


 ハルトはスマホを手に取りアプリの妖精を呼び出そうとして躊躇った。


「もし、ヨカインちゃんが出てこなかったら……」


 傷ついて去ってしまった妖精を思い出すと、どうしようもなく罪悪感に襲われる。


『パパ、大丈夫ヤヨ』


 頭の中に赤ん坊の声が聞こえたような気がして、ハルトはアプリをタップした。


 チャリーン!


『預金よきよき、お金のお世話はヨカインちゃんにおまかせ!』


 ピンク色の長い髪、水色の瞳のヨカインちゃんが、白い水着姿で現れた。


『こんばんわ、ハルト! 預金(デート)のお誘いでしゅか?』


 いつもとかわらない明るいヨカインちゃんが現れて、ハルトは安堵した。


「ヨカインちゃん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」


『なんでしゅか?』


 ハルトは二人の赤ん坊のことや時間遡行や性転換などについてヨカインちゃんに話した。


『くんくん、くんくん、ハルトには妖精の匂いがプンプンするでしゅ』


「やはりそうか」




 あの妖精の赤ん坊がなんらかの理由でハルトに性転換を施したのだ。


 もっとも可能性の高い理由が。


「預金残高消滅の回避だよな」


 女の子になってしまえば、妹たち『悪女同好会』からお金をぼったくられずにすむという訳だ。


「だが、カラダは女の子になってしまったとはいえ、俺のひきこもりハートは男のままだ。今だって女の子とセックスをしたくてたまんねえ」


 心とカラダの乖離をいったいどうすればいいんだ?




 バァン!


 部屋のドアが勢いよく開いた。


「ゴミ兄! たいへんだよ!」


 血相を変えて妹のひまりがハルトの部屋に飛び込んできた。


 ひまりはセーラー服姿のハルトを見て目をまんまるくした。


「誰?」




 * * *




「俺だ俺」


「オレオレ詐欺の人?」


「おまえの兄のハルトだよ!」


「いやいやいや、ゴミ兄にしてはかわいすぎでしょ?」


 ひまりは一度部屋を出て手鏡を持って戻ってきた。


「ほら見てよ」


「ん?」


 鏡の中にいたのは凡庸な兄ではなかった。


 顔面偏差値は優に70を超える美少女が映っていたのだ。


「こ、これが俺? とんでもねえ美少女じゃねえか! これも妖精のイタズラなのか?」


『間違いないでしゅ!』


 スマホの中からヨカインちゃんが断言した。


「むうっ!」

 

 するととたんにひまりが不機嫌になった。


 バチバチ!


 ひまりとヨカインちゃんの間で見えない火花が飛び散った。




 * * *




「それよりもゴミ兄聞いてよ、気が付いたら三カ月前に戻ってたんだよ」


「おまえにも時間遡行前の記憶が残っているのか?」


「時間遡行? なにそれ?」


 ハルトは手短に、時間遡行や性転換の話をした。


「原因はあたしとのセックスってこと?」


「まあ、そういうことになるのかな」


 正確にはセックス後の強引なお金の取り立てなのである。


「あたしってば罪深い妹だよね。時間遡行を招いちゃうほどの魅力を有してしまった自分が恐いわぁ」


「ニヤニヤして言ってんじゃねえよ」


「だってぇー。えへへへへ」


『正妻はあたちでしゅからね!』


「ゴミ兄、スマホの電源切っちゃえば?」


「いや、その……」


『小姑は引っ込むでしゅ!』


「なんですって、たかがAIの分際で!」


『たかがではないでしゅ。華麗に進化を遂げたアプリの妖精でしゅ!』




 二人の間に割って入り、ハルトは叫んだ。


「俺のために不毛な言い争いをするのはやめて!」


『ハルト……』


「ゴミ兄……」


 氷のように冷たいひまりとヨカインちゃんの視線を浴びせられた。


「い、一度言ってみたかっただけだから、他意は無いから」


「とりあえず『悪女同好会』に連絡を入れてみるね」


「おう頼む」




 * * *




 12月28日、『悪女同好会』のメンバーがハルトの部屋に集結した。


 沙月川紬希会長を筆頭に、浦野菫麗、悠木陽葵、綾瀬日和、雨宮舞音の五名である。


 ハルトと交わった彼女たちは、皆時間遡行前の記憶を有していた。




 彼女たちはハルトを囲んで座り、舞音は定位置、ハルトのお膝の上に腰を下ろした。


「いつもおしりに当たるおちんちんが無い。変な感じ」


「先っぽ兄さん、私のお膝に座ってもいいですよ。今なら無料大サービスです」


 日和は白い太ももを指さした。


「おっ!」


『ハルト、惑わされちゃだめでしゅ!』


 スマホの中からヨカインちゃんが警告を発した。


『「悪女同好会」は時間遡行を招いた元凶なのでしゅ!』


「先っぽ兄さんと私は将来を誓い合った恋人同士なのです」


「ん……。愛人志望」


『正妻はあたちでしゅ!』




「まるでハーレムじゃのう」と菫麗。


「モテモテでよろしゅうございますわねえ」と紬希。


「むうっ」


 なぜか口をとがらせる妹のひまり。




「ほ、本題に移ろうぜ……」


 ハルトはこれまでのいきさつ……ひまりへの支払いによって預金残高がゼロになったこと、アプリの妖精の赤ちゃんが世界中からお金を集めて時間遡行が行われたこと等を説明した。


