光の軌跡
幸せな空想を描いた物語は現実を軽々と乗り越えて
心躍る音楽はすべてを忘れさせてくれた
生きていることが苦しみであればあるほど
物語と音楽の喜びに身を委ねる居心地の良い世界を求めて
それがほんの束の間のささやかな幸福と知っていても
多くの苦しみに満ちたこの世界を生きなくてはならないのだから
むしろ苦しみのない死こそが生きる苦しみから解放してくれる日を
多くの人の姿があるはずのこの巨大できらびやかな廃墟の暗闇に
ぽつんと取り残されたままうずくまって待ち続けるなら
むしろこの暗い世界に生きることを
多くの苦痛に満ちたこの世界に立ち上がって生きる覚悟を
一歩踏み出す毎に足の指の骨が一本ずつ折れて
そのうちに足首が砕け、臑の骨が割れても、それでも歩き続ける覚悟を
むしろこの世界のすべての苦しみを引き受けて立つ覚悟を
たとえすべての人々に裏切られたとしても
ただ一度でもこの心と体をあの美しい鐘のように天に捧げて
心躍る音楽のようにすべての人々の幸福を想えば
すべての人々の幸せを願うことが幸福な空想の物語だとしても