50 眷獣のいる家
50 眷獣のいる家
ヴァイスは意識を取り戻し、タンカに乗せられながら叫んでいた。
「ぶ……ブラックパンサー、飼い主に襲いかかるだなんて、お前はペット失格だっ!
いいや、『追放』だっ! 殺処分されたくなかったら、僕の前から消えろっ!」
しかしブラックパンサーは相変わらずガン無視。
モナカとコトネにお腹を撫でられまくって、ゴロゴロくねくねしている。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!! 覚えていろよぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ!!」
全身が引き裂かれるような絶叫とともに、ヴァイスは校舎の中へと消えていく。
途中でどこに連れて行かれるのか、ようやく理解したようで、
「やっ、やめてくれ! 保健室にだけは連れて行かないでくれぇ!
これ以上ランクダウンしたら、僕は、僕はぁっ……!
ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
賢者の悲鳴が鳴り渡るなか、教頭もそそくさと校舎へ戻ろうとする。
「さーて、わたくしめはランチにするざます」
「ちょいまち」とその肩が掴まれる。
「な、なんざますか? ドマンナ先生」
「賞金の授与が、ドーンと終わってないじゃないですか」
教頭は「ぎくぅ!」と口に出すほどにうろたえる。
「ななっ、なんのことざますか?」
「ズゲッととぼけないでください! 私が認めた生徒に、バーンと賞金をあげることになっていたでしょう!?」
「ドマンナ先生には説明したざます! あの賞金は、ヴァイスくんに授与するためのもので……!」
「ええ、私は落ちこぼれの生徒をビシッと懲らしめるために、協力してくれと言われました。
落ちこぼれの生徒と聞いていましたから、ドーンと引き受けたんです!
でもレオピンくんは落ちこぼれじゃない、誰よりもズバッと優秀な調教師でした!
だから私はレオピンくんにスパッと賞金をあげます! もし渡さないというのであれば、ポロッと教育委員会に……!」
「ギャアッ!? そ、それだけはやめてほしいざます!
ぐっ……ぎぎぎぎっ……! わ、渡すざます! 渡せばいいんざましょぉぉぉっ!!」
それから急遽、俺への賞金授与式が行なわれた。
教頭は無念すぎるのか、目はすっかり血走っていて、今にも血管が切れそうなほどに歯をくいしばりながら、俺に目録を差し出した。
「ギ……! ギ……! ギ……! こ……この恨みっ……晴らさずには……いられない……ざますっ!」
それはとても祝福の言葉とも思えなかったし、目録を受け取ろうとしても教頭はなかなか手放さなかった。
そこまで俺にあげたくないのなら、別にいいやと思ったのだが、ドマンナ先生が許さない。
「もう、教頭っ! いいかげん観念して、スパッと離しなさいっ!
モナカさんとコトネさん、それにレオピンくん、そっちをグイーッと引っ張って!
私はこっちでマークくんと、ズイーッと教頭を引っ張るから!
ブラックパンサー! キミは教頭の足を、ガブーッって噛んで押えてて!」
4人と2匹がかりで手分けして引っ張り、ようやく目録をもぎ取った。
たぶんこの瞬間、『資産ランキングボード』は書き換えられたと思う。
1位 特別養成学級 31,200,000¥
しかし祝福してくれたのは、3人だけだった。
「おめでとうございます、レオくん!」
「謹んでお喜びを申し上げます、お師匠様!」
「レオピンくん、キミは希代の調教師にババーンってなれるよ!
この私がズドーンって保証するから、これからも私の授業を受けに来てね!
そしたら、パフパフつきのナデナデしてあげるからさっ!」
「くおん!」「ぴゃー!」
おっと、3人と2匹だったか。
モナカが「パフパフつきのナデナデってなんですか?」と首を傾げていた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
俺は午前中の授業を終え、モナカとコトネといったん別れを告げる。
自宅に、マークとブラックパンサーを送り届けるために。
ブラックパンサーはヴァイスから『追放』されてしまったようなので、俺が飼うことにした。
2匹のペットを引きつれて居住区の隣を歩いていると、泣き崩れている生徒たちの姿がちらほら見えた。
「うっ……うっ……ううっ……! 僕の家が、僕の家がぁぁ……!」
「大きな岩みたいなのがすごい勢いで通り過ぎていって、メチャクチャに……!」
「こ、今度こそ、倒れない家が手に入ったと思ったのに……!」
どうやら、マークに家を破壊されてしまったらしい。
上級クラスの木造の家のいくつかが、瓦礫と化していた。
ペットの不始末は飼い主の不始末。
俺はお詫びとして、もっと立派な家に建て替えてやろうかと思ったのだが……。
「ううっ、せっかく家が手に入ったから、今度こそ無職のゴミの家を、ブッ壊してやろうと思ったのに!」
「今日の昼にはみんなで行って、メチャクチャにしてやろうと思ったのにぃ!」
「それなのに僕の家がメチャクチャになるだなんて! うわぁぁぁぁぁーーーーーーーんっ!!」
なんて悲鳴があちこちで聞こえたので、罪悪感も消し飛んだ。
帰る道すがら、ブラックパンサーの名前を考える。
「そうだなぁ、トムなんてどうだ?」
するとブラックパンサーは「ピャー!」と肉球を挙げて鳴いた。
「よし、それじゃあお前は今日から『トム』だ! よろしくな、トム!」
「チュッ!」と抗議するような鳴き声が、俺の肩からおこる。
コートのポケットから這い出したのであろう、ドブネズミがいた。
「ああ、お前のことをすっかり忘れてた。お前は……そうだなぁ『ジェリー』なんてどうだ?」
するとドブネズミは「失礼ね!」といわんばかりに「ヂュッ!」と鳴く。
「あっ、お前は女の子だったのか! 悪い悪い。それじゃあ……『ジュエリー』なんてどうだ?
宝石って意味だから、かわいいお前にはピッタリだろ?」
ジュエリーは「チューッ!」と伸び上がり、俺の頬にキスするみたいに、ぴとっとくっついた。
そんなふうに、ペットたちとイチャイチャしながら森に戻る。
家はあたたかな光とともに、俺たちを出迎えてくれた。
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拠点
LV 2 ⇒ 3
規模 眷獣のいる普通の一軒家
人口 1
眷獣 3
拠点スキル
活動支援
拠点拡張
NEW! 拠点防御
拠点の防御力にボーナスを得られる
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