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6…未遂事件。

それから、午後の講義も終わり、私は夕方のバイト先に向かった。


店の近くにも従業員用の駐輪場はあるのだが、そこに停めると身バレする可能性がある為、私は少し離れた人通りの少ない駐輪場にいつも停めている。

今日もまた、そこに停めていた。


正直、このバイトは店長がいい人で、給料もいいからやっているだけで……本来の私なら、絶対にやりたくない仕事だ。

でもまあ…段々慣れてきたけど。


夢叶「……今日もまた、猫被り…か。」


佐藤 希も、こんな感じなのだろうか。

ファンを笑顔にする為に、爽やかな笑顔の仮面を貼り付けて、ファンの望むものを届けて……。

私も、もしかしたらそれと何ら変わりないのかもしれないな。


夢叶「…って、何考えてんの!あいつと私は違うっつーの!

あいつは…人気芸能人で、私はただの、大学生……」


と、そんな考え事をしていると…

背後から何か気配を感じ取った。


だが、その時には既に手遅れで。


夢叶「!!」


後ろから羽交い絞めにされ、鼻から口元を、布で覆われた。その布には、薬を染み込ませていたのだろう。

私の意識は、遠退いていった。


夢叶「(あっ…これ、やば……)」


抵抗しようとしたが、もうどこにも力が入らない。

そのまま、私の意識は暗転。

もう、そいつにされるがままだ……。


________________________


希「…!!」


結子「?希さん、どうかされました?」


僕は今、パートの仕事が終わった夢叶さんのお母様の送迎をし、夢叶さんの家で夕飯の支度をしていた。

夢叶さんは、バイトの日は大体バイト先で賄いを食べて帰ってくるそうだが、お母様と玲緒くんのものをと思い、支度をしていた。


だが…なんというか、虫の知らせというものだろうか。

僕は急に、嫌な気配を感じ取った。

そうそれは、夢叶さんに危険が迫っているもの…と、知らせているような。


希「……すみません、お母様。ちょっと僕、出かけてきます。」


結子「?わかりました。」


希「(夢叶さん…!)」


僕は急いで、自分の車に乗り込み、夢叶さんを探しに出た。


______________________


夢叶「……ん……」


目が覚めた。

そこは、どこかの廃屋だった。


私は椅子に座らされ、腕は後ろに縄で縛られており、足も椅子に固定されていた。

状況が、上手く飲み込めない…。

一体、どうしてこんなことに……。


縄が解けないものかと足掻いてみるが、ビクともしない。まあそれもそうだ。いくら空手を習っているとはいえ、女の筋力じゃ、縄など引き千切れるわけがない。


男「ふへへへ…今日も、可愛い子が手に入った…」


夢叶「だ、誰!?」


男「俺が誰だっていいじゃないか…。だって君は、ここで終わるんだから。」


夢叶「っ……」


と、現れたのは、覆面を被った…男。手には刃物を持っている。


夢叶「あんた、何が目的?私は金持ちの娘でも、何でもないわよ。それなのに、こんなことをするなんて…」


男「べつに、金銭目的で君を攫ったわけじゃない。…まあ、目的くらい教えてやってもいいか。

ほら、最近ニュースでよく聞くだろう?『10代から20代女性が、暴行を受けた挙句に惨殺された』って…」


夢叶「まさか…」


男「そう、そのまさか!俺がその犯人さ!

