43 モテモテのレオピン
43 モテモテのレオピン
俺の作った木刀が岩を叩き割ったことに、トモエは度肝を抜かれて放心していた。
やがて、惚れ惚れとした様子で木刀の刀身を眺める。
「し、信じられぬ……! 木刀が、岩をも斬るとは……!
『斬岩』は、武士における目標のひとつであるというのに……!
それを、いともたやすく……!」
「悪くないだろ?」
俺が声をかけると、トモエは顔に水をぶっかけられたようにブルッと顔を振った。
すぐさま、木刀の切っ先を俺に突きつけてくる。
「き……貴様、いったい、なんのつもりだ!? 敵であるそれがしに、塩を送るなど!」
「俺は敵だなんて思ってないが」
「黙れ! それがしがその気になれば、この『斬岩剣』で、貴様の頭蓋を真っ二つにすることだってできるのだぞ!」
「名前まで付けてくれたってことは、相当気に入ったようだな」
するとトモエの顔が、夕日のようにカッと赤熱した。
「そ、そんなことは……!」
「まあいいや、ちょっと貸してくれ」
俺はトモエから木刀を回収すると、手持ちのナイフでチョイチョイと『銘』を彫り込んだ。
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オーガウッドの木刀(銘品『斬岩剣』)
個数1
品質レベル19(素材レベル2+器用ボーナス5+職業ボーナス12)
オーガウッドの木材を、削り出して作った木刀。
各種ボーナスにより、従来の木刀より振りやすく、高い攻撃力がある。
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「ほら、返すぜ」
と銘の入った木刀を見て、トモエはまたメロメロになる。
「か、かっこいい……!」
初めて剣を手にした少年剣士のようだった。
「大事にしてやってくれよ、じゃあな」
俺は背を向けようとしたが、トモエはなおも「待て!」と食い下がる。
「なんだ、まだ用があるのか?」
「ある! それがしの問いの答えを、まだ聞いてはおらんぞ!」
「なんだっけ?」
「なぜ、それがしにこのような銘……棒きれをよこしたのだ!? 答えろ!」
「なんだ、まだそんなことを気にしてたのか。そりゃお前が、コトネのことを守ろうとしてくれてるからだよ」
「なに?」
「コトネのまわりには、悪い虫がたくさんいるんだろ?
質の悪い木刀じゃ、守り切れないかと思ってな」
「貴様はその筆頭だろうが!」
「そうかもしれないな。でも今は、俺が悪い虫かどうかなんて関係ない。
俺は、コトネを守りたいと思っている、お前の気持ちに共感しただけだ。
だから、ソイツを作った」
トモエは赤みの残る顔で、「ぐぬぬ……!」と奥歯を噛みしめていた。
ハカマのふところにズボッと手を突っ込むと、『スレイブチケット』の冊子を取り出す。
乱暴な手つきで1枚切り離し、俺の胸にドンと押しつけてきた。
「受け取れ」
「俺はそんなつもりじゃ……」
「受け取れ! 貴様に借りなど作ってたまるか!」
トモエは俺の手を取りチケットをねじ込むと、さっさと背を向ける。
去り際に一度だけ振り返ると、
「コトネ様に、あまり近づくな」
それだけ言い捨てて、ドスドスと立ち去っていく。
俺は、額面が『100,000』で、キリッとした表情のトモエが肖像画になっているチケットを手に、その広い肩幅を見送っていた。
「『金輪際近づくな』から、『あまり近づくな』になったってことは……。
少しは認めてもらえたのかね」
そうひとりごちる俺の身体が、おなじみの光に包まれる。
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レオピン
職業 神羅大工
LV 12 ⇒ 13
HP 1810
MP 1810
ステータス
生命 181
持久 181
強靱 181
精神 181
抵抗 181
俊敏 181
集中 181
筋力 181
魔力 181
法力 181
知力 181
教養 181
五感 181
六感 181
魅力 1
幸運 2
器用 580 ⇒ 680
転職可能な職業
生産系
木こり
鑑定士
神羅大工
石工師
革職人
木工師
魔農夫
探索系
レンジャー
トレジャーハンター
戦闘系
戦斧使い
ニンジャ
武道家
罠師
NEW! 調教師
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「おお、新しい職業は調教師か。俺にとっては未知のジャンルじゃないか」
森の自宅へと戻りながら、さっそく転職してみる。
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レオピン
