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遠い夢の世界で  作者: ロックベル
冒険への入り口
3/11

第三話 疑惑

相変わらず自分の記憶だけ思い出せない主人公アルト。そんな彼に耳を疑う情報が入る。

 ヘリがゆっくり降下していき、大きな岩が積み重なってできた壁が見える。あまりにも不自然だ。こんな大穴を作る技術は現代人には可能かもしれないが、かつて日本国で戦国時代にあったとされた石造りの城のように、岩を壁に積み重ねることはしない。そんな事は技術と時間を考慮しても無理だ。ましてやここ数百年でできたばかりの新大陸だぞ、ありえない。そもそもなぜ穴の周辺に森ができているんだ?長年海の底に潜っていたはずなのに…


「難しい顔してますね、もう少し気楽にいきましょう。」


 そう隣の席から声をかけるのは白衣を着た男、さっき大真と喧嘩していた人だ。藍色の髪が営業マンらしく整えられ、よく見ると白衣の下にすらりとした長身にあう全身藍色と白色のストライプ柄スーツを着て、真っ赤なネクタイをしている。この隊の中でも一番目立つ格好であり、蔓延まんえんの笑みを浮かべているのが気になる。それに顔がいい、というかこの隊本当に探検する気があるのか


「申し遅れました緑路りょくじアルトさん、私の名前はブルキナファソ=ガガーリン=イプルス。ブルキナと気軽にお呼びください。」

「あ、こちらこそどうも」


 名前までぶっ飛んでいるのだろうか。自己紹介をするということは初対面の人物なのだろう。自分を知らないということは、記憶が欠けた今ある意味質問しやすい。それに良い人そうだ、大真との関係を聞いてみよう


「先ほど大真と喧嘩をしていましたが、仲が悪いのですか?」

「これはお見苦しいところをお見せしました。彼とは大学時代からのライバルです。彼の態度は只のお調子者ですが、頭脳には光るものがあります。だからこそ奴が腹立たしい…」


 突然しかめっ面をして黙ってしまった。なんだか彼らの間の因縁は深そうだから、あまり突っ込まないでおこう。次の質問を投げかけてみる。


「ところであなたはなぜこの探検隊に入ろうと?」

「隊長であるドクさんが新大陸調査の仲間にと声をかけてきたことがきっかけですねぇ。私自身化学者なので最初はお断りしたのですが、なかなか彼が折れなくて…今となっては私のほうがこの新発見に心躍らせていますよ。」

「つまりここにいる皆さんは隊長から声をかけられた人なんですか?」

「そうですねぇ、ドクさんが気に入った人に声をかけて集まった人たちかと。

あなたも声を掛けられて新大陸につられたのでは?」

「いやぁ、まぁそうなりますね。。ハハハ」


 取り敢えず記憶が飛んでいることは言わないでおこう。


「あなたがこの壁に疑問を持つのも無理はありません。この岩は一万年前にできた花崗岩とされていますが、それ以上はわかっていません。一体誰がなんのために作ったのか、非常に興味深い」

「流石ブルキナさん、しかし洞窟内に隠された祭壇といい本当に謎ですね。」

「ええ、祭壇までの道はわかってはいますが、行方不明事件以来誰も奥まで立ち入って居ません。私たちに解明が期待されていますね。」


 いつの間にか外が暗くなっている。地下何kmぐらいだろう。ヘリの深さを示すホログラム装置を確認する。まだ地上からの深さは3kmだ。かなり降下速度はゆっくりだ。


「ところで部隊が残したメモはどこで見つかったんですか?」

「地上の遺跡の中に残されていたと聞いています。しかも奇妙なことにアナログ・デジタル機器のみ全て無くなっていたそうです。」

「余りにも不自然すぎる。やはり何者かに不都合な情報や施設でもあるのか…しかしメモは残されているとなると。。。」

「恐らくロマノフ連盟の仕業でしょう。彼らは常に戦争の機会に目を光らせていますからね…メモもあえて残した、もしくは偽造した可能性は高いですね。」


 ロマノフ連盟は常に連合相手に因縁をつけることで有名だ。一昨年はアラブ自治区を代表する投資銀行が経営権を取られたことは耳にしている。それにこの連盟の元となった国のせいで、世界中の国と呼ばれた組織が連合を組まざる負えない歴史を作った。


