34 農業をしよう
34 農業をしよう
俺は大災害の一件のあと、瓦礫の除去を手伝おうとした。
しかし最初の丸太を運び終える間もなく、校長と教頭によって阻止されてしまった。
「お前がここにいると、いろいろ都合が悪いのである!」
「さっさとゴミ捨て場に帰るざます! しっしっ、ざます!」
野良犬のように追い払われた俺は、まあいいやと思って自分の家に戻る。
本来やろうとしていたことを思いだし、次の日の朝すぐに、あまったギスの木でプランターを作った。
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ギスのプランター
個数4
品質レベル25(素材レベル12+器用ボーナス3+職業ボーナス10)
高品質なギスの木を組み合わせて作ったプランター。
各種ボーナスにより、耐火性能があり、通常のプランターに比べて植物の発育が良い。
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プランターを庭に設置し、コートのポケットから『オオイノシシの革水筒』を取り出す。
汲んできた池の水を注ぎ、中にグリーンオニオンの根を置いた。
「よーし、元気に元通りになってくれよ」
そう根っこに話しかける俺の身体が、光に包まれていることに気付いた。
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レオピン
職業 大工
LV 10 ⇒ 11
HP 1810
MP 1810
ステータス
生命 181
持久 181
強靱 181
精神 181
抵抗 181
俊敏 181
集中 181
筋力 181
魔力 181
法力 181
知力 181
教養 181
五感 181
六感 181
魅力 1
幸運 2
器用 380 ⇒ 480
転職可能な職業
生産系
木こり
鑑定士
大工
石工師
革職人
木工師
NEW! 魔農夫
探索系
レンジャー
トレジャーハンター
戦闘系
戦斧使い
ニンジャ
武道家
罠師
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レベルアップで増えた職業は、『魔農夫』。
『農夫』と同じ、作物を育てる生産職だ。
しかし魔農夫の場合は、栽培の過程に魔法を用いるという大きな違いがある。
ようは、農作業に特化した魔法の使い手であり、魔法職の一種でもあるんだ。
しかし魔法の才能がありながら、土いじりをしたがる人間は少ないので、かなりのレア職業といえる。
なんにしても、今の俺には願ったり叶ったりの職業だ。
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レオピン
職業 大工 ⇒ 魔農夫
職業スキル
露地栽培
屋外の畑で作物を育てる知識と技能
風の耕作
風の精霊の力を得て、耕す範囲を拡張する
光の息吹
光の精霊の力を得て、作物の成長を促す
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俺はこのとき、庭でプランターを作っていたのだが……。
転職した瞬間、視界を新たな色彩を帯びた。
ずっと眼球を覆っていた、薄い膜が剥がれたかのように、見るものがクリアになる。
厳密には、庭に生えている草が、イキイキとした緑になって、『僕を見て!』といわんばかりに輝きはじめたんだ。
俺は自然と、庭草の名前をつぶやいていた。
「ハコベニソウ、フミツケクサ、トリプルクローバー……」
今までただの『草』だったものたちが、固有の生き物として認識できる。
「そうか、『露地栽培』のスキルで、草の種類がわかるようになったんだ……!」
俺はふと、庭の塀に絡みつくようにして生える、ツル草に気付いた。
「あれは……!」と吸い寄せられるように近づき、しゃがみこんで地面を掘り返す。
ツルをひっぱると地面がボコンと割れ、小鳥の卵のような、小さく赤い根っこが飛び出した。
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スイートポテト
個数1
品質レベルマイナス9(素材ペナルティ9)
野生のスイートポテト。
繁殖力が強いが、小ぶりで味も悪く、食用には適さない。
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「やっぱり、野生のスイートポテトだ……!
