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ガラスのような
それは、ガラスのような波紋です。あたし、おじさんの顔が、その波紋の日。ひび割れにすすけて映り込んだ時、ぞっとしましたの。あたし、きらいだわって思いましたの。あたし、その、それを、実感しましたの。
……その日は、とても暗い日。夜の雨、でしたの。ずっと外の方で、真っ暗闇の窓の向こうで、ずっと大量の雨が溢れるように降り続けてましたの。
—―きっと、おてんとうさまが、吐いたのだわ。吐き出したのだわ。嘔吐したのだわ。この、大量の雨は、そういったものと同列なぐらい、異様で気味がわるく、まるで、泥濘のようにも、とても汚いものにも見えましたの。
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あたし、おじさんが、まるで、きえてしまえばよい、って思いましたの。あの、ガラスの向こうに、気味の悪い顔のまま、溶け込んでしまえばよいのに。
それが、それがお似合いな。それがお似合いな夜の窓の奥の。泥濘の。
あたし、割れたガラス。
気味の悪いガラス。