そして、君はこの俺に選ばれた…つまり、これから同じ目に遭うんだよ。」


夢叶「っ……」


必死に足掻く。暴行されないように。殺されないように。

でも、縄が解けることもなければ、犯人に手を出すことも叶わない……。


男は、段々と距離を詰めてくる。

その度に私の心拍数も上がる。

そして、犯人の男は私の着ていたシャツを破った。


夢叶「っ…!」


男「さぁて…君は、どんな声で哭いてくれるかな…?」


嗚呼…私、こんな最低な男が初めてとなって、しかもそのまま…死ぬんだ…。

どうして…どうして、こんな人生だったんだろう…。こんな最悪な結末なら…生まれてきたく、なかったな…。


ごめんね…沙月。

ごめんね…玲緒。

ごめんね…お母さん。

さようなら……


男「それじゃ、いただきまー___」


?「夢叶さんに手を出すなぁあああ!」


男「ぐほぉ!」


人生の終わりを迎える……その覚悟を決めたとこで、何者かが犯人を蹴り飛ばした。


夢叶「!あ、あんた…!」


そう、それは背が高く、綺麗な金髪で、私が鬱陶しいと思っていた人物……

佐藤 希だった。


夢叶「どうして…!」


希「虫の知らせ…とでも言うんですかね。

兎に角、何か嫌な予感がして、探し回ったんです。

良かった、間に合って……って……」


と。佐藤 希は私の方に振り返ったが、急に顔を赤面させた。


夢叶「?なんでそんな赤くなってん……っ!」


私も、気づいてしまった。

そうだ。私はさっき、そこの犯人に服を破かれたのだった。

おかげで、上半身はほぼ下着姿と言っても過言じゃない状態。


夢叶「い、今すぐ忘れなさい!こんな姿…忘れて!」


希「わ、わかってます!嫁入り前の女性のそんな姿を見るなんて…男として最低ですから…!」


そうは言うが、佐藤 希の顔から赤さが消えることがない。

よっぽど耐性がないのだろう。


夢叶「と、兎に角…警察に連絡…と、この縄を解いてくれない?」


希「は、はい…」


縄を解いてもらい、代わりにその縄で犯人が逃げないよう、逆に縛ってやった。

まあ、先程の佐藤 希からの一撃で、気絶しているから…どちらにせよ逃げられないが。


だけど、たかが蹴り1つで気絶するなんて…弱すぎじゃない?こんなのが連続暴行殺人犯だったなんて…意外だわ…。


希「夢叶さん。」


夢叶「何?」


と、私に声をかけた佐藤 希は、着ていた上着を、私に貸してくれた。


希「いつまでも…その、その格好だと、女性として恥ずかしいでしょうから……ぶかぶかですけど、僕の上着を着ていてください…。

でないとその…僕も、直視出来ませんから……。」


夢叶「案外気が利くのね。」


そんな会話をしていると、サイレンが聞こえてきた。警察が到着したのだろう。

これで、この事件も一件落着だ。


_____________________


その後、私は被害者として、警察署に連れていかれ、事情聴取を受けた。

その為、バイトも休まざるを得なくなった。


そして、佐藤 希が助けてくれたことだが……

流石にそれは、世間に公表するわけにもいかず、佐藤 希の事務所が圧力をかけたのか、私の知人が助けてくれた、ということで落ち着いた。


そして今、私は佐藤 希の車に乗っている。


夢叶「それにしても…よくあの場所だってわかったわね。」


希「僕の勘は、昔からよく当たっていたんです。」


夢叶「へぇ…」


女の勘はよく当たるというが、男の彼の勘も、案外捨てたもんじゃないらしい。まあ、おかげで助かったのだから、有難いこと。

だが、代わりに佐藤 希に借りを作ってしまった。私は他人に借りを作ることが、あまり好きじゃない。どう返せばいいのか、悩む。


希「でも、本当に良かったです。間に合って。」


夢叶「そうね…あのままなら私、殺されるとこだったし。感謝するわ。」


希「いえ、好きな人を助けるのは、男として当然のことですよ。」


そんなことを言いながら、佐藤 希は微笑んだ。

その横顔に…少しだけ、胸がときめいた。

私は芸能人だとかに興味はないが、矢張り人気俳優。女をときめかせるのはお得意なのだろう。


希「そうだ。少しだけ寄り道しませんか?」


夢叶「寄り道?べつにいいけど…」


希「とっておきの場所があるんです。僕のお気に入りの場所。そこへ、夢叶さんもいつか連れて行きたいなって、思っていたんです。

こんなことがあった後になんですけど……」


夢叶「へぇ、それは楽しみね。」


そんな、まるで恋人のような会話。

馬鹿げている。そう思うのに、今は何故だか…彼のその優しさに、甘えてみたい気がした。

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