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ススキ
ススキが、揺れているわ。
尚子は、そう、顔を俯かせて。僕は、しんなりとしたその姿に、鉛筆を重ねた。
すりすりと、僕の鉛筆の芯が削れていく音がする。
僕と、尚子の静かな時間。
僕は、尚子のすんなりとした横顔からのびる首筋にすこし影をつけた。すり、と、白いブラウスの首と襟の境目にすっと鉛筆の先を滑らせる。空気が動く。板に載せた画用紙の上で。白の中で。君が、俯く。ブラウスがすれるその様を。
尚子は、すこしおかしげに笑う。ススキの先に転げそうに張り付こうとする小さなキチョウが枯れた穂にそうようにしがみついている。まるで、君にしがみつきたい僕のように。
11月下旬でもほんのり暖かい今日のような陽だまりの日。
乱草
露見草
ススキの別名は、尚子によせる僕の想いを重ねたように。揺らめいてる
尚子が、こちらをそっとみて、すこしおかしげに笑った。チャーミングな印象的な笑みと瞳で。