職業 神羅大工 ⇒ 調教師
職業スキル
動物魅了
動物に好かれやすくなる
動物調教
半径1メートル以内にいる動物を調教する
調教解除
調教した対象を解放する
動物使役
調教した動物に命令する
動物感情可視
動物の感情の変化が目に見えるようになる
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「そういえば森は動物だらけじゃないか。さっそく試しに調教してみようかな。
たしか調教って、知能の低い動物のほうがやりやすいんだよな」
俺は家のまわりを見回し、遠くで鼻をヒクヒクさせているウサギを見つけた。
そーっと近づこうとしたのだが、カサリと葉を鳴らしただけで、まさしく脱兎のごとく逃げられてしまう。
めげずに、鳥、リス、鹿などに接近しようとしたのだが、ダメだった。
この森では、俺も含めて盛んに狩りが行なわれているので、森の動物たちはかなり警戒していて、近づくこともままならない。
「いきなりやろうとしても無理か……。
そういえば調教師って、罠とかで捕まえた動物を檻に入れて、時間をかけて馴らしていくんだよな」
俺は罠師に転職。
即席で、木の枝を使って簡単な網カゴを作る。
さらに『ダイジャヅルの糸』を巻き付けた木の枝を、つっかえ棒にすれば……。
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ヒロエダのバードトラップ
個数1
品質レベル20(素材レベル1+器用ボーナス6+職業ボーナス13)
ヒロエダの枝を組み合わせて作った、鳥を捕獲するための罠。
各種ボーナスにより、大型の鳥を捕まえても逃げられにくい。
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できあがったトラップを、家のそばの平地に仕掛けた。
網カゴの下に木の実を撒いて、つっかえ棒を立てる。
つっかえ棒についている紐を手に、草むらに隠れた。
しばらくして、ミーンバードがスーッと降りてくる。
点々と落ちている撒き餌をついばみ、罠の下に入ったところで……。
「今だっ!」と紐を引っ張った。
網カゴがバタンと閉じ、中にミーンバードを閉じ込める。
草むらから飛び出し、滑り込む勢いで網カゴを上から押さえつけた。
そして、「大人しくしてろ!」と『動物調教』のスキルを発動。
しかしいくらやっても、ミーンバードは暴れまくっている。
俺はとうとう根負けしてしまい、ミーンバードを逃がしてしまった。
笑うような鳴き声とともに、俺の頭上を旋回するミーンバード。
「調教って、難しいんだな……。いったい何がいけないんだろう?
ステータスは、じゅうぶんに……」
つぶやいてからやっと気付いた。
「そうか! 『魅力』のステータスが足りないんだ!
調教系のスキルの成功率は、魅力がカギだったはず!」
すぐさま『器用貧乏』のスキル、『器用な肉体』を発動。
3000ポイントを、一気に『魅力』に回した。
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レオピン
職業 調教師
LV 13
HP 1810 ⇒ 10
MP 1810 ⇒ 10
ステータス
生命 181 ⇒ 1
持久 181 ⇒ 1
強靱 181 ⇒ 1
精神 181 ⇒ 1
抵抗 181 ⇒ 1
俊敏 181 ⇒ 1
集中 181 ⇒ 1
筋力 181 ⇒ 1
魔力 181 ⇒ 1
法力 181 ⇒ 1
知力 181 ⇒ 1
教養 181 ⇒ 1
五感 181 ⇒ 1
六感 181 ⇒ 1
魅力 1 ⇒ 3001
幸運 2
器用 580 ⇒ 200
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すると、ほとんど間を置かず、
……ドドドドドドドドド……!
俺のまわりから、地響きが起こる。
地震か!? と思ったが、その原因はすぐにわかった。
なんと全方位から、ありとあらゆる種類の森の動物たちが、目をハートにしながら、俺めがけて疾走してきている……!
「しまった! 魅力を高くしすぎた!
パッシブスキルの『動物魅了』の効果が強くなりすぎたんだ!
は、早く、元に……!」
しかし次の瞬間、俺はモフモフの動物たちによって、もみくちゃにされてしまった。
少しモチベーションが落ちつつありますが、まだまだがんばります!
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