「取り敢えず私は調査のための化学試料の調合を見てきます。それでは」


 ブルキナは座席から立ちヘリの後方にある貨物室へと歩いていく。俺も大真を探しに行くか、さっきまで興奮してたしコックピットの付近にいるだろう。そんなことを思いながら席を立ち前方デッキへと歩いていくと、副隊長が歩いてくる。


「アルト、少し話しがある。ついてきてくれ」


 何だろう。彼女についていくと狭い個室に入り、鍵を掛けられる。え、嘘でしょ。吊り橋効果って聞くけどこれは


「君に来てもらったのは大真の事だ。彼のパートナーが危篤状態なのは知っているな。」


 …初耳だ、さっきまであんな態度をとってたんだぞ。


「去年彼のパートナーが故郷オストニア地区に帰っている時に、突如隣接する非連合加盟地区ドニエステルから核が落とされ、彼女の体は放射能にさらされた。彼女を助ける医療をアジアン・アメリカン・ESF各連合では提供できないが、ロマノフ連盟なら度重なる核実験により作られた除染機で治療できるという噂がある。」

「まさか…」

「彼にロマノフのスパイの疑惑がかかっている。」

「そんなこといくら何でも短絡的すぎます。それにあいつはそんなことする人間じゃない。」

「人は情には勝てない。だからこそ疑わねばならない時がある。私は軍に居る時沢山その面で血を流し、流させた。だからこそ一番親しい者から疑え。彼が2週間前にロマノフの大使書記官と接触したことも極秘に調査済みだ。」


 あまりにも非情な話だ。到底信じられないが、大真が彼女を大切にしている事は痛いぐらいわかる。しかしこの話も余りに出来すぎていて疑わしい。


「そのお話を知る方は?」

「私と隊長以外は知らない、くれぐれも内密に頼む。アルトは彼から目を離さないで行動を監視してくれ。お互いにとって辛いだろう、すまない」


 彼女が頭を下げる。


「わかりました。しかし再度言わせてください、彼はそんな男ではありません。」

「ありうがとう、恩に着るよ」


 彼女が頭を上げ少し微笑み、片目にかかった髪のせいで一層可愛く感じてしまう。本能には逆らえないな。


「失礼します。」


 部屋を出て大真に会いに行く。取り敢えず彼女の事を本人から聞かねばならない。

案の定6人座席のコックピットの後ろに位置する機械盤とホログラム装置をを弄って遊んでいた。


「なるほど…そういう事か…このヘリについている核融合ブースターは最新なんだな。おもしれぇ、研究所の連中捕まえて聞いてみるか」

「おい、お前に話がある」

「なんだよいいとこなのに」

「お前の彼女は今何してるんだ?」

「病院だよ。ちょっと具合が悪いみたいでな」

「どういった症状だ?」

「…放射能汚染だよ。今回の探検から出る報奨金を、彼女の治療費に充てる。連合は最新の治療を約束してくれた。医療の事は悔しいが専門外だ、頼るしかねぇ」

「。。。そうかありがとな話してくれて」

「なんてことねーよ、お前なら信用できる。でかい借りもあるしな。

所でよこの装置のここがおもしろくてな」

 

 その後は適当に話を流し、彼と別れて席に戻る。やはりスパイなんて信じられないが少し気にはなる所がある。それに記憶がないから、本当は今のうちにやりたい事が沢山あるが、少し疲れた。眠ろう


 


 

ここまで読んでくれてありがとう!評価して頂けるとモチベに繋がるので嬉しいです!

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