表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/25

24話…過去夢。

玲緒「姉ちゃん、姉ちゃん……!」


 夢叶さんの弟、玲緒くんは、ベッドに寝かされている夢叶さんに縋りつき、泣いていた。


《ガラガラッ》


結子「医師(せんせい)。夢叶の、容態は……」

医者「一命は取り留めました。ですが……疲労も溜まっていたのでしょう。意識が戻りません。」

結子「……そう、ですか……」

玲緒「医者なら、何とかしろよ!姉ちゃんを、何とかして目覚めさせてよ!」

結子「玲緒!」


希「玲緒くん……。……僕の、所為です。僕が至らなかった所為で……こんなことになったんです。玲緒くん。責めるなら、僕を責めてください。」

玲緒「っ……」


莉乃「嘘……あの、佐藤 希が……」

梢「ど、どういうこと、ですかぁ……?」

沙月「………」

玄夜「まさか、こんなことになるとはなぁ……」

奏「大丈夫かな……」

瑞稀「HOPEの2人まで……一体、どうなってんの……?」


玄夜「あー……信じられないだろうが、こいつ昔から不思議な夢を見ててな。」

梢「夢……ですか……?」

玄夜「そ。そこで夢叶と、出会ってたんだ。その頃からこいつは、夢叶に惹かれてて、去年の今頃、ついに告白したんだよ。」

莉乃「じ、じゃあ……遠い親戚だって言ってた、鈴嶺 和臣の正体も……」

奏「希だよ。」

莉乃「………」

梢/瑞「「莉乃さん/莉乃!」」


 僕の正体を知った莉乃さんは、あまりのことに倒れかけた。


沙月「因みに、玄夜さんは夢叶の本当の従兄弟。」

梢「ゆ、夢叶ちゃん……凄い……」

瑞稀「でもどうして、佐藤 希が家にいるって、告白されたって私達に言ってくれなかったの?」

沙月「3人を傷つけない為だよ。ほら、3人は佐藤 希さんの大ファンでしょ?それが、自分に告白してきたなんて知ったら……傷つくし、何より私達の友情が、揺らぐと思ったんだよ。」


瑞稀「あっ……」

梢「た、確かに、驚きましたけど……」

莉乃「でも!私達の友情が、そんなことで揺らぐわけないじゃない!」

沙月「!」

莉乃「夢叶……そんな悩みを、1人で抱えていたなんて……あまりに水臭いじゃない……」


 そう言いながら、莉乃さんは瞳に涙を溜め、眠る夢叶さんの手を握る。

 女性は嫉妬深いと聞くので、確かに夢叶さんが心配していたように、友情が揺らぐものだと思っていたが……彼女達に、そんな心配はいらなかった。


希「……全部、僕の所為です。」

莉乃「和臣さ……希さんの所為でもない!悪いのは……悪いのは全部、あのチンピラ共だよ!」

梢「そ、そうですそうです!」

瑞稀「あまり気に病まないで。そんなの、夢叶は望んでいないわ。」

希「皆さん……ありがとうございます……」


 夢叶さんは、哀しい運命を背負わされた。けれど、それを超えるくらい、いい友人に恵まれていた。


玄夜「……そんじゃ、俺らは行くか。

希も、これから仕事があるだろ?」

希「あ、うん……」

沙月「また、夢叶に変化があったら、連絡します。」

莉乃「希さん達は、仕事を頑張ってきてください!」

奏「ありがとう。」

希「それじゃ……よろしくお願いします。」

「「「はーい!」」」


 僕は、後ろ髪を引かれつつも、病室から去った。


________________________________________


 あれから1ヶ月。1ヶ月経っても、夢叶さんは目覚めない。

 僕は仕事の合間を見ては、夢叶さんのお見舞いに来ていた。沙月さんが連絡してくれるとは言っていたが、それでも気になるものだ。


 花瓶に入っている花を取り替え、椅子に座る。

 本当に綺麗に眠っている。寝息が聞こえなければ、死んでいるかもしれないと間違えるほどに。


 ……僕は何気なく、夢叶さんの手を握った。

 と、その時。


希「!!」


 急激な眠気に襲われた。

 そのまま僕は、意識を手放した。


………

……………

……………………


 目が覚めるとそこは、何処かの橋の上だった。

 ここは何処だろう、と辺りを見回す。すると、橋の中頃に、中年の男と、セーラー服を着た少女がいた。


哲也「うぃ〜……ヒック。お前ももう高校生かぁ……育ったなぁ……」

夢叶「……それが、どうしたって言うの。」


 少女には見覚えがあった。彼女は……そう。夢叶さんだ。


 夢叶さんが目覚めてくれたのか?とも思ったが、そもそも僕らは病院にいたのだ。一瞬でこんな橋に移動するわけがないし、夢叶さんはセーラー服を着ている。男性も、「もう高校生か」と言っていた。

