07 またしても仲間割れ
07 またしても仲間割れ
モナカはクラスメイトの女子を引きつれ、新築ツアーを行なっていた。
「ご覧ください、みなさん! この玄関を!
扉は両開きで、広くてとっても出入りがしやすいです!
さすがはレオくんですよね! すばらしいお宅です!」
彼女は家のひとつひとつを褒めそやし、そのたびに俺の名前を出して讃えている。
ちょっと気恥ずかしいが、そこまで喜んでもらえたなら良しとしよう。
気付くと俺の両隣には、モナカの付き人のオネスコとシノブコがいた。
「あなたの作った家なんて、絶対に論外だと思ってたのに」
「にん。地獄の犬小屋みたいなのができると思ってたでござる」
「他のクラスのほとんどは、小さな小屋をひとりにひとつ。
下位ランクのクラスなんて、ふたりにひとつなのよ?
でもあなたの建てた家は、うちのクラス10人全員で使えるほどに、大きくて立派だなんて……」
「ああ、そのことか。
モナカのクラスは全員女子だから、そのほうが安全だと思ってな。
お付きのお前らも、そのほうが安心だろう?」
すると白黒コンビは、「クゥ」と歯噛みする。
「あなたがそんな配慮のできる人だったなんて……! くやしい……!」
「にん。敵ながら、あっぱれでござる」
「でも、調子に乗るんじゃないわよ!
あなたのこと少しは見直したけど、それは馬の骨から、馬になったくらいなんだからね!」
「にん、それも駄馬でござる」
「いちおう、お礼だけは言っておくわ!
でもこれ以上はモナカ様に近づかないで! いいわね!?」
「にん。次に会ったときは、殺し合いでござる」
「行きましょう、シノブコさん! あの家に変なものが仕掛けられてないか、チェックしないと!」
オネスコとシノブコは一方的に言い捨てたあと、フンと俺に背を向ける。
しかし俺の建てた家に入るなり、ふたりして夢見心地になっていた。
「うわぁ、素敵な香りぃぃ……!」「とっても癒されるでござるぅぅ……!」
俺を目の敵にしている女子を、ウットリさせたことに関係があるかどうかはわからないが……。
この瞬間、俺はレベル4になっていた。
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レオピン
職業 大工
LV 3 ⇒ 4
HP 2010
MP 2010
ステータス
生命 201
持久 201
強靱 1
精神 1
抵抗 1
俊敏 201
集中 201
筋力 201
魔力 1
法力 1
知力 1
教養 201
五感 201
六感 1
魅力 1
幸運 1
器用 800 ⇒ 900
転職可能な職業
生産系
木こり
鑑定士
大工
探索系
レンジャー
戦闘系
戦斧使い
NEW! ニンジャ
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「きぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
そして急に絶叫が聞こえてきたので、俺はドキッとしてしまった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
時は少しだけ戻る。
1年20組のリーダー、ヴァイスは冷静に現状を分析していた。
――開拓系の学園は、初期は掘っ立て小屋で始まるのが普通だとされている。
なぜならば、資材も道具もないし、みんなレベル1なんだからな。
中学の授業でも、そう教わったから、なんら気にすることはない、気にすることはないんだ……。
しかし、眼鏡の右のレンズに2階建ての家が映りこむたび、その沈着さはメッキのように剥がれていく。
――それなのになんだ、アレはっ……!?
小屋などではない、確かなる『家』じゃないか……!
あのクラスの建物が作れるようになるのは、みなのレベルが10以上になってからのはずなのに……!?
そして、眼鏡の左のレンズにみすぼらしい家が映り込むたびに、彼は震えた。
――それに比べ、なんだ、僕の小屋は……!?
上級職でも有数の、『賢者』であるこの僕が設計したんだぞ……!?
それなのに、それなのにっ……!
なぜ、無職のレオピンよりも、遥かに劣る見てくれなのだっ……!?
不意に、背後からどやどやと足音が近づいてくる。
一団は、ヴァイスのすぐ後ろで立ち止まると、驚きの声をあげた。
「うおっ、なんだあの家!?」
「すごい! マジモンの家じゃん!? 誰が作ったの!?」
「家のそばにいるのはレオピンじゃないか!
まさか、レオピンがあれを作ったの!?!」
「うっそぉ!? 無職のレオピンが、なんであんな立派な家を!?」
「そういえば聞いたことある! レオピンって大工の手伝いをしてたことがあるんだって!」
「おい、ヴァイス! これはどういうことなんだよ!?
俺たちはお前の言うとおりに材料を集めて、家を作ったんだぞ!?」
「それなのに、なんでこんなボロっちい小屋しかできないの!?
レオピンの家とは大違いじゃん!」
「やっぱり、レオピンを追放したの、間違いだったんじゃ……!」
「う……うるさいっ! 僕は『賢者』なんだぞ! 僕の判断はいつだって正しいんだ!
小屋が貧相なのは、僕のせいじゃない! キミたちの作り方に問題があるんだ!」
「なんだと、このぉ! 俺たちが悪いってのかよ!?」
「最低! 人のせいにするだなんて!」
一触即発の1年20組。
こんな時、いつも止めてくれたあの人は、すでにいない。
しかし彼は思いも寄らぬ形で、このいがみあいを仲裁した。
……どんがらがっしゃぁぁぁぁぁーーーーーーーーんっ!
ドミノのように連鎖的に倒壊していく、1年20組の掘っ立て小屋。
「あっ……あぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
一瞬にして消え去った住まいに、かつてのクラスメイトたちの目の前は真っ暗になっていた。
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