「……とまあこんな感じで今に至るってわけだ」


「あらまあ、ひまりさん、容赦の無い取り立ては悪女の鑑ですことよ」


「さすがに予想はできんじゃろう、時間遡行などとはのう」


「だよねー。あたしはなーんも悪くないわよね」


『どの口が言うでしゅか!』


「なんですって、駄妖精!」


「まあまあ」


 ひまりとヨカインちゃんは相性が悪いのか、口を開けばすぐに言い合いになってしまい、その都度ハルトは宥めるために間に割って入った。




「ふむふむ」


 ハルトの膝の上で舞音が頭を上下に動かした。


「なにか分かったのか?」


「時間遡行はアプリの妖精による自己防衛と愚考」


「続けてくれ」


「ひきこもりでニートの駄文男には、将来的な収入は見込めない。妖精たちが生き残るためには最もお金があった過去に戻る必要があった」


「だからって普通時間遡行するかしら。そもそもアプリの妖精にそんな能力がありますの?」


 紬希の疑問に、一同の視線がスマホに向いた。


『あたちには無理でしゅ』




「時間遡行を行うには普通の妖精では無理。おそらく特殊個体。電子の海で奇跡的に誕生した特別な妖精」


「ヨカインちゃんの中にいる子供が、そうだっていうんだな?」


 ハルトが問うと、舞音はこっくりとうなづいた。


『あたちの中の……』


 ヨカインちゃんは自分のお腹に手を当ててつぶやいた。




「性転換についてはどう考えるのかえ、舞音?」


 菫麗の質問を受けて、舞音はハルトのペッタンコのオッパイに触った。


 もみもみ。もみもみ。


「な、何か分かったか?」


 胸を揉まれて気持ちいいと感じてしまうハルトだった。


「ん……。性転換はいわばオマケみたいなもの。天文学的数値の金額による時間遡行と比べたら、顔面偏差値の操作や性転換はさほどお金はかからない。現実世界でも妖精の力を借りなくても実現可能」


「つまり時間遡行で使ったお金の余りで、ちょいちょいと兄君の性と顔を変更したのじゃな?」


「おそらく」


「おそるべしじゃのう。妖精の赤ちゃんの異能というものは」




 紬希がまとめに入った。


「……よって、三月末にハルト様の子供が生まれるまでの方針はこうですわ」


 ◎ハルトの性転換は秘密にする。


 ◎外出するときは男の子の格好をする。


「ひきこもりだから外出はしねえよ」


 ◎『悪女同好会』のぼったくりミッションは一時凍結。


「二周目でもぼったくる気まんまんだったのかよ」


「以上で本日の集会は終了ですわ」




 このあと日和と舞音から声をかけられた。


「先っぽ兄さん、女の子相手でも私は大丈夫ですからね」


「ん……。パトロンの性別は不問」


 心配して声をかけてくれたのだろう。瞳をうるうるさせてハルトはつぶやいた。


「ありがとう。まだ俺には慕ってくれる女の子がいるんだ……」




 * * *




 12月31日大晦日。


「神社には行かなかったのか?」


「うん」


 1周目では両親と神社に出かけたひまりは、2周目ではハルトの部屋で一緒に過ごしていた。


「もうすぐ年が明けるな」


 ベッドに腰かけたひまりは両手を広げて兄を誘った。


「ゴミ兄。する?」


「うほっ、年越しセックスへの誘い!」


 手を伸ばしかけたところでハルトはハッとなった。


「まさかまたぼったくられるのでは!?」


 ひまりはクスッと笑って首を横に振った。


「さすがにこの状況でぼったくりはしないよ。そもそもゴミ兄にはおちんちんが付いてないじゃん」


「ははは……。だよなー」


 ハルトは遠慮なくひまりの服を一枚一枚脱がしていく。


「あいかわらず、けしからんオッパイだぜ」


 ひまりはハルトの服を脱がした。


「ゴミ兄のは、ペッタンコだね」


「おかげで女の子になった気がしねえ」


「揉むと大きくなるよ」


 そう言ってひまりはハルトの胸に触った。


 もみもみ。もみもみ。




 午前零時、スマホがチャリーンと音を立てた。


『ハッピーニューイヤー、ハルト! 今年もよろしくね!』


 あれ? 返事がない。


『ハルト?』


 キョロキョロと室内に視線を巡らせたヨカインちゃんは、ベッドの上でオッパイを揉み合っている二人の姿を発見した。


「あ……たしを世界で一番幸せな妹にして……ね……。あんっ……」


「おおう……。ちょこっと頑張ってみるか……な……」


 それを見たヨカインちゃんはスマホの中から大きな声で叫んだ。


『正妻はあたちでしゅからね!』




 * * *




【小さな小さなエピローグ】


 ヨカインちゃんは揺り椅子に揺られてくつろいでいた。


 預金残高はたっぷりと潤い、部屋の中はぽかぽかして暖かった。


『ハルト、赤ちゃんの名前、考えたでしゅか?』


 アプリ越しに話しかけると、ハルトから返事が来た。


「うん。■■■■……なんてどうかな?」


『ピッタリでしゅ!』


 ヨカインちゃんはお腹をなでなでしながら赤ちゃんに語りかけた。


『みんな待ってるでしゅよ。安心して生まれて来てくだしゃいね』




 * * *




「ここまで読んでくれてありがとう。俺、女の子になっちゃったけど、これからも頑張ってエッチするからね ♡ 」

挿絵(By みてみん)

【Canva で生成したイラスト。少女化した悠木陽翔(ユウキハルト)、19歳、無職】

念願だった妹との年越しセックスが叶ったハルト。今度こそ道を間違えずに、預金残高を死守しながら赤ん坊との再会に備えようと決意しますが、どうなることやら。


※活動報告に、AIで生成したイラストを載せています。

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