 と、いうことは……これは、夢叶さんの過去。


 そして多分、この酔っ払っている男性は……夢叶さんのお父様だ。


哲也「まあ、それでもまだそういう仕事は、させられないなぁ。出来るのなら、俺の酒代に出来たんだが……」


 そういう仕事……店長さんが、夢叶さんから聞いたという、如何わしい仕事のことだろう。

 段々とわかってきた。これは、夢叶さんの過去で、橋にいるということは……


夢叶「あんた……結局、自分の酒代のことしか考えられないの!?最低……」

哲也「あぁ?酒は俺の生きる糧なんだよ。悪いか?」

夢叶「悪いに決まってるじゃない!少しはまともになろうとか、思わないわけ!?昔のように……また、頑張ろうとか思わないわけ!?」

哲也「っ……わかったような口利いてんじゃねぇ!』


 そう言うとお父様は、夢叶さんに掴みかかった。夢叶さんも、お父様を掴む。


哲也「いいか?この世には、どうにもならねぇことだってあんだ……おめぇはまだそれに、気づいてないだけなんだよ!」

夢叶「そんなの、あんたの頑張りが足りないだけじゃない!

確かに、どうにもならないこともあるかもしれない……だけど、頑張って頑張って頑張れば、どうにかなることもある!」

哲也「うるせぇ!」


 お父様は、夢叶さんの頬を殴った。


希「夢叶さん!」

夢叶「っ……」


 僕は、夢叶さんが心配で声を出した。だが、何の反応も見られない。ということは、僕の声は届いていないようだ。

 しかも、心配で膝をついた夢叶さんの肩に触れようとしたが……触れられなかった。まるで、僕は幽霊のように、透けたのだ。


夢叶「何よ……あんた、お母さんが、どれだけ頑張ってるか、知らないでしょ……。

私達姉弟が、どんな思いで……あんたを見てきたか、思ってきたか……知らないでしょ……」

哲也「ああ、知らねぇな。」

夢叶「っ……!』

哲也「俺は俺だ。誰が何と言おうと、今の生活をやめるつもりはねぇ。

酒だけだよなぁ。俺をわかってくれるのは。」


 そう言いながら、お父様は愛しそうに酒瓶を抱く。

 すると、夢叶さんは……


夢叶「うわあああああああっ!!」


 泣き叫びながら、もう一度お父様に掴みかかった。


夢叶「思い出してよ!元に戻ってよ!昔みたいに……優しいお父さんに、戻ってよぉ!!」


 必死にお父様を説得しようとする夢叶さん。悲痛な叫びだ。


希「夢叶さん……」


 だが、そんな悲痛な叫びが、思いが届くことはなく。


哲也「んなもんとっくに忘れちまったなぁ!今の俺が、本当の俺なんだよ!」

夢叶「そんなにお酒の方が大事!?私達家族の方が、大事なんじゃないの!?

