横断歩道を渡ろう!
「みんなー! こーんにちはー! ヒナコお姉さんだよー!」
ステージの上で元気いっぱいに挨拶をする天真爛漫なこのお姉さんは、ヒナコお姉さん!
日常生活のルールやマナーについて、丁寧に教えてくれるよ。
「こ、こんにちはー、アシスタントのマナブです」
このお兄さんはマナブ!
死んだ魚の目をしてるけど、ちゃんとした社会人だよ!
「早速だけどマナブ君。マナブ君って、車を運転したことがあるかな?」
「ありますよ。通勤でよく使うので」
「そうなんだ! ……ちなみに普通車?」
「え? ま、まぁ」
「そっかー! ……若いのに生意気ね」
「え? 今なんて──」
「そんなマナブ君に今日はピッタリなお題だよ!」
ヒナコお姉さんは大きなホワイトボードを引っ張り出してきたね。
どうやら今日のお題は「交通ルール」みたいだ。
「今日は交通ルールについてお勉強。マナブ君は交通ルールはちゃんと守ってるかな?」
「自分では守ってるつもりなんですが、たまに忘れちゃうことがありますね」
「だったらまずは簡単な横断歩道について学ぼうか」
ヒナコお姉さんが手を叩くと、ステージが横断歩道へと早変わり。
「マナブ君、横断歩道を渡る時はどうするかわかってる?」
「もちろんです!」
まずはマナブ君が横断歩道を渡るのに挑戦!
信号機がないけど、うまく渡れるかな?
「渡る前に手を挙げて、右を確認して、次に左を確認、それでまた右を確認して、車が来ていないことを確認したら手を上げながら、横断歩道を渡る」
実演したマナブ君。
ヒナコお姉さんの採点は?
「大正解! すごい! 百点満点! ゴミムシのマナブ君でもやればできるのね!」
「そんなことな──え、今ゴミムシって言いました?」
「言ってないよ!」
「いやでも」
「言って……ないよ?」
「あ、はい」
「じゃあ、マナブ君に質問。車を運転している人にも、横断歩道のルールがあるけど、知ってるかな?」
「もちろんです。横断しようとしている人がいれば、止まって、歩行者を先に渡らせるですよね」
「マナブ君、またまた大正解! ……チッ、仕事とんじゃねぇよ」
あらら、ヒナコお姉さんはご機嫌斜めだ。
番組の進行を読めないなんて、ダメだぞゴミムシ!
「え、俺が悪いの?」
「マナブ君はちゃんとそのルール守れてるのかな?」
「えーっと……たまに見落としてしまいますね」
「ダメダメ! ルールは守らないと」
「す、すいません」
「でも、全部が全部運転手が悪いわけじゃないからね? 歩行者も、ちゃんと自分が渡りたいって、運転手に伝えないといけないから。じゃあどうすればいいか、ヒナコお姉さんが教えてあげる」
今度はヒナコお姉さんが実演してくれるみたいだ。
「まずは、横断歩道の前で待つ」
「あの、ヒナコお姉さん。前に出過ぎじゃ。路側帯に足かかってますよ」
「これぐらい前に出ればわかるでしょ?」
「そうですけど」
「そして、ここからが重要なんだけど、さらにアピールする必要があるの」
「あっ! さっき俺がしたみたいに手をあげるんですね!」
「ううん、じっと、右側の先頭の車をじっと見つめるの」
「え? 車を?」
「もっと正確に言うなら運転手に、冷ややかな目を向ける。ここまでしたら見えてるよな? 今横断歩道を横切ったら、ぶつかるかもしれないぞ? と、運転手にプレッシャーをかけるの。いい? 止めてもらおうなんて考えちゃダメ。止めるの」
「ご、強引すぎるんじゃ。それに、それだと反対車線の車は止まってくれないんじゃ」
「大丈夫、今度は反対車線に向かって、『反対車線が止まってるのに、止まらないわけないよな』と言いたげな表情をすれば止まるから」
さすがヒナコお姉さん! それなら安全に渡れるね!
「いや、それは違うんじゃ」
「じゃあ! 実践してみよう! 私が歩行者をやるから、マナブ君は用意した車を運転してね」
「え、あ、本当だ。いつのまにか車がある」
早速マナブ君は車に乗って、エンジン起動。
ヒナコお姉さんがいる横断歩道に差し掛かるよ。
「うっわ、目つき悪っ。ちゃんと止まらないと」
マナブ君、横断歩道の前で減速してピタリと止まれたみたい。
これでヒナコお姉さんさんも安全に渡れるね。
「ん、ヒナコお姉さん? なんでこっちに来てるんだ?」
「……ッテェな」
あ! 大変だ! ヒナコお姉さんと車がぶつかっちゃった!
マナブ君どうしよう。
「いやいやいやいや! 今ヒナコお姉さんがぶつかってきたよね!?」
「あーあ、これ骨が折れたわ」
マナブ君がヒナコお姉さんを怪我させちゃった!
ちゃんと謝らないと!
「お、俺のせいじゃ」
「イタタ、腕が痛いなー」
「わ、わかりましたよ。すいませんでした」
「謝罪で怪我は治らないよね? 今日帰りに病院行くから、治療費」
「え、いや、だから、俺が当てたわけじゃ」
「でも、証拠がないよね? この車ドライブレコーダーもついてないし。いいんだよ? 私は別に警察に行っても」
マナブ君! ヒナコお姉さんは本気みたいだ!
ここは誠意で解決しなきゃ!
「え、払うの!?」
「あーあ、警察行かなきゃなー。アシスタントも探さないとけないかもなー」
「くっ……二万で勘弁してください」
「ありがとう! じゃあ今日はこれでお終い! みんなもこうならないように交通ルールはちゃんと守ってね! バイバーイ」
〜翌週〜
みんなー、こんにちはー!
ヒナコお姉さんとルールを学ぼうの時間だよ!
みんなに残念なお知らせだ。
ヒナコお姉さんが事故で入院しちゃったんだ。
どうやら、パチンコ屋の前の横断歩道で、左右の確認をせずに渡っちゃったみたい。
今日はマナブ君と僕の二人でやっていくよ。
今日のお題は「入院している人への贈り物のルール」。
マナブ君、今日ヒナコお姉さんのお見舞いに行くって聞いたんだけど、何を持ってくつもりかな?
「植木鉢」