こんなに近くに、身近な野菜が埋まってただなんて……!」
俺はだいぶ自給自足生活ができるようになったと思い込んでいたが、実はまだまだだったのだと思う。
「でもこれで、農業を始めるのにピッタリの野菜が手に入ったぞ」
俺は庭に生えていたスイートポテトから、ツルを切り離す。
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スイートポテトの切り苗
個数1
品質レベルマイナス9(素材ペナルティ9)
野生のスイートポテトの切り苗。
繁殖力が強く土地を選ばないが、栽培できる品種は劣悪。
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この切り苗を元手に、さっそく農業開始といきたかったが、まだ準備が残っている。
「さすがに素手で畑仕事は大変だからな」
俺は独り言とともに、家のそばに置いてある荷車の元へと飛んでいく。
荷車に積んである『ギスの木材』を取り、ポケットから『オオイノシシの大ナイフ』を取り出す。
『木工師』のスキルで、手早く道具を作り上げた。
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ギスのクワ
個数1
品質レベル25(素材レベル12+器用ボーナス3+職業ボーナス10)
高品質なギスの木を組み合わせて作ったクワ。
各種ボーナスにより、通常の木のクワに比べて丈夫で軽い。
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「これで準備完了だ! ……さぁて、どこを畑にしようかな?」
俺は周囲の森を見回す。
ここに来たばかりの頃は、あたりはギスの木で覆われていた。
でもそれらは木材に使うために切り倒したので、今はだいぶ視界が開けている。
残った切り株を取り除けば、ちょうどいい更地にできそうだったので、家のすぐ隣に畑を作ることに決めた。
まずは、以前作った『森林石のスコップ』で切り株を掘り起こす。
もちろんこれは捨てたりなんかしない。
『森林石の斧』で叩き割って、薪に変えた。
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ギスの薪
個数60
品質レベル16(素材レベル2+器用ボーナス4+職業ボーナス10)
ギスの切り株を切り分けた薪。
各種ボーナスにより、通常の薪に比べて火が長持ちする。
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「薪はいくらあっても困らないからな!」
そしていよいよお待ちかねの、はじめての農作業。
俺は『ギスのクワ』を握りしめ、空高く叫んだ。
「エンチャント・ウインド!」
『魔農夫』の『風の耕作』魔法を発動。
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レオピン
職業 魔農夫
LV 11
HP 1810
MP 1810 ⇒ 1800
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どこからともなく現れた木の葉が、つむじ風のように俺の身体を包んだ。
腕に不思議な力が宿るのを感じ、俺は思わず「おお……!」と唸った。
「よく考えたらこれは、俺にとっての初めての魔法だったんだよな。
その効果はいかに……!? そりゃっ!」
とクワを地面に向かって振り下ろす。
ザクッ! と気持ちのいい音とともにクワの刃が埋没したかと思うと、
……しゅわわわっ!
1メートル四方の周囲の土が、泡立つようにほぐれた。
「おお! ひと振りでいっぺんに土を耕せるなんて! こりゃ楽だ!」
クワごしに感じる土の感触と、土を耕すという感覚。
それは俺にとってはとても新鮮で、楽しいものだった。
「もっと早くやっとけばよかった! それにこれも、れっきとしたクラフトだよな!」
俺は新しいオモチャを与えられた子供のように、夢中になって土を掘り返す。
いままで眠っていた命が起きだしたように、強い土の匂いが立ちのぼってくるのを感じながら。
最初は10メートル四方の畑をつくり、試しにスイートポテトを育ててみるつもりだった。
でも土を耕すのが楽しくて、気付くと20メートル四方の土地が畑になっていた。
俺は畑の中心に立ち、いい汗を拭いながらあたりを見回す。
「これだけあればじゅうぶんだな。さて、苗を植えてみるか」
ポケットにしまっておいた『スイートポテトの切り苗』の根元を、やわらかな地面に突き刺す。
そして両手を広げ、太陽に向かって叫んだ。
「光よ……! この地に、新たなる命を芽吹かせる力となれ……!」
『魔農夫』のスキル『光の息吹』を発動。
俺の身体が、ぽかぽかとした光に包まれ、その光が俺の靴の裏を伝って畑全体に広がった。
次の瞬間、
……ぞもももももももーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!
地面に植えてあった30センチほどの切り苗が、地割れのような速さで伸び始めた。
まるで時が早く流れだしたかのような光景に、俺は飛び上がりそうになる。
「こ、こんなに一瞬で……!?」
それもそのはずだった。
ステータスを見てみたら、MPがスッカラカンになっていたから。
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レオピン
職業 魔農夫
LV 11
HP 1810
MP 1800 ⇒ 0
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「そうか、この魔法は止めない限りはずっと効果が出続けるのか……。
1800もMPを使えば、そりゃここまで大きくなるわ……」
気付くとスイートポテトの葉は、畑を飛び出して周囲の森まで侵食していた。
今日も更新できました! これも読者の皆様のおかげです、ありがとうございました!
明日からもがんばって更新してまいりたいと思います!
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