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26 牧場を作ろう

26 牧場を作ろう


 俺は湖から、馬に乗って帰宅した。

 湖は学園の北東側あるのだが、俺の住まいである森はその反対の南西側に位置している。


 そして俺のコートの中にはたっぷりの干物が詰まっていた。

 馬と魚、どちらも思わぬ収穫で、俺は大満足。


「こんなにいいものが手に入るだなんて、サバイバルの授業は最高だなぁ。毎日でもサー先生でいいかも」


 なんてことを口にしながら着いた家は、夕日とは違う色に照らされていた。


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 拠点

  LV 6 ⇒ 7

  規模 にぎやかな集落 ⇒ さびしい牧場

  人口 1

  眷獣 3

  傍人 52

  NEW! 家畜 馬6


  拠点スキル

   活動支援

   拠点拡張

   拠点防御

   農業支援

   第二の故郷

   眷獣支援

   料理支援


   NEW! 畜産支援

    拠点内の畜産において、品質にボーナスを得られる


--------------------------------------------------


 拠点のステータスに『家畜』が増えている。

 きっと、馬を6頭連れ帰ったからだろう。


「おおっ!? 集落が農場になってる!」


 それで思いだした。

 開拓学園における開拓というのは、採取と狩猟から始まり、農業、畜産、工業へと発展していくということを。


「ついに俺の集落も、次のステップに入ったというわけか……!」


 しかし牧場という名を冠したはいいものの、まだ産業と呼べるレベルではない。


「馬からは、毛皮や肉が穫れないこともないけど……」


 そう言いながら馬たちを見ると、ドキッとした表情をしていた。


「大丈夫、お前たちを食べたりしないよ。モナカのお気に入りだからな」


 モナカはこの馬たちもとても可愛いと言って、それぞれに名前まで付けてくれたんだ。


「それにこの国では、馬っていうのは主に移動や農業用だ。

 だからお前たちは、俺の脚がわりになってもらったり、荷物を運んだりしてもらう。

 それなら、うちにいてくれるよな?」


 すると馬たちはホッとした様子で、「ぶひひん」と鳴き返してくれる。


「そのかわり、食べるものについてはたっぷりたべさせてやるからな」


 こちとら小麦畑があるから、彼らの好物であるコムギソウの干し草はいくらでもあるんだ。

 俺は馬たちを、家のそばにある畑まで連れて行く。


 山と積まれた干し草を、じゃじゃん、と紹介すると、馬たちは目の色を変えて飛びつく。


「よーし、取引成立だな」


 食べ放題を楽しむ馬たちをよそに、俺はさっそく作業を開始した。


「牧場になったんだったら、少しはそれらしくしないとな」


 俺は家のそばに停めてある、ギスの木材を積んである荷台を引っ張ってくる。

 すでに木はちょどいい長さに整形してあったので、角材の片方を『オオイノシシの大ナイフ』で削って尖らせた。


 できあがった角材を、居住区側から見て死角になっている空き地に、等間隔で刺していく。

 あとはギスの木の板をあてがって、角材に打ち付けていけば……。


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 ギスの柵

  個数50

  品質レベル33|(素材レベル12+職業ボーナス22)


  高品質なギスの木材で作られた柵。

  各種ボーナスにより、地震・火事・腐食への耐性がある。

  また柵で囲った空間の居心地をよくする効果がある。


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「よしできた、これでだいぶ農場っぽくなったかな。ここは居住区からも見えにくいから、すぐにチョッカイを出されることもないだろう」


 お腹いっぱいになった馬たちがトコトコと俺のところにやってきたので、柵を開けてやると、彼らは嬉しそうに中に入っていった。

 そしてさっそく、思い思いにくつろぎはじめる。


「このくらいの柵なんて、馬にとっちゃひと跨ぎなんだろうけど……逃げられても別にいいよな」


 新しい仲間たちをマークとトムに紹介してから、俺は家へと戻った。



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 次の日の朝礼に、校長の姿はなかった。

 その理由を、かわりに朝礼台に立った教頭先生が教えてくれた。


「校長先生の身に大変な不幸が降りかかり、みなさんの前には出られなくなったのですら。よって、今日と明日と明後日は、休校とすることに決まったのですら。この3日間はみなさんも、喪に服すのですら」


