11 幻の高級食材
11 幻の高級食材
アケミは唇で、俺の頬に触れていた。
霞む視界の向こうで、男たちは無我夢中でキノコを集めている。
女王アリにひたすら尽す、働きアリのように。
「アケミさん! 見て下さい、たくさん採りましたよ!」
「いやいや、俺のほうが大きいキノコを採りました!」
彼らは顔をあげた途端、手にしていたキノコをボトボト落としていた。
「うっ……ウソ、だろ……?」
「アケミさんがなんで、ゴミ野郎とキスしてるんだ……!?」
「お、俺たちなんか、手も握ってもらったことないのに!?」
「あっ、あれは幻だ! キノコのせいで、幻を見ているんだ!」
頭をかかえ、叫びだしはじめる男たち。
アケミはようやく俺から離れた。
「んふっ、私の一族のキスは、幸運をもたらすと言われているの。
レオピンくんに、幸あらんことを……それじゃあね」
いたずらっぽく微笑んだあと、背を向けて歩き出すアケミ。
その後を、「待ってください、アケミさぁん!」とキノコを抱えて追いかける取り巻きたち。
俺はなにがなんだかわからないまま、ぬくもりの残った頬を押える。
そして、身体が光に包まれていることに気付いた。
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レオピン
職業 鑑定士
LV 4 ⇒ 5
HP 2010
MP 2010
ステータス
生命 201
持久 201
強靱 1
精神 1
抵抗 1
俊敏 201
集中 201
筋力 201
魔力 1
法力 1
知力 1
教養 201
五感 201
六感 1
魅力 1
幸運 1 ⇒ 2
器用 900 ⇒ 1000
転職可能な職業
生産系
木こり
鑑定士
大工
NEW! 石工師
探索系
レンジャー
戦闘系
戦斧使い
ニンジャ
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「まさか、キスされてレベルが上がるとは……。
彼女の言うとおり、本当にラッキー・キッスかもしれないな……」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
それから俺は家に戻り、収穫したキノコを調理することにした。
せっかくなので、家のそばに調理場から作ってみようと思う。
俺は覚えたての職業に転職した。
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職業 石工師
職業スキル
石の細工
石に細工を施す
石の工作
石を使った道具を作成する
石像
石を使った像を作成する
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石によるクラフトを始める前に、まずはクラフトのための作業道具を作ってみよう。
俺はギスの木材と、家のそばにあった大きめの石で、ふたつのアイテムを作成した。
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ギスの木槌
個数1
品質レベル24(素材レベル9+器用ボーナス10+職業ボーナス5)
高品質なギスの木材で作られた槌。
各種ボーナスにより、力加減が絶妙に調整される。
森林石のノミ
個数1
品質レベル16(素材レベル1+器用ボーナス10+職業ボーナス5)
森林石で作られたノミ。
各種ボーナスにより、硬度の高い石も削ることができる。
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俺はできあがったふたつのアイテムを見比べて、あることに気付く。
「素材レベルがぜんぜん違うな。
ここは森だけあって、木は高品質のようだが、石の品質はイマイチのようだな。
石だけは、別の場所から調達したほうがいいのかもしれないな……」
明日からの探索において、新しい目的がひとつできた。
今日はひとまず、この森にある『森林石』でガマンしよう。
俺はできたての道具を活用し、家のそばに鎮座していた岩を削って、調理器具を作った。
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森林石のカマド
個数1
品質レベル16(素材レベル1+器用ボーナス10+職業ボーナス5)
森林石で作られた調理用のカマド。
各種ボーナスにより、火が長持ちする。
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「よしよし、これで美味しい『焼きキノコ』ができるな」
カマドの中に、拾ってきた枯葉や木の枝を突っ込んで火を付ける。
燃え始めたところで、木の枝に差したキノコを並べて炙った。
ジュウジュウと音をたて、焼き色が付いたところで、アケミからもらった塩をサッとひと振り。
キノコ独特の、香ばしい香りがあたり一面に広がる。
とうとう腹が鳴りだし、俺はガマンできなくなって、焼きたてのキノコを頬張った。
「はっ……! はふっ! ほふっ! うっ……うんめぇ~~~~~~~~!
採れたてのキノコって、こんなにうまいのか! これなら、毎日でもいいかも!」
俺は採ってきたキノコをあっという間に平らげてしまった。
こんなに幸せな満腹感は、久しぶりかもしれない。
膨らんだお腹をさすって、満ち足りた時間を味わっていると……。
森の向こうから、校長と教頭が血相を変えて走ってくるのが見えた。
「ごっ……ゴミっ……! いや、レオピンくん!」
「『タツマケ』を見つけたというのは、本当であるかっ!?」
俺はボンヤリした頭で聞き返す。
「どうして知ってるんですか?」
「入学式の時に、わたくしめが言ったざます!
学園生活は、魔導装置を通じて世界中に中継されることになっているざますと!」
「支援者の方々がその中継で、レオピンくんが『タツマケ』食べているのを見た、という問い合わせが殺到しているのである!」
「もし本当なら、今すぐ『タツマケ』をよこすざます!」
「そうしたら今回だけは我輩の力で、『特別養成学級』から出して、別のクラスに入れてあげるのである!」
「イエス! ゴミ溜めから脱出できる、またとないチャンスざます!」
「これを逃したら、お前なんか一生、ゴミ溜め暮らしなのである!」
「はぁ。でも、もうぜんぶ食べちゃいました」
「きっ……きぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
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