お父さんにとって私は……私達は、そんなに要らない存在だったの!?」

哲也「……そうだよ。」

夢叶「……!」

哲也「俺にとって……あの女も、お前も、玲緒も……邪魔な存在だ。」


 冷酷に、淡々と告げられる、現実。もう止められない。

 どこから歯車は、狂い出したのだろう。それすらもわからないほど……彼らは、狂い出していた。

 夢叶さんは、限界が来たのだろう。


夢叶「っ……うぁああああっ……!!」


 夢叶さんは、お父様を橋のコンクリートで出来た手摺に追い詰めていた。

 まさか、そんなことになるなんて、思わず……


哲也「おい、おま……それ以上はやめ____」


 お父様の言葉が途切れた。と、同時。

 手摺が、『壊れた』。


哲也「うわぁああああ!」


 お父様がすぐさま、夢叶さんを掴んでいた手を《離し》、橋の下へ落っこちていった。


夢叶「!!わ、私……私っ……!」


 夢叶さんはすぐに下を覗き込む。

 お父様は、岩に頭をぶつけたのだろう。血の海が出来ていた。


夢叶「ち、違う……私、私じゃない……」


 夢叶さんは動揺が隠せず、兎に角……その場からすぐ離れた。

 ひたすら走り、走って走って走って走って……家へと辿り着いた。


結子「あらあら……そんなに慌てて、どうしたの?夢叶。」

夢叶「はあ……はあ……」

結子「……夢叶?」


 顔面蒼白にしていた夢叶さんに、すぐお母様は気づいた。何かあったのだと。


結子「夢叶、どうしたの?何があったの?」

夢叶「……お母さん、どうしよう……私、私……」

結子「大丈夫よ。ゆっくり、ゆっくりでいいから、話して?」

夢叶「私……お父さんを……」

結子「お父さんを?どうしたの?」

夢叶「……橋から……突き落としちゃった……」

結子「!!」


 お母様は驚き、目を見開く。無理もないだろう。娘が、実の父親を橋から突き落としたなどと言えば。


夢叶「違うの!私……私、そんなつもりじゃ……!突き落とすつもりなんて、なかったのっ……!」

結子「……お父さんは?」

夢叶「わかんない……でも、頭から凄い血が……起き上がらなかったし……」

結子「………」

夢叶「どうしよう、お母さん……!」

結子「……大丈夫。」

夢叶「!!」


 と、お母様は泣き喚く夢叶さんを、優しく包み込んだ。

 そして……驚くことを言う。


結子「私が、警察に全て説明するわ。

そう……あの人は、『老朽化が進んでいた橋の手摺に凭れ掛かって、酔っ払っていたのもあり……誤って落っこちた』のだと。」

夢叶「!?で、でもそれ……偽証で……もしバレたら、お母さんが……!」

結子「大丈夫よ。バレないわ。だって本当に、あの人は酔っ払っていたんだもの。

それに……あの橋が老朽化が進んでいたのも、本当よ。でないと、女の夢叶に成人男性を落っことせる力なんて、あるわけないんだから。」

夢叶「お母さん……」

結子「いい?これは、お母さんと夢叶だけの秘密。誰にも……話しちゃいけない。わかった?」


 あまりに真剣な顔で、でも笑顔でお母様は……指切りを夢叶さんと交わした。


夢叶「お母さん……ありがとうっ……!」


 僕は、橋の下へと行ってみた。もう息絶えているであろうお父様のもとへと、駆け寄ってみる。


哲也「……かはっ……」

希「!!」


 すると、驚くべきことに、お父様はまだ息をしていた。もし、もし僕がここで実体を持っていて、救急車を呼べたなら……お父様は助かるのに。

 ……でも、助かったら?また夢叶さんの家はめちゃくちゃになるのでは……?


哲也「……夢叶……すまなかった……」

希「……!」


 もっと驚くこと。

 お父様は、夢叶さんの名前を呼び、謝罪の言葉を口にした。


哲也「俺は……お前の、父親なのに……こんな、クズで……。

どうか……どうか、お前は……お前達は……俺のことなんか忘れて……幸せに、なってくれ……。

それ、が……俺の最期の、のぞ、み……」


 それだけ言うと、お父様は今度こそ息絶えた。


希「……お父様……」


 もし、もし夢叶さんが、家へと向かわず、橋の下にいるお父様のもとへ行っていたなら?そしたら、夢叶さんが罪を背負っているなんて、思わずに済んだかもしれない。

 でも、この言葉を聞いて仕舞えば、もっと罪深いと思ってしまうかもしれない。

 どちらも有り得そうで、有り得ない。だって、そんな現実は、もう迎えられないのだから。


 あれから警察が現場検証をし、夢叶さんのお母様の証言で、お父様は事故死と判断された。

 

 ……夢叶さんは、花束をお父様の亡くなった場所に手向け、手を合わせこう呟いた。


夢叶「……お父さん、安心してね。お母さんのことも、玲緒のことも……私が、守っていくわ。

だから、お父さんは……安らかに眠って。」

希「……夢叶さん……」


 店長さんから、話は聞いていたが……こんなことがあったなんて。

 これもきっと、幼い頃よく見ていた白昼夢だろう。だが、普通の白昼夢、夢じゃない。所謂過去夢だ。それがどうして、今見れたのかはわからない。

 だけど……。


 ……夢叶さんが目覚めたら、今度こそ伝えよう。

 これは正当防衛で、夢叶さんが悪くなかったことも。

 お父様は、夢叶さん達に謝罪していたことも。

 そして……夢叶さんは、幸せになっていいのだと。


 僕が絶対、夢叶さんを幸せにします、と……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