第二話 仲間との出会い
何かか思い出せそうで思い出せない主人公。そして徐々に現れる個性的な仲間たち
「おい、さっさと行くぞ」
せっかく何か大事なことを思い出せそうなのに邪魔された。気分が悪い
「あー、昔から機嫌悪くなるとそういう顔すぐするよなぁ。でも副隊長は独り占めさせないぜぇ」
ニチャついた顔が気持ち悪い。大体俺なんかしがない一研究員なんだ。彼女は研究員、女性としても皆の憧れの的、高身長だからこそ苦労する部分もあるだろうがむしろそこがいい。
「そういう大真こそ彼女がいるんだろ。今度副隊長に目線が行っていること言いつけるぞ。」
「すまん、それマジ勘弁」
大真はこんな軽いノリだが実はかなり優秀だ。日本地区にとどまるのが面白くないと言って高校卒業と同時に地区を単身飛び出し、アメリカン連合内ブラジリアン自治区で一番の大学を首席で卒業している。その後物理学とアナログ考古学を混ぜ合わせた研究をするため大学院を中退し、連合が運営する研究機関に自分を売り込むというイカレっぷりだ。
「彼女が本当に大事なんだな、普段あんなに軽いのにな」
「やめてくれよ、今まで会ってきたやつの中でもリリアはレアなんだよ。リリア以外に面白い奴なんてお前かこの部隊の連中ぐらいだしな。そういうお前さんも大学つまんなくて一回やめて2年放浪してたんだろ。大したもんだぜ」
全く思い出せない。自分もなかなかのイカレ具合だな。てかなんでこんなこと知ってるんだ
「アルトがいなければ俺は今頃日本地区でせこせこ働いてるんだろうなぁ。特に高校の電気を俺らのいたずらで1週間停電にさせた時なんかもう最高だったぜ。」
「おいおい、そんなことしてたのかよ俺たち…」
そんな無駄話をしながら探検隊の皆と歩いていると穴の淵にたどり着いた。大穴の淵には石造りの堤防のようなものがぐるりと囲い、それぞれ等間隔に石柱が並んで天井の大理石らしきものを支えている。奥に見える山の斜面にある巨大な川が、穴に向かって流れることで巨大な滝を対岸に作っているのが見えた。
「あの滝は今新大陸で見つかっている中でも本当に大きい。一応穴の底に溜まった水が目的の洞窟内に流れ込んでいることは確認済みだ。
しっかしここらの地形は頭に入っていても実際見ると迫力があるなー」
「あ、たいちょ。縦に30kmもある大穴なんてほんとビビるっていうか、尻込みしますね。」
「そうだな、あれだけの水量を飲み込む洞窟も謎だらけだ。おまけに地底探索用のソナーが20km地点から全てはじかれるんだからな。最初に潜った人に尊敬と畏怖の念しかないな。」
真ん中に割り込んできた隊長の体格は大きい。180cm位の身長に筋骨隆々の体つきをして、金と黒交じりのドレッドヘアを生やしてサングラスをしている。見た目はただの怖い人だが、実は隊の中でも一番優しい。アメリカン連合のアマチュアアメフトで一線を張りながら、新大陸に関わる研究活動をしている人だ。研究は地学、工学、化学、文学と分野を問わず、過去に人類で初となる徒歩での新大陸横断を果たしている。超人とは彼を指すのだろう。隊長の名前はたしか…
「現状使える数が少ないブースターヘリは絶対に壊すわけにはいかん、特に大真は暇さえあればいじりだしそうだしな。ただでさえ新大陸をめぐり連合同士で戦争がまた始まりそうな中、こうして垣根を超え冒険できるチャンスは貴重だ。お前らの得意とする分野を存分に生かしてくれ。フハハハハ」
そう言って俺たちの肩を叩く。嫌な気分はしない、まるで父親のような存在だ。それは隊の皆同じだろう。穴の淵で待っていると強烈な風と轟音を鳴らす乗り物が現れた。
「こいつはすげぇ!軍に軒並みヘリを独占されちまって中々お目にかかる機会はなかったけど、ホログラムで見た通りカッケーなおい」
一人馬鹿みたいに大真ははしゃいでいる。それを隊の中から見ていた四角い眼鏡をつけ、場違いな白衣を纏った人が何か言う。
「お前…失礼、あなたみたいな人がなぜここにいるのか本当に疑問ですねぇ。大方隊長のコネでしょうかねぇ。」
「うるせー三流化学者が何言ってやがる。バーカ」
「先ほどあなたは私に試料を弄るしか能がないとおっしゃいましたが、根拠がわかりませんね。試しにあなたの得意とするキックボクシングで決着をつけてあげてもいいですよ。」
「上等だ、ヘリに乗る前にぶっ倒れても知らねーからな」
この2人は仲が悪いのか?早く止めなきゃと思っていると、副隊長がヘリから降りてくる。
「あなた達本当に仲が悪いわねぇ、これはキツイ躾が必要ね」
'パァァン' 強烈な蹴りが連続で繰り出され、到底人から出ない音が響き二人が吹っ飛ぶ。これ生きてるのか…
「"すびばせんでしたぁ"」
二人の息ピッタリな声が聞こえる。蹴りを食らって脇腹を抱える二人はこうしてみると仲良く感じる。良かったな大真友達ができて
「さぁ元気が有り余る諸君ヘリに乗り込むぞぉ!」
隊長が叫び皆が乗り込む。このヘリは過去にホログラムで見たオスプレイという乗り物に似ていて、プロペラと最新の核融合ブースターがついている。実際はそれの倍以上の大きさを誇り、側面から伸びた6つの尾翼の先に、上向きの羽と下向きのブースターが一つにまとまってついている。機体の前後にも小さなブースターが2つずつ横向きに取り付けられていることから、プロペラかブースターのどちらか一つが動かなくなっても、機体が動けるようにしているのだろう。
「ワクワクするねっ、私はディーナ。宜しくねアルトくん!」
ヘリに乗り込むと変な小学生から話しかけられる。なんで小学生が隊にいるんだよ
「あ、あぁ宜しく。ところで君は、」
「あたしクローン体だからこの体つきなの。でも頭脳と素早さはピカ1よ!」
クローン体…脳移植により体を自由に入れ替える手術が、軍により極秘に行われていたことは聞いていたが、実際に見てみると驚きだ。
「ディーナ君の元の体は…」
「あーそうね、気になるよねやっぱり…
14の時に地雷踏んでなくなっちゃったの。でも今はこの動きやすい体が手に入ったし、あたしがしたい動きに体がついてくるのが何よりの利点ね!」
「じゃ君は今何歳なんだ」
「それは内緒!また気が向いたらね!」
そして彼女はアナログ機器であるスマートフォンをポケットから取り出して触り始めた。やはり探検家は変人が多いものだ。
皆がヘリに乗り込み、穴の底へと向かう。一体何が待ち受けるのか…
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