 そう涙ぐむ教頭はなぜか、ずっと俺のことを睨んでいた。

 もしかして死んだのかと思ったのだが、そのあとマーチャンから聞いた噂によると、生きてはいるらしい。


 ただ校長室からはずっと、すすり泣きが漏れ聞こえているという。

 俺は校長先生のことがちょっと心配になって、お見舞いに行こうかとも考えたが、俺が行っても喜ばないだろうなと思いなおす。


 それよりも、思わぬ空き時間ができた。

 しかも3日間も。


 俺は朝礼が終わったあとすぐ家に戻り、牧場へと行ってみる。

 馬のたちは俺の姿を見るなり、パカパカ蹄を鳴らして駆け寄ってきた。


 俺の顔にぴとっと顔をくっつけてきたので、撫でてやると気持ち良さそうにしている。

 どうやら馬たちは、この牧場をとても気に入ってくれたらしい。


 俺もなんだか嬉しくなって、さらなるやる気に火がついた。


「それじゃあ、本格的に牧場を始めてみるか!」


 そのためには、もっと増やさなくちゃな。


 俺は『器用貧乏』の『器用な転職』スキルを発動し、『調教師(テイマー)』に転職。


 さらにコートのポケットから『ダイジャヅルの糸』を取りだし、束ねて太いロープにする。

 あとは先のほうに丸い輪っかを作れば準備完了。


 馬の群れのリーダーである黒馬、ユニコを呼び寄せ、柵の外に出してまたがった。


「よーし! 仲間探しの旅に、しゅっぱーつ!」


 俺の掛け声とともに、ユニコはヒヒーンといなないて走り出す。

 その日はひたすら森のなかを駆け回り、家畜になりそうな動物を探した。


 『炎の七日間』の時にはいなかった動物が森に戻ってきていて、まさに狙い目だった。


「おっ!? 野生のヤギ、発見!」


 ヤギの群れは俺に気付くと一斉に逃げ出す。

 人力だと追いかけるのも大変な相手だが、いまの俺には頼もしい味方がいる。


 ユニコは目の覚めるような脚力で森を駆け抜け、茂みを飛び越え、あっという間にヤギに追いついた。

 俺は振り回していたダイジャヅルのロープを、ヤギのツノめがけて投げつける。


 ロープの輪っかが引っかかり、ヤギのツノをしっかりと縛り上げた。

 引っ張ってヤギの動きを止め、すかさず、『調教(テイミング)』スキルを発動。


 ヤギは暴れなくなり、「ンメェェェ」と人なつっこく鳴いた。


「よし、まずは1匹……! この調子で、どんどんいくぞっ!」


 俺はそれからも、いろんな動物を家畜としてスカウトする。


 野生のウシは逃げるどころか襲いかかってきたので、格闘戦でおとなしくさせた。

 野生のニワトリは飛んで逃げてしまうので、やむなく『魅力』のパラメーターをあげておびき寄せる。


 途中、イノシシに襲われたのだが、ユニコが後ろ蹴りで一発ノックアウトしてくれた。


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 オオイノシシのバラ肉

  個数1

  品質レベル4|(素材レベル4)


  皮と脂身と赤み三層になったイノシシ肉。

  燻製にすると調理ボーナスが得られる。


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 昨日に続いて今日も大漁だった。

 家と森を往復していくうちに、牧場の柵の中はかなり賑やかになる。


 そしてまたしても、拠点レベルアップ……!


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 拠点

  LV 7 ⇒ 8

  規模 さびしい牧場 ⇒ ちいさな牧場

  人口 1

  眷獣 3

  傍人 52

  家畜 馬6 鶏12 牛5 ヤギ8


  拠点スキル

   活動支援

   拠点拡張

   拠点防御

   農業支援

   第二の故郷

   眷獣支援

   料理支援

   畜産支援


   NEW! 安住の地

    家畜の健康状態を良くする


--------------------------------------------------

書籍化情報の続報となります!

この『器用貧乏』を出版してくださるのは、マッグガーデン様です!


そして書籍化にあたりまして、加筆修正を行ないました!

いくつかあるので順次紹介していきたいと思うのですが、まずひとつ目は、


『イエスマン教頭のざまぁ追加』です!


一部に人気のあった、あのイエスマン教頭のざまぁを書籍版のために書き下ろしました!

Web版よりもさらに過激な、ちょっと気の毒になるようなざまぁが展開します!

さらに書籍版では、


『保健室が初登場』します!


今までいろんなキャラが送られ、ペナルティを受けてきた、神秘のヴェールに包まれた場所に、ついにレオピンが足を踏み入れます!

レオピンもついに、ペナルティを受けてしまうのか……!?

まあ、ここから先は言うまでもないですね! ぜひ書籍版でお確かめください!

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― 新着の感想 ―
[一言] 品質レベル33|(素材レベル12+職業ボーナス22) 品質34だと思います。
[気になる点] 食肉にするのはハードルが高いかな。卵や乳などで我慢できるか?
[一言] 飛べる野生の鶏・・・赤色野鶏かな? 猪は家畜化しないんですか?品種改良すれば豚になるのに。 屠殺前提だからダメ? 養蜂とか養蚕もしたいところですね。
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