05 家を建てよう
05 家を建てよう
気がつくと、3人の戦士たちに取り囲まれていた。
「なんだ、なんか用か?」
「おい、ゴミ野郎! お前みたいな落ちこぼれに、こんな立派な木はもったいねぇ!」
「俺たちが有効活用してやるから、木を置いて消えな!」
「やめとけ、支援者が見てるんだぞ」
「バカかお前は! 特別養成学級のヤツを1匹傷めつけたところで、支援者の評価が落ちるとでも思ってんのかよ!」
「むしろお前をさんざん痛めつけてやりゃ、支援者の方々から喜んでもらえるかもなぁ! ギャハハハハ!」
「俺は、そういう意味で言ったんじゃないんだが……。
お前たちが入学早々、支援者の前で恥をかいたらかわいそうだと思って……」
「なんだとテメェ!? 俺たちは『戦士』だぞ!?
テメーみたいな『無職』に負けるわけがねえだろうが!」
俺は斧を構え直す。
それは木を相手にする持ち方ではなく、人を相手にするときの持ち方で。
「お前たちは確かに『戦いのプロ』かもしれないが……いまの俺は『斧の戦いのプロ』だぞ」
--------------------------------------------------
レオピン
職業 木こり ⇒ 戦斧使い
職業スキル
武器破壊
対象の武器を一時的、または永続的に使えなくする
--------------------------------------------------
「それでもいいなら、かかってこい」
「しゃらくせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!」
戦士たちが振り下ろそうとした鉄斧、その横っ面を張り飛ばすように、俺は石斧を横薙ぎに一閃していた。
……ズドガァァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!
戦斧使いのスキル、『武器破壊』。
石の戦斧の一撃を受けた鉄斧が、ウエハースのような柔らかさで次々と爆散していく。
「え……えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
鉄クズの残った柄を手に、戦士たちは悪夢のような叫びをあげていた。
「どどどっ、どういう事だよこれっ!? どいう事だよこれぇぇぇぇーーーーーー!?
「しっ、知るかよ! それよりどうすんだよ!? 大切な斧がダメになっちまった!」
「それよりも、負けただなんてバレたら、俺たちのクラスは……!
チクショウ! もう、こうなったら……!」
「……こうなったら?」
俺は戦士たちの足元に、どすんっ! と石斧を突きたててやった。
それだけで彼らは「ひいっ!?」と腰を抜かし、
「ゆっ……ゆるしてくださぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!」
恥も外聞もかなぐり捨てたような、全力の土下座を披露していた。
「ごっ……ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!」
喚きながら逃げ去っていく戦士たちを見送っていると、俺の身体がキラキラ光り出した。
そして目の前にウインドウが出現する。
『レベルアップしました!』
俺は嬉しさのあまり、思わず「おおっ」と声を出してしまう。
「またレベルアップした。木を切り倒したのと、戦士たちを懲らしめたのがよかったのかな?」
--------------------------------------------------
レオピン
職業 戦斧使い
LV 2 ⇒ 3
HP 2010
MP 2010
ステータス
生命 201
持久 201
強靱 1
精神 1
抵抗 1
俊敏 201
集中 201
筋力 201
魔力 1
法力 1
知力 1
教養 201
五感 201
六感 1
魅力 1
幸運 1
器用 700 ⇒ 800
転職可能な職業
生産系
木こり
鑑定士
NEW! 大工
探索系
レンジャー
戦闘系
戦斧使い
--------------------------------------------------
おっ、また転職可能な職業が増えてる。
これから家を作ろうと思っていたから、渡りに船かもしれない。
俺はさっそく大工になる。
--------------------------------------------------
レオピン
職業 戦斧使い ⇒ 大工
職業スキル
建築
家を建てる。ステータスが高いほど、高度な建築が可能
--------------------------------------------------
「よし、それじゃあさっそく家を建ててみるとするか!
まずは伐採したギスの木材を、広い場所に運ばないとな!」
しかし、手で運んでいてはあまりにも時間がかかってしまう。
それに、家を建てるにはまだまだ木材が必要だから、いちどに運搬したほうが効率的だ。
そこで俺は、荷車を作ってみることにした。
道具がないので苦戦するかと思ったのだが、大工のスキルのおかげであっという間に完成する。
--------------------------------------------------
荷車
個数1
品質レベル22(素材レベル11+器用ボーナス8+職業ボーナス3)
高品質なギスの木材で作られた運搬道具。
各種ボーナスにより、通常の荷車の5倍の積載が可能。
--------------------------------------------------
俺はそれから追加で5本ほど木を切り倒し、合計で50個もの『ギスの木材(大)』を手に入れる。
それを荷車に積んで、落ちないように植物のツタでくくりつけたあと、森を出た。
遠くには、校舎である城が見える。
そのまわりでは、大勢の新入生たちが集落作りにいそしんでいた。
どうやら各クラスごとに決められた敷地が与えられていて、その範囲で家を建てなくてはいけないらしい。
俺の『特別養成学級』の土地はどこにあるんだろう?
歩き回って探すのは面倒だったので、『五感』で向上させた視力を駆使して探してみる。
今の俺は、100メートル先にあるパスタの本数だって数えられるほどに目がいいんだ。
しかし、城のまわりにはどこにも見当たらない。
もしやと思って、振り返ってみたら……。
『ゴミ捨て場(特別養成学級 住居用敷地)』
という立て看板を、森の中で見つけた。
「森の中で暮らせっていうのかよ……まあいいか」
俺は荷車を引いて、来た道を戻る。
立て看板のそばに荷車を停めて、さっそく家づくりを開始した。
俺は生まれつき手先が器用だったので、子供の頃からいろんなものを作ってきた。
家づくりも手伝ったことがあるが、家一軒をイチからひとりで作るのは初めてだ。
しかし、『大工』のスキルである『木造建築』を発動した途端、俺の身体は迷いもなく動き出す。
まるで何軒も家を建ててきたベテラン大工のように、身体が行程を覚えているかのようだった。
釘はないので、『木組み』と呼ばれる木と木を組み合わせて作る建築法を採用。
それはパズルで遊んでいるかのように楽しく、俺は夢中になって家を組み上げていった。
そして今更ながらに気付く。
「俺は今日1日だけで、石斧や荷車を作って、3人の戦士たちを倒して、木を5本も切り倒して……。
それにいま家を建ててるってのに、ぜんぜん疲れを感じない……!?
『持久』のステータスが200もあると、すごいスタミナになるんだな……!」
気がつくと、俺の目の前には、立派な2階建ての家があった。
--------------------------------------------------
ギスの家
個数1
品質レベル22(素材レベル11+器用ボーナス8+職業ボーナス3)
高品質なギスの木材で作られた、2階建ての家。
各種ボーナスにより、地震・火事・腐食への耐性がある。
--------------------------------------------------